2023年8月6日日曜日

 今日は広島原爆の日で、原爆というと少し前映画バービーのことが報道されてたが、実際のところこの映画自体にそんなみんな関心がないんじゃないかな。
 日本ではバービー人形も女の子の定番だったが、リカちゃん人形もあるし。
 また原爆自体も日本では戦後思想という日本をほぼ全否定するような思想がまかり通っていて、何かにつけて日本だ駄目だ西洋や中国を見習えという連中がいるせいで、原爆を茶化されてもそれほどインパクトはない。
 ある意味日本人は反日馴れしている。自分からジャップだのイエローモンキーだの言ったりする。
 外国人が日本人に向かって日本のことをぼろ糞にけなして行ったりすると、案外大喜びでその通りだとか言ってくれて、頼まれもしないのに日本のここが駄目ということを沢山教えてくれるものだ。

 しばらくお休みしてしまったが、「十いひて」の巻の続き。

三裏
六十五句目

   おもひはいろに出がはり時分
 一ぱいの付ざも霞む小宿にて

 付ざは付差しのこと。コトバンクの「精選版 日本国語大辞典 「付差」の意味・読み・例文・類語」に、

 「〘名〙 自分が口を付けたものを相手に差し出すこと。吸いさしのきせるや飲みさしの杯を、そのまま相手に与えること。また、そのもの。親愛の気持を表わすものとされ、特に、遊里などで遊女が情の深さを示すしぐさとされた。つけざ。
  ※天理本狂言・花子(室町末‐近世初)「わたくしにくだされい、たべうと申た、これはつけざしがのみたさに申た」

とあり、寛文の頃の宗因独吟「花で候」の巻第三にも、

   夢の間よただわか衆の春
 付ざしの霞底からしゆんできて   宗因

の句がある。
 遊女のいる小宿で付差しをしたが、その遊女も出替りでいなくなってしまったか。
 点なし。

六十六句目

   一ぱいの付ざも霞む小宿にて
 ぬるめる水ももりませぬ中

 「水も漏らさぬ」はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典 「水も漏らさぬ」の意味・読み・例文・類語」に、

 「① すきまなく敵をとり囲むさま。また、警戒・防御・用意などがきわめて厳重なさま。転じて、容姿や態度などつけいるすきがなく、見事なさま。
  ※不在地主(1929)〈小林多喜二〉六「中々それも一寸見は分らないやうにやるんだから危いんだ。━水も洩らさない」
  ② きわめて親しい仲の形容。
  ※伊勢物語(10C前)二八「などてかく逢ふごかたみになりにけん水もらさじと結びしものを」

とあり、②の意味になる。春の季語が必要なので「水ぬるむ」という季語から「ぬるめる水」とする。まあ付差しも口の中で体温で暖まってぬるくなり、それを漏らさぬように口移しで飲む。
 点なし。

六十七句目

   ぬるめる水ももりませぬ中
 入なをす桶の輪竹の永日に

 前句の「水ももりませぬ」から文字通り桶を絞める輪竹を直したから桶の水が漏らないとするが、上句下句合わせた時にはこれが水も漏らぬ仲を導き出す序詞として機能する。
 点あり。

六十八句目

   入なをす桶の輪竹の永日に
 久しくなりぬうどん商売

 久しぶりにうどん屋を再開するので、桶の輪竹を締め直す。
 点なし。

六十九句目

   久しくなりぬうどん商売
 我見ても常住おろすこせうのこ

 常住はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典 「常住」の意味・読み・例文・類語」に、

 「① (━する) 仏語。生滅変化することなく、過去・現在・未来にわたって、存在すること。じょうじゅ。
  ※勝鬘経義疏(611)歎仏真実功徳章「勝鬘応レ聞二常住一之時」
  ※徒然草(1331頃)七四「常住ならんことを思ひて、変化の理(ことわり)を知らねばなり」 〔北本涅槃経‐七〕
  ② (━する) つねに一定の所に住むこと。また、寺僧が一寺に定住して行脚(あんぎゃ)をしないこと。
  ※霊異記(810‐824)中「諾楽の京の馬庭の山寺に、一の僧常住す」 〔朱熹‐章厳詩〕
  ③ (副詞的にも用いる) 日常、ごく普通であること。また、習慣化していつもそうであるさま。ふだん。しょっちゅう。年じゅう。じょうじゅ。
  ※高野本平家(13C前)六「常住(ジャウヂウ)の仏前にいたり、例のごとく脇息によりかかって念仏読経す」
  ※浄瑠璃・夏祭浪花鑑(1745)九「アレあの通(とほり)に常住(ジャウヂウ)泣て居らるる」
  ④ 「じょうじゅうもつ(常住物)」の略。
  ※正法眼蔵(1231‐53)行持「常住に米穀なし」 〔釈氏要覧‐住持・常住〕」

