2021年4月27日火曜日

 今の日本の敗因は結局秋の感染者が停滞した時期が長かったにもかかわらず、そこで次の波に備えて準備することを怠って、元の日常に戻そうとしてしまったことだ。
 再度の緊急事態宣言発令もワクチン接種も何か月も前から予想できてたのに、今になって「いきなり言われても」なんて報道をしている。草が生える。
 コロナ下で人との接触が減ると、相互に妥協し合いながら社会を円滑に保つ努力が失われ、社会全体が暴力的に殺気立ってくる。それを防ぐのは思想ではなく娯楽の力だ。みんなが笑ったり泣いたりできるものを提供することが、今の世界では最大の正義なのではないかと思う。
 大衆扇動の基本は怒らせることにある。怒って理性を失わせて感情に任せて暴れたがってる奴らにその口実を与える。それが大衆扇動の基本だ。怒りを煽るメッセージは無視しよう。
 怒って社会全体に暴力がはびこると、喜ぶのはその暴力をもっと大きな暴力で押さえつけることのできる、いわゆる独裁者たちだ。
 荒くれ者を手なずける時には、相手を挑発して怒らせて、殴りかかってきたところを力づくでねじ伏せて服従させる。大衆扇動も基本的には同じ原理だ。
 怒るな、笑え。鈴呂屋は平和に賛成します。
 それでは「いろいろの」の巻の続き、挙句まで。

 二十五句目。

   蕎麦真白に山の胴中
 うどんうつ里のはづれの月の影  荷兮

 蕎麦にうどんと違えて付ける。麦を作る里も外れに行けば蕎麦畑に変わる。
 二十六句目。

   うどんうつ里のはづれの月の影
 すもももつ子のみな裸むし    越人

 田舎の子どもは夏になると皆裸。すももを勝手に食べたりしている。
 二十七句目。

   すもももつ子のみな裸むし
 めづらしやまゆ烹也と立どまり  荷兮

 夏の村は養蚕の盛んなところで、眉を煮ているところを見つけ、子供たちも立ち止まる。さなぎを貰って食べたりしたのか。
 二十八句目。

   めづらしやまゆ烹也と立どまり
 文殊の知恵も槃特が愚痴     越人

 「槃特」は周梨槃特(しゅりはんどく)でコトバンクの「精選版 日本国語大辞典の解説」に、

 「(Cūḍapanthaka) 釈尊の弟子の一人。兄の摩迦槃特が聰明だったのに比し、非常に愚鈍であったが、仏の教えにより後に大悟したという。十六羅漢の一人。半託迦、般陀、般兎などとも称する。しゅりはんどく。転じて、愚か者。ばか者。
  ※方丈記(1212)「わづかに周利槃特が行にだに及ばず」

とある。
 『校本芭蕉全集 第四巻』には謡曲『卒塔婆小町』の、

 提婆が悪も、観音の慈悲。 槃特が愚痴も、文殊の智慧。 悪といふも、善なり。煩悩といふも、菩提なり。」(野上豊一郎. 解註謡曲全集 全六巻合冊(補訂版) (Kindle の位置No.43255-43267). Yamatouta e books. Kindle 版. )

を引いている。「槃特が愚痴も、文殊の智慧。」だと槃特も最後は大悟するの意味だが、ひっくり返して「文殊の知恵も槃特が愚痴」とすると、文殊菩薩も救われないという意味になる。
 繭を煮る作業が終わり、さなぎが取り出されてやっと殺生だということに気付く。
 二十九句目。

   文殊の知恵も槃特が愚痴
 なれ加減又とは出来ジひしほ味噌 荷兮

 「ひしほ」はコトバンクの「百科事典マイペディアの解説」に、

 「なめみその一種。味噌や醤油の祖型。炒(い)ってひき割ったダイズと水に浸した小麦で麹(こうじ)を作り,これに食塩水を入れ,さらに塩漬したナスなどを加えて仕込み,数ヵ月の熟成期間を経て食用。なお古くは魚鳥の肉の塩漬,塩辛も醤と称した。」

とある。
 漬けておいた野菜が絶妙な柔らかさになる頃合いが難しく、タイミングを逃すと文殊の知恵も槃特が愚痴に変わる。
 三十句目。

   なれ加減又とは出来ジひしほ味噌
 何ともせぬに落る釣棚      越人

 なぜだかわからないが棚が落ちて、われたひしほ味噌の壺から野菜を取り出したら、まさに絶妙の加減だった。これは奇跡だ。
 二裏。
 三十一句目。

   何ともせぬに落る釣棚
 しのぶ夜のおかしうなりて笑出ス 荷兮

 バレないようにこっそりと夜這いに来たが、急に棚が落ちて笑ってバレてしまう。
 三十二句目。

   しのぶ夜のおかしうなりて笑出ス
 逢ふより顔を見ぬ別して     荷兮

 『源氏物語』の末摘花であろう。後で顔を知って、若紫とそれを茶化して笑ったりする。元ネタそのままなので本説付けになる。
 三十三句目。

   逢ふより顔を見ぬ別して
 汗の香をかかえて衣をとり残し  越人

 これも『源氏物語』の空蝉。源氏の君がくんくんしていつまでも持ってたりする。同じく本説付け。同じ源氏でも別の場面なら三句に渡ることができる。
 三十四句目。

   汗の香をかかえて衣をとり残し
 しきりに雨はうちあけてふる   越人

 「うちあく」は中に入っているものを出すという意味もあり、この場合は「ぶちまける」というのが近いか。
 裸で作業をしていて急に雨が降ってきたから服を置いてきてしまった。
 三十五句目。

   しきりに雨はうちあけてふる
 花ざかり又百人の膳立に     荷兮

 謡曲『熊野』の俤であろう。花見をお膳立てする方は大変だが、その一方で救われる人もいる。
 挙句。

   花ざかり又百人の膳立に
 春は旅ともおもはざる旅     荷兮

 参勤交代であろう。毎日同じ顔を見ながらの旅は旅をした気がしない。 

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