今日は新暦だと七夕。いつもの通りの梅雨空だ。旧暦だと五月二十八日でもうすぐ水無月。
昨日厚労省のホームページを見たら今まで未定だった一般接種用のファイザーワクチン供給の所が、
【第9クール】 7/5の週・7/12の週 11,000 箱
【第10クール】7/19の週・7/26の週 10,600 箱
となっていた。これまでの16,000 箱ペースからするとややダウンするが、毎週約六百万回ペースでワクチン接種は行われるようだ。
(1箱は195バイアル、1バイアル5回接種の場合は975回、6回接種の場合は1,170回なので最低でも5,362,500回、最大で6,435000回になる。「第5クール以降では、1バイアルから6回接種が可能な注射器を配布します」とあるので、現在は6回接種が行われているから、最大値の方で見ていいと思う。
第8クールの16,000 箱だと16,000×195×6を二週間十四日で割って1,337,142.85‥になるので、一日百三十万回ペース、実際の接種回数に近い数字になる。)
このほかにも医療従事者向け接種とモデルナワクチン接種分と、別枠のオリンピック関係者接種がある。
七月五日の時点でワクチンの接種回数は医療従事者を含めて50,870,963回(首相官邸のホームページによる)。ワクチン接種は驚くほどのペースで進んでいて、心配するようなことではない。
問題は新規感染者数の増加だが、六月の上半期末で人が動いたことを考えると、ひょっとしたら七月十五日くらいにピークアウトするかもしれない。ここでピークアウトできないと、オリンピックだけでなく、夏に予定されていた様々なイベントも観客数を厳しく制限するか無観客にするかしなくてはならなくなると思う。
今朝の新聞を見たらモデルナワクチンは七月から九月の間で3630万回分あるそうだ。またワクチン接種量の減少の原因は自治体の間にワクチンの在庫が大量にあるための調整で、6週間分に相当する量が手元にある自治体もあるようだ。
それでは古麻恋句合の続き。
遠別恋
鶉から身を島ねこのおもひかな 川支
鶉というと『伊勢物語』一二三段に、
野とならばうづらとなりて鳴きをらむ
かりにだにやは君は来ざらむ
の歌がある。
どこかに閉じ込められたか何かで、遠流になった島猫の気分で、鶉の様に泣きたい思いになる。
寄池恋
うかれ来ていつ窖へ身投げねこ 其雫
窖は「あなぐら」。「寄池恋」とあるから池に落ちたのだろう。猫は水は嫌いだが一応泳げる。
忘恋
またたびやツハリながらの忘れ草 紫子
ツハリというルビがあるが漢字は鬼に夭という字。早稲田大学図書館の寛保三年版『焦尾琴』を見ると「魃」のようにも見える。
忘れ草は萱草(かんぞう)のことで、延宝六年の芭蕉の句に、
忘れ草菜飯に摘まん年の暮 桃青
の句がある。
猫は萱草ではなくマタタビを忘れ草にする。
貴キ恋
ぬれ衣や綸子をかぶる位猫 朝叟
綸子(りんず)はコトバンクの「日本大百科全書(ニッポニカ)「綸子」の解説」に、
「白絹の紋織物。経糸(たていと)・緯糸(よこいと)に無撚(よ)りの生糸を使用し、表朱子(しゅす)と裏朱子による昼夜組織によって柄模様をつくる。石川県小松地方が主産地であり、主として白生地(きじ)のまま、女性礼服の白無垢(むく)や、裏地に使われる。経糸は21デニール2本引きそろえ生糸使い、緯糸は21デニール3本引きそろえ生糸使いが多く、柄出しはジャカード機を使って生産する。また、強撚糸(ねんし)を使った綸子縮緬(ちりめん)もある。[並木 覚]」
とある。
猫を捕まえる時には布を被せたりするが、どこぞの名家なのか綸子を被せられる。布だけに猫は濡れ衣だと言いたげだ。
被軽賤恋
己が毛の蓬なるをや恋の賤 其雫
蓬は植物のヨモギの意味もあるが、「おぼとる」と読む場合もある。コトバンクの「精選版 日本国語大辞典「蓬」の解説」に、
「[1] 〘自ラ四〙 しまりなく乱れひろがる。乱れひろがって、おおいかぶさる。
※万葉(8C後)一六・三八五五「莢(さうけふ)に延(は)ひ於保登礼(オホトレ)る屎葛(くそかづら)絶ゆることなく宮仕せむ」
[2] 〘自ラ下二〙
① (一)に同じ。
※枕(10C終)六七「(薄は)冬の末まで、かしらのいとしろくおほとれたるも知らず」
※今昔(1120頃か)一九「長かりし髪は抜け落ち枕上にをぼとれて有り」
② しまりがなくなる。だらしないさまをする。
※源氏(1001‐14頃)東屋「大路ちかき所に、おほとれたる声して、いかにとか、聞きも知らぬ名のりをして」
とある。ここでは「おぼとなる」と読むのだろう。
雑草の生い茂る蓬生と掛けて、毛が傷んだ猫を猫の賤(しづ)とする。
觸物催恋
陽炎にそはで身も世も団炭猫 堤亭
『其角全集』には「団子」とあるが、早稲田大学図書館の寛保三年版『焦尾琴』には「団炭」とある。炭団(たどん)のことか。
野の陽炎よりも炭団のぬくもりの方が良い。
隔聞他恋
棧子へは及ばぬ恋か座頭ねこ 朝叟
桟は架け橋という字だが「棧子」はよくわからない。窓や障子の横に渡した木も「桟(さん)」という。
目が見えないから横に渡した木をの上を伝って行くことができない、ということか。
近隣恋
京町のねこ通ひけり揚屋町 其角
揚屋町は吉原の揚屋の集まる街で現在の台東区千束四丁目あたりになる。京町はそのすぐ隣で、今でも揚屋通りと京町通りは筋一つしか違わない。
遊郭に来る客がまず揚屋に来るように、京町辺りの雄猫は揚屋町の遊女に飼われた雌猫の所に通ってくる。
寄塚恋
恋塚と猫にきせけん横ふとん 幾石
恋塚というと京の鳥羽にある袈裟御前の塚が有名で、鳥羽の恋塚と呼ばれている。かつては立派な塚があったのか。
横には「ヨキ」とルビがある。猫に布団を被せたら塚のようになるということで、
ふとん着て寝たる姿や東山 嵐雪(枕屏風)
に趣向が似ている。
乱恋
恋よるやとりなりもめて龍田猫 甫盛
「恋よる」は「恋ふ夜」であろう。「とりなり」はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典「取成」の解説」に、
「〘名〙 物事の様子。特に、人のなりふり。人の動作や身なり、風貌、態度、物腰など。とりなし。
※評判記・難波物語(1655)「いとおしらしき風あり、とりなりもよし」
とある。
「乱恋」という題だから、
龍田川紅葉亂れて流るめり
わたらば錦なかや絶えなむ
よみ人しらず(古今集)
の縁であろう。龍田川には染物の神様といわれる龍田姫がいるが、龍田猫はその龍田姫に見立てた猫になる。その龍田姫ならぬ龍田猫が紅葉のように恋に乱れて取り乱している。
衰恋
乞食ねこみめをすててや物狂 新眞
「物狂」というのは能の狂乱物などのイメージであろう。すっかりやつれたみすぼらしい野良猫が恋に乱れる。謡曲『卒塔婆小町』の年老いた小野小町の俤だろうか。
頼恋
立猫や居猫のなかへつかへねこ 東潮
庭の外にやってきた立猫が部屋の中にいる居猫に使いの猫を頼む。
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