だいぶコロナも収まってきたところだし、二回目接種の副反応も収まったという所で、久しぶりに散歩を再開した。しばらく歩いてなかったので今日は軽く5600歩。金木犀、萩、葛、露草などが咲いていた。薄の穂も出始めていた。
雪のない富士山が見えた。初冠雪の後溶けてしまったのだろう。
それでは「いざよひは」の巻の続き、挙句まで。
二十五句目。
道祖のやしろ月を見かくす
我恋は千束の茅を積み重ね 芭蕉
楽屋落ちネタでいじられてしまった芭蕉さんだが、そこは冷静に恋の句に転じる。
旅人に恋して、その旅人は亡くなってしまったのだろう。茅を積み重ねて屋根を作って道祖神の社を作る。
二十六句目。
我恋は千束の茅を積み重ね
雁も大事にとどけ行文 凉葉
空飛ぶ雁の列を文字に見立て、思いよ届け。
秋の夜に雁かも鳴きて渡るなり
わが思ふ人のことづてやせし
紀貫之(後撰集)
の歌もある。
二十七句目。
雁も大事にとどけ行文
眉作るすがた似よかし水鏡 濁子
昔の日本人は眉を剃るか抜くかして書いていた。普通は金属製の手鏡を用いるが、前句が雁なので、水鏡とする。
二十八句目。
眉作るすがた似よかし水鏡
大原の紺屋里に久しき 芭蕉
京都大原の大原女は木炭や薪を売っていたが、紺屋もいたのか。大原女は紺の筒袖を着ているが、それを染めている紺屋の姿は見たこともない。
二十九句目。
大原の紺屋里に久しき
数多く繋げば牛も富貴也 凉葉
大原の炭焼きや薪取りには牛が使われてたのだろう。大原の里は貧しそうだが牛はたくさんいる。
三十句目。
数多く繋げば牛も富貴也
冬のみなとにこのしろを釣 濁子
コノシロはウィキペディアに、
「東北地方南部以南の西太平洋、オリガ湾(英語版)以南の日本海南部、黄海、東シナ海、南シナ海北部に広く分布し、内湾や河口の汽水域に群れで生息する。大規模な回遊は行わず、一生を通して生息域を大きく変えることはない。」
とある。港で釣れる魚で脂ののった冬が旬となる。
港には荷を運ぶ牛もたくさん繋がれていて、牛引きや人足たちがコノシロを釣っている。
二裏、三十一句目。
冬のみなとにこのしろを釣
初時雨六里の松を伝ひ来て 芭蕉
「六里の松」は天橋立のことか。冬に初時雨、みなとに六里の松を付ける。四手付け。
三十二句目。
初時雨六里の松を伝ひ来て
老がわらぢのいつ脱たやら 凉葉
前句を旅体として、草鞋の脱げた老いた旅人を登場させる。
三十三句目。
老がわらぢのいつ脱たやら
朝すきを水鶏の起す寝覚也 濁子
水鶏の声は戸を叩く音に似ているというので、古来和歌に詠まれている。
「朝すき」は『校本芭蕉全集 第五巻』の中村注に、
「朝すきが朝数寄(朝の茶事)ならば夏の朝催すもので、午前六時から八時ごろまでに席に入るとされている。」
とある。
この場合はもっと早く水鶏の声に起こされてしまったのだろう。茶事が始まっていると勘違いして、いつ草鞋を脱いだっけ、となる。
三十四句目。
朝すきを水鶏の起す寝覚也
筍あらす猪の道 芭蕉
朝の茶事のために早起きして、数寄者にふさわしく竹林の道を行く。その竹林の道を俳諧らしく「筍あらす猪の道」とする。
三十五句目。
筍あらす猪の道
雪ならば雪車に乗るべき花の山 凉葉
花が散って雪が積もったかのようだ。これが本当の雪なら雪車(そり)に乗って行く所だ。
挙句。
雪ならば雪車に乗るべき花の山
はる風さらす谷の細布 濁子
普通の天日晒しだが、花が雪のようだから雪晒しに見立てたのであろう、コトバンクの「精選版 日本国語大辞典「雪晒」の解説」に、
「〘名〙 布などを雪中にさらすこと。雪が日光を反射する際に発生するオゾンを利用して苧麻(ちょま)糸や苧麻織物を漂白すること。今日では越後の小千谷地方のものが知られている。
※御伽草子・強盗鬼神(室町時代短篇集所収)(江戸初)「越中のうしくびぬの、ゑちごの雪ざらし、かねきん、伊勢もめん」
とある。
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