2021年8月28日土曜日

 今日のパラリンピックのネット観戦は、朝のトライアスロンに始まり、いつものゴールボールと、あとボッチャを見た。仕事の合間にコーヒーを賭けてやってた投げ銭を思い出したが、それよりははるかに複雑なゲームだ。手が使えなくても、あの素麺流しみたいなのでもできるというのがいいね。
 ゴールボールの女子は、今日は最後まで堅実な守りと、最後の時間稼ぎまで含めて逃げ切った。
 男子の方はリトアニアのパブリウキアネツはなかなかの剛腕投手だったが、速球一筋なので日本のディフェンスもタイミングが合っていた。日本は野球出身者が多いせいか、緩急の使い分けが上手い。圧勝だった。

 阿波踊りの歌詞に思想があるかどうかという所で、日本語の場合注意しなくてはいけないのは、「思想」という言葉がしばしば「社会主義思想」と同義で用いられるということだ。
 「思想がある」「思想的」「思想は要らない」とかいう時は、社会主義思想(あるいは共産主義思想)などと同義として判断した方が良い時もある。
 学術的には「仏教思想」だとか「儒教思想」だとかいうふうにも用いるが、日常語として「思想」と言った場合は主に社会主義思想を指すと考えた方が良い。
 芸能人の発言でしばしば政治的発言をすべきでないということが言われる時も、「政治的=社会主義的」と判断した方が良い。
 簡単な話、左翼は社会主義思想以外を思想として認めてないからだ。思想の自由と言った場合は社会主義的主張の自由のみを指す。そのため世間一般でも「思想=社会主義(共産主義)」というイメージで用いられている。

 それでは「松茸や(知)」の巻の続き、挙句まで。

 二十五句目。

   愛宕の燈籠ならぶ番小屋
 酔ほれて枕にしたる駕籠の縁   猿雖

 酔っ払って道端で駕籠を枕にして眠っている。駕籠というのは夜は道端に置きっぱなしにしてたのだろうか。今でいう路上駐車みたいだが。
 二十六句目。

   酔ほれて枕にしたる駕籠の縁
 花ぎつしりと付し水仙      雪芝

 酔っ払って寝ているのは良いが、水仙の花の季節は真冬で凍死するぞ。
 二十七句目。

   花ぎつしりと付し水仙
 味噌売の宵間宵間に音信て    文代

 味噌売は金山寺味噌などの嘗め味噌売りであろう。酒の肴なので宵にやって来る。昔は発酵が安定する低温の冬に作られることが多かったのだろう。水仙の季節になる。
 二十八句目。

   味噌売の宵間宵間に音信て
 木綿を藍につきこみにけり    卓袋

 藍染液も秋に出来上がり、晩秋から冬の作業になる。
 二十九句目。

   木綿を藍につきこみにけり
 有明に本家の籾を磨じまひ    惟然。

 季節を晩秋として有明の月を出す。収穫した新米の籾を磨る。
 三十句目。

   有明に本家の籾を磨じまひ
 茄子畠にみゆる露じも      荻子

 茄子は夏野菜だが、「秋茄子は嫁に食わすな」と言うように、秋の茄子も美味い。その茄子も晩秋になると露が氷って霜になること、そろそろ終わりになる。
 二裏、三十一句目。

   茄子畠にみゆる露じも
 此秋は蝮のはれを煩ひて     芭蕉

 「蝮のはれ」は山口県医師会のホームページの「マムシに咬まれたら」(宇部市医師会外科医会)に、

 「症状としては、噛まれた直後から数分後に焼けるような激しい痛みがあります。通常傷口は2個でたまに1個のこともあります。咬まれた部分が腫れて紫色になってきます。腫れは体の中心部に向かって広がります。皮下出血、水泡形成、リンパ節の腫れも認めます。重症例では、筋壊死を起こし、吐気、頭痛、発熱、めまい、意識混濁、視力低下、痺れ、血圧低下、急性腎不全による乏尿、血尿を認めます。通常、受傷翌日まで症状は進展し、3日間程度で症状は改善していきますが、完全に局所の腫脹、こわばり、しびれなどが完治するまで1カ月ぐらいかかります。ただし、いったん重症化すると腎不全となり死に至ることもあります。」

とある。かなり危険な状態だが、紫の腫れを茄子に見立てて笑うしかない。
 三十二句目。

   此秋は蝮のはれを煩ひて
 僧と俗との坐のわかるなり    望翠

 遠回しな言い方だが「生死を分かつ」ということだろう。
 三十三句目。

   僧と俗との坐のわかるなり
 呵るほどよふ焚付ぬ竈の下    雪芝

 「よふ焚付ぬ」は「よう焚き付かない」ということか。「よう~ない」という言い回しは口語的に今でもある。全く焚き付かないということ。強調の「よく」と一緒くたになっているところもある。「よう言わんわ」「よう言うわ」は似ているけど違う。
 焚き付けは慣れればなんてことないのだろうけど、キャンプの初心者など、今でも苦労する。昔だったらチャッカマンはおろかマッチもなくて、火打石で焚き付けたから、今以上に習熟を要する。
 もたもたしていてなかなか火が付かないと、𠮟りつけられたりもしたのだろう。叱られると余計手が震えたりして着かなくなる。そのうち切れて、灰を顔にぶちまけられたりしそうだ。
 お寺での僧と俗との上下関係はそういうもんだったのだろう。
 三十四句目。

   呵るほどよふ焚付ぬ竈の下
 芝切入て馬屋葺ける       支考

 芝は焚き付けに使う柴のことだろう。柴の方が湿ってたのか、焚き付けに仕えないので馬屋の屋根を葺くのに使う。
 三十五句目。

   芝切入て馬屋葺ける
 花寒き片岨山のいたみ咲     猿雖

 桜の季節には寒の戻りがあり、今日でも「花冷え」と言う。片岨山は一方が崖の山で、荒々しい崖の裏側で、桜の花も申し訳なさそうに咲いている。
 挙句。

   花寒き片岨山のいたみ咲
 春の日南に昼のしたため     文代

 日南は「ひなた」。「したため」はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典「認」の解説」に、

 「〘他マ下一〙 したた・む 〘他マ下二〙
  ① 整理する。処理する。処置する。かたづける。また、管理する。
  ※延宝版宇津保(970‐999頃)蔵開中「ふばこには、唐の色紙を二つに折りて、葉(えふ)したためて」
  ※宇治拾遺(1221頃)九「国の政をしたためおこなひ給あひだ」
  ② ととのえる。用意する。準備する。特に、食事の支度をする。料理をする。
  ※落窪(10C後)四「まかり下るべき程いと近し。したたむべき事共のいと多かるを」
  ※古今著聞集(1254)一八「侍ども寄りあひて、大鴈を食はんとて、したためける所へ」
  ③ 食事をする。食べる。
  ※宇治拾遺(1221頃)一「かくて夜明にければ、物食ひしたためて、出てゆくを」
  ※義経記(室町中か)五「菓子ども引き寄せて、思ふ様にしたためて、居たる所に」
  ④ 煮るの意の女房詞。
  ※御湯殿上日記‐明応九年(1500)四月二九日「またはくよりかまほこ、はまあふり、ことやうしたためておひらもまいる」
  ⑤ 書きしるす。
  ※讚岐典侍(1108頃)下「よみし経をよくしたためてとらせんと仰られて」
  ※俳諧・奥の細道(1693‐94頃)市振「あすは古郷に返す文したためて」

とある。
 「昼のしたため」は昼食の準備であろう。寒いから日向で食べる。

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