きょうは午前中は小雨が降ったが午後から晴れて十五夜も見ることができた。
それでは「月見する」の巻の続き。
初裏。
七句目。
百家しめたる川の水上
寂寞と参る人なき薬師堂 尚白
前句の「川の水上」を山の奥の方として、忘れ去られたような薬師堂を付けて流したと思われる。
八句目。
寂寞と参る人なき薬師堂
雨の曇りに昼蚊ねさせぬ 芭蕉
人のいないお堂は旅人が野宿したりもするが。雨はしのげても蚊が多いのは困ったものだ。
九句目。
雨の曇りに昼蚊ねさせぬ
一むしろなぐれて残る市の草 尚白
「なぐれる」はコトバンクの「大辞林 第三版の解説」に、
「①横の方にそれる。 「烟は横に-・れて/ふところ日記 眉山」 「矢ガ-・レタ/ヘボン」
②おちぶれる。 「近ごろどこからやら-・れて来た画工/洒落本・列仙伝」
③売れ残る。 「新造の-・れた市とすけんいひ/柳多留 9」
とある。この場合は①であろう。
市場の撤収した後、草の上に忘れ去られたように筵が一枚落ちてたりする。ちょうど筵があるからとそこで休もうとすると、蚊が寄ってくる。
十句目。
一むしろなぐれて残る市の草
這かかる子の飯つかむなり 芭蕉
この場合の「なぐれる」は③の意味か。
市場の草の上で品物の売れ残っている筵があり、小さな子を連れてきているが主人は居眠りでもしているのだろう。子供が勝手に飯を食っている。
十一句目。
這かかる子の飯つかむなり
いそがしとさがしかねたる油筒 尚白
「油筒」はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典の解説」に、
「〘名〙 油を入れる筒。近世には、婚礼用具の一つとして用い、上下に金物をつけ、横に金物の輪を打ち、紅の緒などをつけた。
※山科家礼記‐長祿元年(1457)一二月二二日「あふらつつ一〈九合、代は一度申て候也〉」
とある。ここでは単に油を量るための竹筒か。油売りが来たけど忙しくて油売ってる暇がない。
十二句目。
いそがしとさがしかねたる油筒
ねぶと踏れてわかれ侘つつ 芭蕉
「ねぶと」はgoo辞書の「デジタル大辞泉(小学館)」に、
「もも・尻など、脂肪の多い部分に多くできるはれもの。化膿 (かのう) して痛む。かたね。」
とある。
後朝のあと、灯りをと思っても油筒がどこにあるのかわからない。そのうえ腫れものも痛むし、いいことが何もない。
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