2020年4月11日土曜日

 躑躅や花水木が咲きだしたというのに、感染者は1.1倍ペースで増え続けているという。この分だと来週には一万越えか。それでも仕事はまだ続く。

   月の宴の門も開いて
 山寺のBGMは虫の声

 それでは「五人ぶち」の巻の続き。

 初裏。
 七句目。

   徳利匂ふ酢を買にゆく
 丸三とせ旅から旅へ旅をして   芭蕉

 旅ではもっぱら酒を入れていた徳利も、家に帰れば酢が必要になる。酒の匂いが染み付いた徳利の匂いを嗅いでから酢を買いにゆく。
 八句目。

   丸三とせ旅から旅へ旅をして
 境の公事の今に埒せぬ      野坡

 三年経って戻ってきて、そういえばあの境界線争いはどうなったかと聞いてみたら、まだやってるよ、ということだった。
 境界線争いは農地の問題もあるし、鹿島神宮と鹿島根本寺の争いのようなものもある。根本寺の方は仏頂和尚の活躍によって、七年かけて寺領を取り戻した。
 九句目。

   境の公事の今に埒せぬ
 真白ふ松も樫も鳥の糞      野坡

 「樫」は普通は「かし」だが、ここでは柏のこと。松と柏は「松柏」とも言われ常緑樹を意味するが、墓所の暗示もある。
 所有者のはっきりしない土地は管理が行き届かなくなり、鳥の糞に真っ白に汚れるがままになっている。まあ、公事なんて糞ったれだっていう含みもあるのか。
 十句目。

   真白ふ松も樫も鳥の糞
 うき世の望絶て鐘聞       芭蕉

 松柏の墓所の含みを受けての展開であろう。深い喪失の悲しみの句。
 十一句目。

   うき世の望絶て鐘聞
 痩腕に粟を一臼搗仕舞      芭蕉

 粟も玄米同様臼で搗いて精白する。前句を世捨て人として、質素な生活に転じる。
 十二句目。

   痩腕に粟を一臼搗仕舞
 薮入せよとなぶられて泣     野坡

 薮入りは旧暦一月十五日と旧暦七月十五日の二回あり、この場合は七月の薮入り。
 かなり虐げられていた使用人だったのだろう。「薮入せよ」とは要するに「国に帰れ」ということ。(「国に帰れ」という言葉は今は知らないが、ちょっと前までは田舎から出てきた人に、お前は使えないから出て行け、故郷に帰れという意味で用いられていた。人種差別の言葉ではない。)

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