日本は今も平穏無事で、今日も変わらない日常が続いているが、その油断というのがやはり気になる。
政府の方では自粛や休校を解除する動きがあるようだし、感染者は千人に迫るというのに、マスコミは国内の感染をあまり取り上げず、海外から帰ってきた感染者のことばかり言っている。ここは中国か。
「世界が結束してウイルスに打ち勝った証しとしての五輪を開催しようではありませんか」なんて言われても、それは勝ってから言ってほしい。G7だって株価の大暴落でオリンピックどころでないだろうに。
感染者は確実に増えているし、潜在的な感染者についてはまったく未知数だ。それがいつどんな形で噴出するのか、心配だ。
それはそうと話は変わるが、古いファイルを見ていたら、二〇〇七年に作った偽三吟歌仙が出てきた。
遊びというか、現代連句のパロディーのつもりで作ったもので、やたらに難解な言葉を使用し、とにかく形式美にこだわるというコンセプトで、形式美にちなんで荊尚、識斎、薇蘭という三人のキャラクターを作って、あとはネットから適当に難解な語句を拾って組み合わせて作っていったというもの。
一応、荊尚は日本の古典、識斎は西洋文学と哲学、薇蘭は漢文に造詣が深いという設定。今読んでも‥‥読めない。
発句から順番に付けてゆくのではなく、先にここに春、ここに秋という枠を決めてバラバラに句を当てはめていったもので、これも現代連句ではしばしば行われる。
三吟歌仙もどき「あしかび」の巻
雪々亭古楊捌き
初表
葦牙にまろかれ偲ぶ軒端かな 荊尚
大道廃れ鎮む霾風 薇蘭
遊牧の民蜃気楼虚ろにて 識斎
侘び佇むは瀛真人や 荊尚
晩涼に紈綺動かす月の影 薇蘭
忘却されたパラソルの閾 識斎
初裏
朝鳥にたなびく雲のたち別れ 荊尚
光陰待たず老いぞ情なき 薇蘭
タントラの忘我に荼枳尼天を見む 識斎
なめしともへどいめに纏き寝し 荊尚
傾城の妖姫蘭麝の芳しく 薇蘭
二胡の嘆息身に沁みる頃 識斎
石の火や秋の螢は群れ飛びて 荊尚
晨月染むる紫の庭 薇蘭
雪道の果てや掟の冷ややかに 識斎
あとはわたつみ遠つ島影 荊尚
寂々と漂ふ虚舟花の塵 薇蘭
里は散種の森の明るみ 識斎
二表
飛ぶ鳥の春闌くけふや帰るらん 荊尚
旅は無窮のアジールの夢 識斎
破瓜時は朗のかひなに抱かれて 薇蘭
頼む片身の駒錦紐 荊尚
弔いの鐘に裂かれた「馬」と「句」よ 識斎
断髪分身太伯が跡 薇蘭
神代より常世にませば秋津島 荊尚
虹のたもとはニライカナイか 識斎
刺桐咲き雲樹に象の悠々と 薇蘭
をちかた人を迎ふ暮れ方 荊尚
明月にリリスは歌を始むらん 識斎
裳裾に露を散らす金風 薇蘭
二裏
棲みなれぬ里はうなゐの鳩吹きて 荊尚
雄鶏一羽返す道すぢ 識斎
凍雲に野は漠々と天に逝き 薇蘭
虚無は静かに穴を穿ちぬ 識斎
花山に満ち照り曜えぬ夕陰に 荊尚
流觴の宴水潺湲と 薇蘭
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