2018年9月25日火曜日

 今日が一応満月だが、一日雨が降った。
 それでは「一泊り」の巻の続き。
 十一句目。

   ほそき声してぬき菜呼入レ
 蕣にすずめのさむく成にけり   残夜

 前句の「ほそき声」を雀の声とする。蕣(あさがお)が咲いてスズメも寒そうに細い声で鳴く季節となり、とここまでを気候とし、ぬき菜売りを呼び入れるとする。
 十二句目。

   蕣にすずめのさむく成にけり
 月見ありきし旅の装束      白之

 「蕣にすずめ」を装束の柄としたか。女性の装束であろう。
 十三句目。

   月見ありきし旅の装束
 さまざまの貝ひろふたる布袋   芭蕉

 『奥の細道』の旅での敦賀の記憶だろう。

 潮染むるますほの小貝拾ふとて
   色の浜とは言ふにはあるらん
               西行法師

の歌で知られていて、芭蕉もここで、

 寂しさや須磨にかちたる浜の秋  芭蕉
 波の間や小貝にまじる萩の塵   同

の句を詠んでいる。
 十四句目。

   さまざまの貝ひろふたる布袋
 地獄絵をかく様のあはれさ    路通

 貝は胡粉の原料となる。
 白絵具を作るために袋一杯に貝をたくさん集めてきて、その姿が「布袋」という文字からお目出度くふくよかな布袋さんを連想させるが、その姿で地獄絵を描いているとミスマッチでなんとも哀れだ。

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