蝉が鳴いたり雷が鳴ったりすると梅雨も明けるという。あともう少しというところか。
それでは「早苗舟」に巻の続き。
三裏。
六十五句目。
なめすすきとる裏の塀あはひ
めを縫て無理に鳴する鵙の声 孤屋
「めを縫て」というのは囮百舌(おとりもず)のことでコトバンクの「精選版 日本国語大辞典の解説」に、
「〘名〙 他のモズを寄せるために、眼瞼(まぶた)を縫って盲目にして鳴かせるモズ。《季・秋》
※日次紀事(1685)八月「此月山林間囮鵙(をとりもず)縦レ日居二於架頭一傍設二黏竽一而執二鵙鳥一、是謂レ落レ鵙」
とある。「鵙落とし」という鵙猟に用いるもので、曲亭馬琴編の『増補 俳諧歳時記栞草』に、
「[紀事]山林の間、囮に鵙の目を縫ひ、架頭に居(すゑ)、傍に黐竿を設て鵙鳥を執る。是を鵙を落(おとす)と云。」
とある。秋の季語。
えのき茸を採るあたりで鵙の罠も仕掛けてある。
六十六句目。
めを縫て無理に鳴する鵙の声
又だのみして美濃だよりきく 野坡
前句の鵙落としを比喩としたか。かなり無理難題を吹っかけて美濃の情報を手に入れたか。
六十七句目。
又だのみして美濃だよりきく
かかさずに中の巳の日をまつる也 利牛
三月上巳は巳の日の祓だが、ここでは上巳でも正月の初巳でもなく、毎月来る二番目の巳の日のことであろう。巳の日は弁天様の縁日で金運に恵まれるから、初巳上巳だけでなく、巳の日は中でも下でも全部祀りたいのであろう。前句を「また頼みして、巳の頼り聞く」と取りなす。年がら年中弁天様に願い事をして、弁天様のご利益を乞う。
六十八句目。
かかさずに中の巳の日をまつる也
入来る人に味噌豆を出す 孤屋
味噌豆は大豆に異名。大豆は今は秋の季語だが曲亭馬琴編の『増補 俳諧歳時記栞草』にはない。乾燥大豆が一年中あったからか。
大豆は縁起ものなので、毎月中旬の巳の日には気前よくふるまう。
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