2021年8月31日火曜日

  昨日の100メートル義足の決勝戦で、NHKテレビは白人三選手のことをやたら持ち上げていたが、コスタリカのシェルマンイシドロ・ギティギティさんが銀メダルを取った。
 ところでネットでこの人のことを調べようと思ったら、日本語検索ではほとんど情報がなかった。朝日新聞デジタルにかろうじて国と生年月日と年齢と性別だけが記されていた。
 ギティギティさんは2017年にバイク事故で左足を失ったことと、2019年にピアスの合併症のために使用した薬のせいで薬物疑惑が持たれたことが、Olympics.comで唯一得られた情報だった。まだ若い伸び盛りの選手だから、事故がなければオリンピックの方に出場してかもしれない。
 テレビは一部のピックアップした選手の挫折から栄光へのドラマを語ったくれるが、こういうドラマってパラリンピックの場合、出場全選手にあるものなのではないか。
 さて、今日のパラリンピックだが、まずはブラインドサッカー日本・中国戦で、残念ながら今日もなかなかシュートに至らなかった。ブラジル戦ほどワンサイドではないが、四人で密集して守ってボールを奪っても攻め手がない。しかもワントップで攻めてたから、中国側が四人引いて取り囲んでしまうと何もできない。
 中国側はツートップで来ているから、一人が囲まれてもフォローできる。四人で大きな四角形を作るというのは、基本的なフォーメーションなのだろう。
 ただ、この大きな四角形というシステムも、基本的にロングパスが通りにくいため、あまりうまく機能してるとも言えない。多分近い距離の音は360度良く聞こえても、遠くの音は近くの音にかき消されて聞き取りにくいのだろう。前線へのロングパスは結局運良く誰かいればという感じのものになっている。
 いっそのこと四人でボールを取り囲んで攻め上がってはどうかなんて思ってしまう。「シャンペンシャワー」という漫画に「秘技かごめかごめ」というのがあったが。前線へのロングパスがそんな状態なら、カウンターはそんなに怖くないんではないか。
 そのあとまたボッチャを見た。杉村さんとスロバキアのメジークさんの対戦だったが、ファーストエンドで杉村さんが大量点を取ってしまったので、メジークさんを応援してた。最後は勝ちが確定しているということで杉村さんの二投を残して終了した。コールドゲームということだろう。
 ゴールボールの男子準々決勝の中国戦。ひょっとして中国を舐めてたかな。グループBは全チーム2勝2敗でどこが来てもそんなに弱い所はない。川嶋を温存できる試合ではなかった。それに中国のエースストライカーの楊がいるのと反対の右中間にばかり球を投げて、楊に楽をさせてしまった。
 後半になって宮食の高いバウンドのボールが決まって四点返したが、時すでにお寿司だった。
 準々決勝第二試合、ウクライナ対アメリカ。ウクライナは今日は普通に横になってのディフェンスでスピードボールを警戒したか。前半はウクライナのペースだったが、後半のアメリカの追い上げ、そして延長戦開始早々の逆転サドンデスと、見ごたえのある試合だった。
 第三試合はベルギーとリトアニア。前半はゲンリク・パブリウキアネツの剛球が冴えていた。モントビダスと交互に投げるくらいでちょうどいい。後半は選手を変えながらの逃げ切りモードで、最後の方に出てきたパジャラウスカスは高いバウンドの球を投げる。パブリウキアネツと組ませたい。
 第四試合のブラジル・トルコ戦は、これも面白い試合だった。ブラジルのソウサとモレノの両方ともループシュートのような高いバウンドボールを打てるし緩急自在で投げられる。それとブラジルの強固な守備で前半はトルコを寄せ付けなかった。
 後半に出てきたトルコのグンドードゥは面白い選手なんだか困った選手なんだか。とにかくちょっと抜いたような強烈なドライブ回転のボールは、ブラジルのディフェンスも完全にタイミングを外されてたが、ただ、あの加速するボールはほんの少し強く投げるとロングボールになって逆に失点につながる。今回も四得点三失点で微妙。
 まあ、とにかくアメリカとリトアニアに勝った日本はすごい。それが何でという一日だった。

