2022年2月13日日曜日

 暖かくなった。
 昨日のオリンピックは夕方のアイスホッケー女子準々決勝からだが、さすがに決勝トーナメントになると厳しいね。攻撃の型が作れなかったな。
 スキージャンプ男子ラージヒル決勝も、銀メダルはよくやった。
 オミ株の方はそろそろピークアウトが見えてきたかもしれない。検査陽性者数が実数と大幅に異なったとしても、実数が減っていれば検査陽性者数に反映される。支持率や視聴率が少ないサンプルでも実数を反映できるのと同じだ。
 そういえば演習を名目に兵を集結させるというの、鳥羽徹さんの「天才王子の赤字国家再生術〜そうだ、売国しよう〜」でもあったな、アニメでちょうどその場面をやっていた。
 二十一世紀の大コロナ時代ももうすぐ終わる。混乱に乗じて革命をなんてもうやめて、ロシアや中国も経済で勝負しようぜ。
  それでは「生船や」の巻の続き。

 十三句目。

   東路や。知恵習にやる
 武蔵野も悋やならん汚草     藤匂子

 悋には「しはく」とルビがある。「しわいこと」のこと。コトバンクの「精選版 日本国語大辞典「吝嗇」の解説」に、

 「〘名〙 (形動) 物惜しみをすること。しわいこと。また、そのさま。けち。〔文明本節用集(室町中)〕
  ※仮名草子・智恵鑑(1660)一「吝嗇(リンショク)といへるはつかふべき事にも財をおしみ、たくはへつまん事のみを願ひて、しはき事なり」 〔魏志‐曹洪伝〕」

とある。
 武蔵野の道は衣が草に汚れるのが普通なので、衣装代をケチってはいけない。これも知恵だ。
 十四句目。

   武蔵野も悋やならん汚草
 命ひとつを千々の白露      千春

 軍に向かう武将であろう。この命一つも惜しみやしない。「いざ鎌倉」の心か。
 十五句目。

   命ひとつを千々の白露
 お手かけと扈従と秋の月いづれ  其角

 扈従(胡椒)はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典「扈従」の解説」に、

 「〘名〙 (「扈」はつきそう意、「しょう」は「従」の漢音) 貴人につき従うこと。また、その人。こじゅう。こそう。
  ※経国集(827)一〇「五言。扈二従聖徳宮寺一一首」 〔司馬相如‐上林賦〕」

とある。「お手かけ」は妾(めかけ)のこと。
 前句を哀傷(無常)の句として、妾と従者が「秋の月はどこへ行ってしまったか」と悲嘆にくれる。正妻でないところが俳諧になる。
 十六句目。

   お手かけと扈従と秋の月いづれ
 恋すがら酒宴躍終日       藤匂子

 「終日」には「ひねもす」とルビがある。下七は「おどるひねもす」か。
 前句を妾と従者の不倫の宴とする。妾はこの時代は合法だが、それが従者とできていた。
 「恋すがら」は「夜もすがら」に準じた造語であろう。夜もすがら恋に踊る酒宴。もちろん「躍」はそのままの意味ではあるまい。
 十七句目。

   恋すがら酒宴躍終日
 散儘スあらし。花清の根太落て  千春

 根太は字数からして「ねぶと」ではなく「ねだ」であろう。コトバンクの「精選版 日本国語大辞典「根太」の解説」に、

 「① 床板(ゆかいた)を支える横木。〔日葡辞書(1603‐04)〕
  ② ①の上に張る板。根太板。
  ※浄瑠璃・博多小女郎波枕(1718)中「貸家といふは名ばかり、破れ家を手前普請、ねだも追付張る筈で、板も買置く」
  ③ 根底。基本。基礎。
  ※浄瑠璃・安倍宗任松浦簦(1737)三「密に呼んで談合柱工のねだを外さして、頼義公へ注進し景正殿に吹込んで、入込して首討した」

とある。
 「花清」は花の「精」のことか。花の精は謡曲『西行桜』で白髪の老人の姿で登場する。
 前句を酒宴で盛り上がって、夜通し花の精の舞いを舞っていたら床が抜けたということにする。最後は、

 「夢は 覚めにけり。嵐も雪も散りしくや、花を踏んでは・同じく惜しむ少年の、春の夜は 明けにけりや翁さびて跡もなし翁さびて跡もなし。」(野上豊一郎. 解註謡曲全集 全六巻合冊(補訂版) (Kindle の位置No.35997-35999). Yamatouta e books. Kindle 版. )

と、跡形もなく花は散り尽くす。
 十八句目。

   散儘スあらし。花清の根太落て
 青陽の工国を鋸ギル       其角

 青陽は「みどり」とルビがある。「工」は「たくみ」、「鋸ギル」は「のこぎり」の動詞化。
 青陽は春の日差しのことで、謝尚の『大道曲』に「青陽二三月」とある。春の季語になる。
 前句の「散尽くす」に、桜が散る頃木の芽が一斉に芽吹いて緑に変わってゆく様を付けて、「根太落ちて」に「鋸ぎる」が付く。
 二表、十九句目。

   青陽の工国を鋸ギル
 富士山を買てとられし片霞    藤匂子

 前句の「国を鋸ギル」から、富士山が買われて鋸で切られて持ち去られた、とする。縦に切ったのか、富士山の半分は霞になっている。
 ニ十句目。

   富士山を買てとられし片霞
 江海西に数寄殿ヲ設ク      千春

 「江海」はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典「江海」の解説」に、

 「① 川と海。入江と海。
  ※懐風藻(751)初秋於長王宅宴新羅客〈調古麻呂〉「江海波潮静。披レ霧豈難レ期」
  ※太平記(14C後)二二「生涯山野江海(カウカイ)猟漁を業として」 〔書経‐禹貢〕
  ② 俗世間から離れた場所。
  ※狂雲集(15C後)大灯国師三転語、朝結眉夕交肩、我何似生云々「野老難蔵簑笠誉、誰人江海一風流」 〔荘子‐刻意〕
  ③ 量が莫大なことをたとえていう語。
  ※読本・雨月物語(1776)貧福論「泰山もやがて喫(く)ひつくすべし。江海(ゴウカイ)もつひに飲みほすべし」 〔説苑‐善説〕」

とある。
 富士山を買い取るというのを、数寄者が富士山の見える江湖の景色のいい所を買い取るとする。
 二十一句目。

   江海西に数寄殿ヲ設ク
 上代の傾城玉を真砂にて     其角

 元祖傾城(文字通り国を傾けた)の楊貴妃であろう。驪山の華清宮なら、庭に敷く真砂に水晶を使っていたとしてもおかしくない。
 二十二句目。

   上代の傾城玉を真砂にて
 親仁のいへらく恋忘レ松     藤匂子

 「いへらく」は「言うには」という意味。前句をオヤジの上代の薀蓄とする。玉の真砂の庭には恋忘れ松があるという。出典があるのかないのかはよくわからない。
 二十三句目。

   親仁のいへらく恋忘レ松
 朝起を塒の鳥のうき程に     千春

 外との接触を許されない女は籠の鳥に喩えられるが、ここでは塒の鳥。恋を忘れよとオヤジが言う。
 二十四句目。

   朝起を塒の鳥のうき程に
 曇ル日の嵐鰹見て参レ      其角

 嵐の吹く曇った日にの朝は物憂く、こんな日に漁港で上がる鰹の買い付けに行かされる。

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