2020年7月13日月曜日

 蝉が鳴いたり雷が鳴ったりすると梅雨も明けるという。あともう少しというところか。
 それでは「早苗舟」に巻の続き。

 三裏。
 六十五句目。

   なめすすきとる裏の塀あはひ
 めを縫て無理に鳴する鵙の声   孤屋

 「めを縫て」というのは囮百舌(おとりもず)のことでコトバンクの「精選版 日本国語大辞典の解説」に、

 「〘名〙 他のモズを寄せるために、眼瞼(まぶた)を縫って盲目にして鳴かせるモズ。《季・秋》
  ※日次紀事(1685)八月「此月山林間囮鵙(をとりもず)縦レ日居二於架頭一傍設二黏竽一而執二鵙鳥一、是謂レ落レ鵙」

とある。「鵙落とし」という鵙猟に用いるもので、曲亭馬琴編の『増補 俳諧歳時記栞草』に、

 「[紀事]山林の間、囮に鵙の目を縫ひ、架頭に居(すゑ)、傍に黐竿を設て鵙鳥を執る。是を鵙を落(おとす)と云。」

とある。秋の季語。
 えのき茸を採るあたりで鵙の罠も仕掛けてある。
 六十六句目。

   めを縫て無理に鳴する鵙の声
 又だのみして美濃だよりきく   野坡

 前句の鵙落としを比喩としたか。かなり無理難題を吹っかけて美濃の情報を手に入れたか。
 六十七句目。

   又だのみして美濃だよりきく
 かかさずに中の巳の日をまつる也 利牛

 三月上巳は巳の日の祓だが、ここでは上巳でも正月の初巳でもなく、毎月来る二番目の巳の日のことであろう。巳の日は弁天様の縁日で金運に恵まれるから、初巳上巳だけでなく、巳の日は中でも下でも全部祀りたいのであろう。前句を「また頼みして、巳の頼り聞く」と取りなす。年がら年中弁天様に願い事をして、弁天様のご利益を乞う。
 六十八句目。

   かかさずに中の巳の日をまつる也
 入来る人に味噌豆を出す     孤屋

 味噌豆は大豆に異名。大豆は今は秋の季語だが曲亭馬琴編の『増補 俳諧歳時記栞草』にはない。乾燥大豆が一年中あったからか。
 大豆は縁起ものなので、毎月中旬の巳の日には気前よくふるまう。

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