2021年12月17日金曜日

 今朝は雨が降っていたが午後には晴れた。今日も平和な一日だ。
 「平和のために戦え」なんて矛盾を犯さないためにも、一人一人が毎日平和であることが一番だ。世界中の人が自分の身の廻りを平和にできれば、世界は自ずと平和になる。それだけのことが実は一番難しかったりする。
 人はまず生きてゆくために、自分の居場所を確保するために、生存の取引を繰り返す。決して平等なんかではない。不満が蓄積され、いつかブチ切れる。放火する奴、銃を乱射する奴、車で突っ込んでくる奴。そして組織を作って戦う奴。
 そうやって勝手に自滅してゆく奴。
 それでも大事なのはまず自分だ。自分の平和を維持できなくて、誰を平和にできる。まして世界なんて。前の社長もよく言っていた「自分のケツの蠅も追えないようじゃ」って。
 苦しくても、貧しくても、自分のための生存の取引を繰り返す。結局それしかないんじゃないかな。まずはそれからだ。余裕があったら人のことも考えよう。
 自分の生きて行く権利を他人にゆだねたら、結局そいつに生殺与奪権を握られる。それも気をつけよう。

 あと「連歌師の紀行文(梵灯庵道の記、白河紀行、東路の津都)」を鈴呂屋書庫にアップしたのでよろしく。

 それでは「初雪や」の巻の続き。

 十三句目。

   こそぐり起す相住の僧
 峯の松あぢなあたりを見出たり  野水

 峯の松の良い景色の場所を見つけたので、一緒に住んでいる僧を起こす。
 十四句目。

   峯の松あぢなあたりを見出たり
 旅するうちの心奇麗さ      落梧

 旅をすると心の中の俗世の塵も払われて、峯の松の景色にも心を止めたりする。
 十五句目。

   旅するうちの心奇麗さ
 煮た玉子なまのたまごも一文に  野水

 煮た玉子は今日の煮卵ではなく、ゆで卵であろう。玉子は茹でても生でもだいたい同じ値段で売っている。
 十六句目。

   煮た玉子なまのたまごも一文に
 下戸は皆いく月のおぼろげ    落梧

 玉子は酒飲みよりも下戸に好まれたのか。
 十七句目。

   下戸は皆いく月のおぼろげ
 耳や歯やようても花の数ならず  野水

 朧月の花見は暗くて花はよく見えない。酒飲みは音楽や料理のことばかり気にして花を見ず、下戸がわざわざ花を見に行く。
 十八句目。

   耳や歯やようても花の数ならず
 具足めさせにけふの初午     落梧

 二月の最初の午の日は稲荷神社の初午祭で初午詣でに行く。馬の祭りでもあるので馬を馬具足で飾り立てる。
 前句の「耳や歯や」はここでは馬の耳や歯で、それが立派でも具足の華やかさには勝てない。
 二表、十九句目。

   具足めさせにけふの初午
 いつやらも鶯聞ぬ此おくに    落梧

 毎年初午詣でに来ているので、毎年同じところで鶯を聞く。
 ニ十句目。

   いつやらも鶯聞ぬ此おくに
 山伏住て人しかるなり      野水

 鶯の声に釣られて奥の方に入って行くと、人の家に勝手に入るなと山伏に叱られる。
 二十一句目。

   山伏住て人しかるなり
 くはらくはらとくさびぬけたる米車 落梧

 米車は米搗き車のことであろう。コトバンクの「精選版 日本国語大辞典「米搗車」の解説」に、

 「〘名〙 玩具の一つ。小さい板の両側に車をつけ、その車の回転につれ板の上の杵(きね)が米をつくようなかっこうに動くしかけのもの。」

とある。
 厳つい山伏にも子供がいて、米搗き車で遊んでいるが、壊してしまったのか叱られている。
 二十二句目。

   くはらくはらとくさびぬけたる米車
 挑灯過て跡闇きくれ       野水

 「闇き」は「くらき」であろう。
 夕暮れで家に帰る子供なのか、それとも逢魔が刻に現れる物の怪だろうか。
 二十三句目。

   挑灯過て跡闇きくれ
 何事を泣けむ髪を振おほひ    落梧

 提燈を持った人は訃報を告げに来たか。
 二十四句目。

   何事を泣けむ髪を振おほひ
 しかじか物もいはぬつれなき   野水

 何か誤解があったのか、女に泣かれてしまい口もきいてくれない。
 『芭蕉七部集』の中村注には『大和物語』百三十三段の古事によるとあるが、そこには、

 「おなじ帝、月のおもしろき夜、みそかに御息所たちの御曹司ども見歩かせたまひけり。御ともに公忠さぶらひけり。
 それに、ある御曹司より、こき袿ひとかさね着たる女の、いときよげなる、いで来て、いみしう泣きけり。公忠を近く召して、見せたまひければ、髪を振りおほひていみじう泣く。などてかく泣くぞと言へど、いらへもせず。帝もいみじうあやしがりたまひけり。公忠、

 思ふらむこゝろのうちは知らねども
     泣くを見るこそ悲しかりけれ

と詠めりければ、いとになくめでたまひけり。」

とあるだけで、やはり何で泣いていたかわからない。百三十四段がその答えなのか。

0 件のコメント:

コメントを投稿