今日ようやく一回目のワクチン接種に行った。ちょうど国全体でも50パーセントが少なくとも一回の接種を終えたところで、何とかその半分の方に入ることができた。
アフガニスタンの問題が連日報道されているが、基本的に西洋社会の過干渉が問題をややこしくしているのではないかと思う。改革派の西洋依存がムスリム文化の独自の発展を妨げているのではないか。
今のコロナが一般人対医者の戦いになっているというのは、医療体制のこれまで抱えていた問題がコロナによって表面化してしまった部分が大きいため、医者の側、特に日本医師会への不満があるからだ。
コロナで重症化して、救急車は来たが受け入れる病院が見つからなくて盥回しになるというのが問題になっているが、実際はコロナと関係なく、救急車の盥回しはここ何十年、筆者の子どもの頃から問題になっていた。それが改善されてなかった付けが回って来たとも言える。
あと、元禄五年秋から六年春の「苅かぶや」の巻を鈴呂屋書庫にアップしたのでよろしく。
さて、秋の俳諧をまた続けていこう。
元禄七年に飛んで、今回は「残る蚊に」の巻で、三十句のみ残っていて完全ではない。七月中旬からの伊賀滞在中と思われる。
発句は、
残る蚊に袷着て寄る夜寒哉 雪芝
になる。
すっかり夜寒になり、こうして袷を着て集まっているのは興行の時の様子であろう。寒くなったのにまだ蚊がいて、秋の蚊はしつこくて嫌ですね、といったところだろう。
脇は芭蕉が付ける。
残る蚊に袷着て寄る夜寒哉
餌畚ながらに見するさび鮎 芭蕉
「餌畚(ゑふご)」は鷹匠の持ち歩く餌袋のことだが、釣の時の餌を入れる竹籠にも使う。「さび鮎」は秋の産卵期の鮎で「落ち鮎」ともいう。この時期の鮎は友釣りもできず、餌釣りも食いが悪いという。だからこの「さび鮎」は貴重なものだともいえよう。
「寒いのに蚊がいるところですいません」「いえ、この時期の鮎は貴重です」といったところか。
第三。
餌畚ながらに見するさび鮎
夕月の光る椿は実になりて 土芳
椿は秋に実をつけ、圧搾絞りで油がとれる。さび鮎の季節を付ける。
四句目。
夕月の光る椿は実になりて
薄かき色に咲ける鶏頭 風麦
鶏頭は普通は赤いが、薄柿色の鶏頭が椿の実のなる傍らに咲いている。園芸品種として作られたものだろうか。
五句目。
薄かき色に咲ける鶏頭
身をそばめ二人つれ行在郷道 玄虎
在郷道はいわば街道を外れた田舎道ということだろう。旅は二人連れの場合が多いので、この場合も旅人だろう。ちょっと寄り道してゆくと鶏頭が咲いている。
六句目。
身をそばめ二人つれ行在郷道
こぶちかけ置霜のあけぼの 苔蘇
「こぶち」はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典「首打・機」の解説」に、
「〘名〙 (「こうべうち(首打)」の変化した語) 野鳥や獣の首をうちはさんで捕えるわな。おし。おとし。こぶつ。〔俗語考(1841)〕」
とあり、「世界大百科事典内のコブチの言及」に、
「これの小型で,棒を上下に置き,または籠を釣って小鳥が下にまいた餌をついばむと糸がはずれて首をはさむもの,または籠が落下して生捕りするものは,平安時代の絵にも描かれており,クブチあるいはコブチといって現在でも山村で行われる。」
とある。
二人連れで来て仕かけておくなら、ある程度大型のものか。
初裏、七句目。
こぶちかけ置霜のあけぼの
煤萱を目利のうちにかたづけて 芭蕉
目利(めきき)はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典「目利」の解説」に、
「① 目が利くこと。視力がすぐれていること。方々に目をくばり見つけることが早いこと。目ざといこと。めかど。また、その人。
※名語記(1275)六「声をこそきくに、目きき、手きき、心ききのきき如何」
② 物の真贋(しんがん)・良否などを見わけること。鑑定。また、価値を判断する能力があること。めかど。また、その人。
※風姿花伝(1400‐02頃)一「これも、まことの花にはあらず。〈略〉。まことの目ききは、見分くべし」
※咄本・醒睡笑(1628)四「五分や三分長くとも、二尺三寸というてあらそひけるが、めききするうへにこそ、そのならひはあらんずれと」
とある。今はもっぱら②の意味で用いられるが、ここでは①の意味で、目の利く明るいうちにという意味だろう。
煤萱は萱を刈った跡の屑か何かで、人の痕跡が残っていると動物に警戒されるから、それを前日の明るいうちに片づけておいて、明け方にコブチを仕掛ける。
八句目。
煤萱を目利のうちにかたづけて
つりて貴き門の鰐口 雪芝
鰐口は今でもお堂で参拝するときに、賽銭箱の上に紐が垂れていて、それを打ち鳴らす。神社は鈴で仏堂は鰐口を用いている。
門の前の煤萱を綺麗に掃除してから鰐口を吊り下げる。
九句目。
つりて貴き門の鰐口
大木の梢は枝のちぢむなり 風麦
縮むは剪定されるということか。鰐口を吊って寺を新しくすれば、庭の木もきちんと剪定される。
十句目。
大木の梢は枝のちぢむなり
野に麦をしてこかす俵物 土芳
俵物(へうもの)はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典「俵物」の解説」に、
「ひょう‐もの ヘウ‥【俵物】
〘名〙 俵に入れたもの。また俵づめした穀類。俵子(ひょうす)。ひょうもつ。たわらもの。
※浮世草子・日本永代蔵(1688)一「杉ばへの俵物(ヒャウモノ)、山もさながら動きて」
とある。
野に麦を植えて畑にし、廻りの木の枝を切り払う。麦が取れれば麦俵が積み上がって、転げ落ちる程になる。
十一句目。
野に麦をしてこかす俵物
山臥についなつて来て札賦る 苔蘇
特になりたかったわけでもなく、成り行きで山伏になってしまったのだろう。麦農家のところへやってきてお札を配るが、俵をひっくり返したりしてへまをする。
狂言『柿山伏』の連想を狙ったのかもしれない。
十二句目。
山臥についなつて来て札賦る
一里行ても宿をとる旅 玄虎
札配りが忙しくてなかなか先へ進めない。
十三句目。
一里行ても宿をとる旅
掛物の布袋の顔に月指て 雪芝
掛物は掛け軸のこと。書画骨董を求めての旅か。
十四句目。
掛物の布袋の顔に月指て
百のやいとにきりぎりす啼 芭蕉
前句を掛物の布袋さんのような風貌の、ということにしたか。でかくて重たい体はお灸の跡がたくさんあって、月見をすればコオロギが鳴く。
十五句目。
百のやいとにきりぎりす啼
秋風の雨ほろほろと川の上 土芳
百のやいとを老人として、人生の秋を感じさせるような秋の寂しげな景色を付ける。
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