すでにミンミンゼミやニイニイゼミは鳴きだしている。あとアブラゼミとクマゼミが鳴きだせば本格的に梅雨明けだ。
ワクチン接種回数も一昨日の時点で六千万回を越えている。おそらくワクチン不足は、ワクチン接種の遅れている自治体やワクチン接種自体を疑問に思う自治体が、その責任を政府に擦り付けようとしてやっているのではないかと思う。政府はワクチン在庫を大量に抱えている自治体名を公表した方が良い。
昨日野球のホームラン競争をやっていて、テレビで見たが、大谷さんは勝たなくても一番盛り上げてくれたね。
制限解除でみんなマスクなしでハグしあってたけど、ちなみにコロラド州の人口は約575万人、一日の新規感染者数は400人前後だという。我が神奈川県の人口は約900万人で新規感染者数は308人。
それでは「夕㒵や」の巻の続き。
十三句目。
今のあいだに何度時雨るる
めきめきと川よりさむき鳥の声 野明
川で水鳥が鳴きだすと時雨が降る。
十四句目。
めきめきと川よりさむき鳥の声
米の味なき此里の稲 芭蕉
「味なし」は「あぢきなし」という古い方の意味だろう。水害か冷害で稲がだめになってしまい、水鳥の声だけが空しい。
十五句目。
米の味なき此里の稲
月影に馴染の多キ宿かりて 惟然
宿はなじみ客ばかりで固まっていて、ぼっち飯を食う。
十六句目。
月影に馴染の多キ宿かりて
霧の奥なる長谷の晩鐘 野明
長谷寺というと『源氏物語』玉鬘巻で玉鬘の一行が椿市で宿を取ろうとすると、主の僧に、
「人宿したてまつらむとする所に、何人のものしたまふぞ。あやしき女どもの、心にまかせて」
と言われる。その止めようとしていた人たちがやってくる。
「よろしき女二人、下人どもぞ、男女、数多かむめる。馬四つ、五つ牽かせて、いみじく忍びやつしたれど、きよげなる男どもなどあり。」
この御一行が実は、というわけだ。
源氏物語を知らなくても、前句の馴染の多い宿に長谷寺の晩鐘が響くというだけで風情がある。それにこの物語を知っていたら、また別の味もあるということで、これは俤付けになる。
十七句目。
霧の奥なる長谷の晩鐘
花の香に啼ぬ烏の幾群か 芭蕉
花は奇麗だが、カラスの群れにどこか死を暗示させる。葬儀があったのかとも思わせるが、あくまで暗示に留める。
花の浮かれた気分で鳴く、何となく物悲しく、それでいて厳粛な気分にさせるのは芭蕉の幻術だ。
十八句目。
花の香に啼ぬ烏の幾群か
土ほりかへす芋種の穴 惟然
前年に収穫した里芋は穴に埋めておけば保存でき、翌年の春に種芋として使うことができる。里芋は寒さに弱いため、一メートルくらい深く掘って埋めるという。
烏も芋があると知っているのか、掘っていると寄ってくる。
二表、十九句目。
土ほりかへす芋種の穴
陽炎に田夫役者の荷の通ル 野明
畑の土の上には陽炎が揺れ、その中を田舎わたらいをする役者の一行とその荷物が通って行く。
二十句目。
陽炎に田夫役者の荷の通ル
いせの噺に料理先だつ 芭蕉
田舎役者の御一行が宿に着くと、まずは料理そっちのけでお伊勢参りの話で盛り上がる。お伊勢参りを兼ねて、これから伊勢で興行するのだろう。
二十一句目。
いせの噺に料理先だつ
椙の木をすうすと風の吹渡 惟然
伊勢の神杉(椙)であろう。伊勢の風と言えば神風。
二十二句目。
椙の木をすうすと風の吹渡
尻もむすばぬ恋ぞほぐるる 野明
「尻を結ぶ」はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典「尻を結ぶ」の解説」に、
「しめくくりをつける。後始末をきちんとする。
※浮世草子・世間化物気質(1770)五「四十の尻(シリ)をむすびし思案」
とある。「ほぐるる」は撚ってあった糸がほどけるように分かれてしまったということか。空しく風がすうすうと吹いてゆく。
二十三句目。
尻もむすばぬ恋ぞほぐるる
うとうとと夜すがら君を負行ク 芭蕉
「負行ク」は「おひてゆく」。『伊勢物語』第六段芥川の鬼一口であろう。
『伊勢物語』の場面が思い浮かばなければ「夜すがら君を負行ク」がどういう状況が掴みにくいので、俤よりは本説に近い。
二十四句目。
うとうとと夜すがら君を負行ク
豆腐仕かける窓間の月 惟然
前句を豆腐屋とするが、やや状況が掴みにくい。前句の芭蕉句といい、何となく違和感を感じる。
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