2021年9月19日日曜日

 今日は朝はまだ雨が残っていたが、すぐに台風一過のいい天気になり、雲を見ながらの散歩になった。
 帯状雲が細く小さくなってゆき、切れ切れになった羊雲とも巻雲ともつかぬ乱れた細い綿屑のような雲が現れて奇麗だった。
 夕方には八月の十三夜の月が登った。このまま名月まで晴れていてくれればいいんだが。
 それにしてもオーストラリアの潜水艦問題、こんなことで中国に付け入られることにならなければいいが。日本も原潜があった方が良いのかな。綺麗ごとばかり言っている総裁候補は消えてほしいが、どのみち首相になったとしても一年で消えると思う。日本に女性の首相が誕生する日も近いかもしれない。アメリカの女性大統領とどっちが先か。
 あと、「篠の露」の巻を鈴呂屋書庫にアップしたのでよろしく。

 それでは「我や来ぬ」の巻の続き。挙句まで。

 二十五句目。

   はだへは酒に凋む水仙
 簑を焼てみぞれくむ君哀しれ   其角

 「簑を焼て」は「身を焼て」との掛詞であろう。また、前句の「酒」に「くむ」が受けてにはになる。
 わずかな雨露を防ぐ場所で簑を焼いて暖を取り、霙でのどを潤すのは、過酷な荒行に励む僧であろうか。そこまでして思いを断とうと恋に身を焼いているのは悲しいことだ。肌の色も衰えている。
 二十六句目。

   簑を焼てみぞれくむ君哀しれ
 身は孤舟女房定めぬ       嵐雪

 前句の修行僧は生涯孤独で、女房と取ることはなかった。
 二十七句目。

   身は孤舟女房定めぬ
 萱金かくしうへけん背に     其角

 萱は「ワスレ」、背は「キタノネヤ」とルビがふってある。
 女房に裏切られたか。離縁した後、北の閨は空き部屋になり、そこに萱草(わすれぐさ)が植えておこう。そして、もう二度と恋なんてしないんだ。
 「金」の文字はよくわからない。
 二十八句目。

   萱金かくしうへけん背に
 松虫またず住あれの宮      嵐雪

 この場合の宮は王朝時代の皇族の住処で、北の方(妻)だけが取り残され、屋敷が荒れ果てている様とする。もはや誰を待つでもなく松虫だけが鳴く。
 二十九句目。

   松虫またず住あれの宮
 露は袖衣桁に蔦のかかる迄    其角

 「衣桁」は「いかう」でコトバンクの「精選版 日本国語大辞典「衣桁」の解説」に、

 「〘名〙 衣服をかけておく台。鳥居のような形の、ついたて式のものと、真中から二枚に折れる折り畳み式とがある。衣架(いか)。御衣(みぞ)かけ。ころもざお。いこ。〔文明本節用集(室町中)〕
 ※評判記・色道大鏡(1678)三「次の間には絵莚(ゑむしろ)をしき、衣桁(イカウ)にゆかた、下帯をかけて相まつ」

とある。
 これは『伊勢物語』四段の、

 月やあらぬ春や昔の春ならぬ
     わが身一つはもとの身にして
              在原業平

であろう。
 荒れ果てた家を見て袖に露(涙)し、その袖を掛けるべき衣桁には蔦が絡まっている。
 三十句目。

   露は袖衣桁に蔦のかかる迄
 慕-姫月にふらんとすらん     嵐雪

 かぐや姫であろう。前句の「袖」を「ふらん」で受け、月に帰った姫君に向かって、空き家となったかつての住まいで袖を振る。
 二裏、三十一句目。

   慕-姫月にふらんとすらん
 若衆と私あかしのほととぎす   嵐雪

 「私」は「サゝメ」とルビがふってある。内緒話を意味する「ささめごと」は「私語」という文字を当てるから、ここでは密かに夜を明かす、という意味であろう。
 前句を慕う姫をふってしまおう、という意味にして、若衆と密かに逢引し、明け方の時鳥の声を聴く、とする。
 三十二句目。

   若衆と私あかしのほととぎす
 つれなき枕蚊帳越ヲ切ル     其角

 朝まで語り明かしたものの、蚊帳の中に入ってきてくれず、枕を拒み続けたので、蚊帳越しに別れを告げる(切る)。

 三十三句目。

   つれなき枕蚊帳越ヲ切ル
 紅の脚布哲姿むごかりし     嵐雪

 脚布は「きゃふ」でコトバンクの「精選版 日本国語大辞典「脚布」の解説」に、

 「① 腰に巻く布。きゃっぷ。
  ※庭訓往来(1394‐1428頃)「手巾。布衫。鉢盂巾。脚布。筋匙」
  ② とくに、女性の腰巻。ゆもじ。ゆぐ。したおび。きゃっぷ。〔日葡辞書(1603‐04)〕
  ※浮世草子・好色一代男(1682)二「掉竹(さほたけ)のわたし、とびざやの布(キャフ)、糠ぶくろ懸て有しはくせものなり」

とある。
 哲には「ミシロキ」とルビがあり、「身白き」であろう。
 女性が赤い腰巻一つで白い肌をさらすのは裸と同じで、恥ずかしい姿だった。
 そんな恥ずかしい姿の女性を蚊帳にも入れようとしないのはむごたらしい。
 三十四句目。

   紅の脚布哲姿むごかりし
 五十の内侍恥しらぬかも     嵐雪

 前句を五十になる内侍が迫ってきたとする。『源氏物語』の典侍(ないしのすけ)の俤か。
 三十五句目。

   五十の内侍恥しらぬかも
 花の宴に御密夫の聞えあり    其角

 密夫には「マヲトコ」とルビがある。花の宴の時に間男してたという噂がある。真偽のほどは定かでない。
 挙句。

   花の宴に御密夫の聞えあり
 やぶ入ル空の雨を懶ク      其角

 「懶ク」は「ものうく」。
 前句を薮入りで帰省した時の噂話とする。人の噂もともかくとして、自分の恋で今は手一杯。帰省しても物憂い日を過ごす。
 前句だけでなく一巻全部が藪入りの時の噂話だということで締めくくった、とも取れる。

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