2021年9月13日月曜日

 だいぶコロナも収まってきたところだし、二回目接種の副反応も収まったという所で、久しぶりに散歩を再開した。しばらく歩いてなかったので今日は軽く5600歩。金木犀、萩、葛、露草などが咲いていた。薄の穂も出始めていた。
 雪のない富士山が見えた。初冠雪の後溶けてしまったのだろう。

 それでは「いざよひは」の巻の続き、挙句まで。

 二十五句目。

   道祖のやしろ月を見かくす
 我恋は千束の茅を積み重ね    芭蕉

 楽屋落ちネタでいじられてしまった芭蕉さんだが、そこは冷静に恋の句に転じる。
 旅人に恋して、その旅人は亡くなってしまったのだろう。茅を積み重ねて屋根を作って道祖神の社を作る。
 二十六句目。

   我恋は千束の茅を積み重ね
 雁も大事にとどけ行文      凉葉

 空飛ぶ雁の列を文字に見立て、思いよ届け。

 秋の夜に雁かも鳴きて渡るなり
     わが思ふ人のことづてやせし
              紀貫之(後撰集)

の歌もある。
 二十七句目。

   雁も大事にとどけ行文
 眉作るすがた似よかし水鏡    濁子

 昔の日本人は眉を剃るか抜くかして書いていた。普通は金属製の手鏡を用いるが、前句が雁なので、水鏡とする。
 二十八句目。

   眉作るすがた似よかし水鏡
 大原の紺屋里に久しき      芭蕉

 京都大原の大原女は木炭や薪を売っていたが、紺屋もいたのか。大原女は紺の筒袖を着ているが、それを染めている紺屋の姿は見たこともない。
 二十九句目。

   大原の紺屋里に久しき
 数多く繋げば牛も富貴也     凉葉

 大原の炭焼きや薪取りには牛が使われてたのだろう。大原の里は貧しそうだが牛はたくさんいる。
 三十句目。

   数多く繋げば牛も富貴也
 冬のみなとにこのしろを釣    濁子

 コノシロはウィキペディアに、

 「東北地方南部以南の西太平洋、オリガ湾(英語版)以南の日本海南部、黄海、東シナ海、南シナ海北部に広く分布し、内湾や河口の汽水域に群れで生息する。大規模な回遊は行わず、一生を通して生息域を大きく変えることはない。」

とある。港で釣れる魚で脂ののった冬が旬となる。
 港には荷を運ぶ牛もたくさん繋がれていて、牛引きや人足たちがコノシロを釣っている。
 二裏、三十一句目。

   冬のみなとにこのしろを釣
 初時雨六里の松を伝ひ来て    芭蕉

 「六里の松」は天橋立のことか。冬に初時雨、みなとに六里の松を付ける。四手付け。
 三十二句目。

   初時雨六里の松を伝ひ来て
 老がわらぢのいつ脱たやら    凉葉

 前句を旅体として、草鞋の脱げた老いた旅人を登場させる。
 三十三句目。

   老がわらぢのいつ脱たやら
 朝すきを水鶏の起す寝覚也    濁子

 水鶏の声は戸を叩く音に似ているというので、古来和歌に詠まれている。
 「朝すき」は『校本芭蕉全集 第五巻』の中村注に、

 「朝すきが朝数寄(朝の茶事)ならば夏の朝催すもので、午前六時から八時ごろまでに席に入るとされている。」

とある。
 この場合はもっと早く水鶏の声に起こされてしまったのだろう。茶事が始まっていると勘違いして、いつ草鞋を脱いだっけ、となる。
 三十四句目。

   朝すきを水鶏の起す寝覚也
 筍あらす猪の道         芭蕉

 朝の茶事のために早起きして、数寄者にふさわしく竹林の道を行く。その竹林の道を俳諧らしく「筍あらす猪の道」とする。
 三十五句目。

   筍あらす猪の道
 雪ならば雪車に乗るべき花の山  凉葉

 花が散って雪が積もったかのようだ。これが本当の雪なら雪車(そり)に乗って行く所だ。
 挙句。

   雪ならば雪車に乗るべき花の山
 はる風さらす谷の細布      濁子

 普通の天日晒しだが、花が雪のようだから雪晒しに見立てたのであろう、コトバンクの「精選版 日本国語大辞典「雪晒」の解説」に、

 「〘名〙 布などを雪中にさらすこと。雪が日光を反射する際に発生するオゾンを利用して苧麻(ちょま)糸や苧麻織物を漂白すること。今日では越後の小千谷地方のものが知られている。
  ※御伽草子・強盗鬼神(室町時代短篇集所収)(江戸初)「越中のうしくびぬの、ゑちごの雪ざらし、かねきん、伊勢もめん」

とある。

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