 話は変わるが、どうやらコロナワクチンの異物騒ぎは、ワクチンの容器の蓋についているゴム片だったようだ。ワクチンの容器の蓋のそのゴム部分に注射針を差し込んでワクチンを吸い上げて接種するわけだから、針を刺す時にゴムの一部が入り込むこともあるし、製造時や保存中にわずかな破片が落ちることもある。
 同様の容器を使っているものはファイザーであれアストラゼネカであれ、あるいは新型コロナ以外のワクチンであれどれでも起きうることだ。それで今まで問題が起きてないのだから、心配することは何もない。
 逆に言えばどこでもそれは見つかりうる。反ワクチン派がこれからも異物が見つかるたびに鬼の首を取ったような顔をすると思うが、相手にしない方が良い。
 世間がオリパラで盛り上がる裏で、反オリンピック闘争敗北の屈辱に打ち震えている連中が、国のワクチン接種の早さを恨んでいる。

 あと、「つぶつぶと」の巻「松茸や(知)」の巻を鈴呂屋書庫にアップしたのでよろしく。
 『笈日記』の九月九日の次は「難波部 前後日記」に続く。

  「去年元禄の秋九月九日奈良
   より難波津にわたる。生玉の辺
   より日を暮して
 菊に出て奈良と難波は宵月夜   翁」

 「菊に出て」の句は『梟日記』の日田の獨有亭のところでも触れたが、「菊に奈良を出て、難波は宵月夜」とひっくり返せばわかりやすい。「影略互見の句法」だという。「精選版 日本国語大辞典「影略」の解説」には、

 「① 漢詩文を鑑賞するときに使う語。ある表現をとった語句を、その順序を逆にして味わってみること。えいりゃく。影略互見。
  ※土井本周易抄(1477)四「言有レ物有レ恒ぞ。行有レ恒有レ物ぞ。影略してみたがよいぞ」
  ② 書かれた部分によって、暗示される語句を省略すること。えいりゃく。影略互見。
  ※史記抄(1477)一九「奉生送死之具也とは、〈略〉生れてから死るまで受用する物なりと云心を、其間をば影略したぞ」

とあり、この場合は①の意味になる。
 生玉は今の大阪市天王寺区生玉町の辺りで、生國魂神社がある。
 この日芭蕉は駕籠で旅立ったが、途中暗峠(くらがりとうげ)で大阪に入る時はどうしても自分で歩いて入りたいということで駕籠を下りたことが、土芳の『三冊子』に記されている。結果的にこれが自分の足で歩いた最後の区間になった。
 この日は大阪高津宮の洒堂亭に行ったという。高津宮と生國魂神社はせいぜい三百メートルくらいの距離で、生玉の辺と言っても間違いではない。
 この夜のことであろう。芭蕉が無理を押して歩いたというのに、空気の読めない洒堂が先に高鼾をかいて寝てしまい、

   又、酒堂が予が枕もとにていびきをかき候を
 床に来て鼾に入るやきりぎりす  芭蕉

の句を詠んでいる。この句は『三冊子』では、

 猪の床にも入るやきりぎりす   芭蕉

の形になっている。

  「今宵は十三夜の月をかけてすみよしの市に
   詣けるに昼のほどより雨ふりて吟行しづ
   かならず。殊に暮々は悪寒になやみ申
   されしがその日もわづらはしとてかい
   くれ帰りける也。次の夜はいと心地よし
   とて畦止亭に行て前夜の月の名残
   をつぐなふ。住吉の市に立てといへる
   前書ありて
 枡買て分別かはる月見哉     翁」

 これも『梟日記』の日田の所で触れたが、住吉詣でに行って雨に降られてしまったため、せっかく良くなりかけた病状がまた悪化し、それで十三夜の興行が飛んでしまったことを詫びての句だった。
 升を買ったことで、病気なんだから無理をしてはいけないという分別を一緒に買ってきたことで、十三夜の月見が十四夜の月見に「替った」という「かはる」は二重の意味に掛けて用いられている。

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