核兵器禁止条約の批准国が条約が発効する条件に達した。それはそれでいいことだと思うが、問題はこういう運動を推進している人たちが批准しない国を敵視しがちなことだ。
核戦争なんて誰も望んではいない。自分がやられちまうからね。ただ、核廃絶へのプロセスは一つではない。核兵器禁止条約は一つの方法にすぎない。
現実に北朝鮮の核開発をやめさせるには、アメリカの核には勝てないということで脅しをかける手段も必要になる。最終的に核をなくすには、あらゆるプロセスの可能性を試す必要があるので、その段階で敵味方に分かれて争ってはならない。
鈴呂屋は平和に賛成します。そして核のない世界を望みます。
それでは「はやう咲」の巻の続き。
二十五句目。
烏帽子かぶらぬ髪もうすくて
冬籠物覚ての大雪に 左柳
髪の薄くなった老人が物心ついて以来初めての大雪だというのだから、五十年に一度、百年に一度の大雪か。江戸時代は寒冷期で、桃隣の「舞都遲登理」によれば元禄九年の東北の栗駒山(1626m)は水無月でも雪があったし、湯殿山に行ったときは吹雪だったという。
地球は今でも小氷河期に向かって寒冷化していると言われているが、十九世紀からそれをはるかに上回る炭酸ガス濃度の上昇による温暖化が起きて、未曽有の温暖期になっている。
二十六句目。
冬籠物覚ての大雪に
茶の立やうも不案内なる 文鳥
前句の「物覚て」を物心ついての意味ではなく、茶道を覚えたばかりでという意味に取り成したか。冬籠りで雪となれば、師匠の所に行けず、練習不足になったのだろう。
二十七句目。
茶の立やうも不案内なる
美くしう顔生付物憂さよ 越人
美少年でちやほやされてきたのか、茶の立て様も厳しく指導してくれる人がいなかったのだろう。肝心な時に恥をかく。
二十八句目。
美くしう顔生付物憂さよ
尼に成べき宵のきぬぎぬ 路通
女もなまじっか美人に生まれると、悪い男にたかられてしまうものだ。美人だから幸せになれるとは限らない。
二十九句目。
尼に成べき宵のきぬぎぬ
月影に鎧とやらを見透して 芭蕉
透けて見えるのは亡霊だ。残念ながら主人は戦死しました。明日からは尼です。
三十句目。
月影に鎧とやらを見透して
萩とぞ思ふ一株の萩 荊口
亡霊の正体見たり一株の萩。ちなみに、
化物の正体見たり枯尾花 也有
の句はこれより百年後の天明の時代になる。「松木淡々がおのれを高ぶり、人を慢(あなど)ると伝え聞き、初めて対面して」(俳家奇人談)詠んだとされている。淡々を化け物のような人だと思っていたが、会ってみたらしょぼくれた爺さんで枯尾花だったというのが本来の意味。それが後になって「幽霊の」に上五が変わってしまい、今の意味になった。
ネット上では例によってこういう有名な句を芭蕉に仮託する人がいるようだが、フェイクです。また也有の『鶉衣』にこの句はありません。
笠もたで幽霊消るしぐれ哉 也有
の句ならあるけど。
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