ミャンマーのことでみんな気づいてはいると思うけど、バイデンさんが就任した直後だということと、クーデターの理由が選挙に不正があったからと、明らかにトランプさんに重なるようなことを言っていることで、かなりあからさまな挑発なのではないかということだ。やれるもんならやってみろ、俺には中国がついているんだと言いたいのか。とにかくバイデンさんを舐めているといってもいい。
まあ、頭の良いバイデンさんなら、あくまで常識的な正攻法でしか来ないと見ているのだろう。新月の夜にドローンが飛んでくることを心配する必要はない。
それでは「わすれ草」の巻の続き。
初裏。
七句目。
紙燭けしては鶉啼く也
ああ誰じや下女が枕の初尾花 桃青
「初尾花」はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典の解説」に、
「〘名〙 秋になって初めて穂の出た薄(すすき)。《季・秋》
※万葉(8C後)二〇・四三〇八「波都乎婆奈(ハツヲバナ)花に見むとし天の河隔りにけらし年の緒長く」
とある。
さ牡鹿の入野の薄初尾花
いつしか妹が手枕にせむ
柿本人麻呂(新古今集)
の歌にも詠まれている。通う男をさ牡鹿、相手を初尾花に喩えた、要するに夜這いの歌。俳諧だと下女に見つかり「ああ誰じゃ」と問い詰められたので、男は紙燭を消して鶉の鳴き真似をする。
八句目。
ああ誰じや下女が枕の初尾花
百にぎらせてたはぶれの秋 千春
目当ての女に仕えている下女に百文握らせて手引きしてもらい、初尾花をいただく。
九句目。
百にぎらせてたはぶれの秋
仇し世をかるたの釈迦の説れしは 信徳
「かるたの釈迦」はうんすんかるたのソータ(十の札:トランプのジャックに相当する)で、コトバンクの「ソータ」の「精選版 日本国語大辞典の解説」に、
「〘名〙 (sota) ウンスンカルタの札の一つ。本来はトランプのジャックに当たる札。天正年間(一五七三‐九二)日本に渡来したとき女性の姿に変わり一〇番目の札になった。のち、僧侶とまちがえられ、頭を剃った坊主姿の札となった。坊主とか釈迦とか呼ばれ一〇番目の札であるところから釈迦十(しゃかじゅう)ともいう。
※俳諧・鷹筑波(1638)一「あざやかな月にそふたを刈田哉〈一次〉」
とある。
「仇し世」は無常の世でかるたの釈迦が説くには、百文払ってうんすんかるたで遊びなさい、とのこと。
十句目。
仇し世をかるたの釈迦の説れしは
あるひはでつち十六羅漢 桃青
『校本芭蕉全集 第三巻』の注によると、十六と双六の重六とを掛けているという。重六はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典の解説」に、
「〘名〙 二個の賽(さい)に共に六の目が出ること。ちょうろく。
※金刀比羅本平治(1220頃か)上「双六のさいのめに〈略〉二が二つおりたるを重二といふ、重五(でっく)重(ヂウ)六といふも謂たり」
とある。今日でいう六ゾロのことのようだ。
釈迦がカルタならその弟子の十六羅漢は双六のサイコロの重六で、双六で賭け事をする十六になる丁稚、ということになる。
十一句目。
あるひはでつち十六羅漢
又男が姿かたちはかはらねど 千春
「又男」は『校本芭蕉全集 第三巻』の注に、
「大阪の物真似の名人。『物種集』序に『川原もの又男がつけ髪松千代が柿頭巾もかづき物ぞかし』。」
とある。ネット上にある石井公成『物真似芸の系譜─仏教芸能との関係を中心にして─(上)』に、
「そうした一人であって元禄歌舞伎で活躍した又男三郎兵衛は、仁王や十六羅漢や観音の三十三身を演じることで有名だった。」
とあるが、同じ人か。当時歌舞伎役者は非人の身分だから「川原もの」とも呼ばれていただろう。
十六羅漢の物真似をレパートリーにしてたようだが、丁稚の真似はどうだったか。
十二句目。
又男が姿かたちはかはらねど
古い羽折に老ぞしらるる 信徳
「羽折」は羽織のこと。物真似師の演ずるキャラは昔も今も変わらないが、長年やっているので羽織が古くなっている。
十三句目。
古い羽折に老ぞしらるる
つくづくと記念のややを寝させ置 桃青
「やや」は赤ん坊のこと。亡き夫の形見の子どもを寝かしつけてはいるが、古びた羽織に老いが知られる。
十四句目。
つくづくと記念のややを寝させ置
結びもとめぬざんぎりの露 千春
「ざんぎり」はコトバンクの「デジタル大辞泉の解説」に、
「1 ちょんまげを切り落として、刈り込んだ髪形。明治初期に流行し、文明開化の象徴とされた。散切り頭。斬髪(ざんぱつ)。
2 髪を切り乱して結ばずにそのままにしておくこと。また、その髪形。散らし髪。」
とある。この場合はもちろん2で、女手一つで子を育てる忙しさに髪を結う余裕もない。
十五句目。
結びもとめぬざんぎりの露
鎖がまもれて出たる三日の月 信徳
前句の「ざんぎり」を斬・切りと鎖鎌で斬りつけることとしたか。結び留めてない鎖鎌が吹っ飛んできて、それが三日月のように光る。
十六句目。
鎖がまもれて出たる三日の月
雲井に落る鳫の細首 桃青
鎖鎌が斬ったのは鳫の首だった。
十七句目。
雲井に落る鳫の細首
料理人御前を立て花の浪 千春
前句の雲井を御所のこととして、料理人が花見の宴のために呼ばれる。鳫がその場で捌かれる。
雲井と浪は、
わたの原漕ぎ出でて見れば久かたの
雲ゐにまがふ沖つ白波
藤原忠通(詞花集)
の縁。
十八句目。
料理人御前を立て花の浪
木具屋の扇沖の春風 信徳
「木具(きぐ)」はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典の解説」に、
「① 檜の白木で作った器物。
※仮名草子・尤双紙(1632)上「きれいなる物の品々〈略〉木具(キグ) かはらけ」
② 特に足付きの折敷。足打折敷(あしうちおしき)。木具膳。
※親元日記‐寛正六年(1465)三月四日「御一献両所其木具土器御箸已下散二金銀一被レ書レ絵之御例云々」
※随筆・貞丈雑記(1784頃)七「木具(きぐ)と云はすべて檜の木の白木にて作りたる也〈略〉然るに今は足付の事斗を木具と云」
とある。
前句の「御前」を木具膳として、木具屋の扇を花の浪の向こうの那須与一の的に見立てる。
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