とあり、ここでは③のしょっちゅうの意味。「しょっちゅう」の方は「初中後」から来たと言われている。
 小姓と胡椒を掛けて、小姓がしょっちゅう胡椒を擦り降ろす、とする。うどん屋も蕎麦屋と同様、最初はお寺から始まったのだろう。
 「我みても」は前句の「久しくなりぬ」に掛けて、『伊勢物語』の、

 我見ても久しくなりぬ住吉の
     岸の姫松いくよへぬらむ

の縁で一種の歌てにはのようにつながる。
 点あり。

七十句目

   我見ても常住おろすこせうのこ
 同じ拍子にくさめくつさめ

 「くつさめ」はくしゃみのことで、くしゃみの擬音としても用いられる。狂言『髭櫓』の最後の「くっさめ」はCMでも用いられたので知ってる人もいると思う。
 胡椒でくしゃみするのは六十年代の漫画でもお約束のパターンだが、この時代からあったようだ。
 長点で「拍子専一に候」とある。

七十一句目

   同じ拍子にくさめくつさめ
 雨だれの落くる風や引ぬらん

 くしゃみをするから風邪を引いたのか、となる。謡曲に雨垂拍子というのがあり、コトバンクの「精選版 日本国語大辞典 「雨垂拍子」の意味・読み・例文・類語」に、

 「① 規則正しく落ちるあまだれの音のように、雅楽や謡曲の拍子を一定の間隔で奏でること。謡曲では、地拍子の基本と考えられ、実際には変化をつけて奏する。
  ※諺苑(1797)「霤拍手(アマタレヒャウシ)」
  ② =あまだれちょうし(雨垂調子)
  ③ 物事の進みぐあいがとぎれがちで、一定していないこと。
  ※五重塔(1891‐92)〈幸田露伴〉三〇「仕事が雨垂拍子(アマダレビャウシ)になって出来べきものも仕損ふ道理」

とある。前句の拍子を受けて雨垂れを出す。
 長点で「又拍子よく候」とある。

七十二句目

   雨だれの落くる風や引ぬらん
 おかはもあらひ戸障子もさせ

 「おかは」は厠(かはや)のこと。風邪を引いた時には感染防止のため、トイレを清潔にして戸障子も絞める。
 点あり。

七十三句目

   おかはもあらひ戸障子もさせ
 はひ出もの月さす閨に呼よせて

 這出者(はひでもの)はコトバンクの「選版 日本国語大辞典 「這出者」の意味・読み・例文・類語」に、

 「〘名〙 田舎から初めて都会へ出て来たばかりの者。山だし。
  ※俳諧・雀子集(1662)四「朝顔や池田の宿のはひ出もの〈成元〉」

とある。前句のトイレや戸障子を這出者の仕事とする。
 点なし。

七十四句目

   はひ出もの月さす閨に呼よせて
 露の情はいやでもをふでも

 下女を閨に呼び寄せてそこで無理やり。よくあることだったのだろう。露だから儚くやり捨てにされる。
 長点で「申され分無余気候」とある。言われたら従わざるを得ない、という意味か。

七十五句目

   露の情はいやでもをふでも
 秋風にあふた時こそ縁ならめ

 秋風は年齢的に盛りを過ぎたという意味だろう。この時に出会ったのも何かの縁だから、とにかく結婚してくれ、となる。
 点なし。

七十六句目

   秋風にあふた時こそ縁ならめ
 後の彼岸の善智識様

 後の彼岸は秋の彼岸のこと。善智識はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典 「善知識・善智識」の意味・読み・例文・類語」に、

 「① よき友。良友。自分のことをよく知ってくれている人。
  ※今昔(1120頃か)一「汝、我が為に生々世々の善知識也」
  ② 仏語。善法、正法を説いて人を仏道にはいらせる人。外から護る外護、行動を共にする同行、教え導く教導の三種を数える。真宗では法主(ほっす)を、禅宗では師僧を尊んでいうことがある。知識。⇔悪知識。
  ※菅家文草(900頃)一二・践祚一修仁王会呪願文「因二善知識一 得二安楽果一」
  ※日蓮遺文‐三三蔵祈雨事(1275)「善知識は爪上の土よりもすくなし」 〔法華経‐提婆達多品〕
  ③ 人を仏道に導く機縁や機会となるもの。
  ※平家(13C前)一〇「おもはしき物をみんとすれば、父の命をそむくに似たり。これ善知識也」

とある。前句の縁を仏縁として出家を願い出る句に転じる。
 長点で「西こそ秋の門跡様にや」とある。門跡はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典 「門跡」の意味・読み・例文・類語」に、

 「[1] 仏語。
  ① 祖師から継承する法流。また、法流を継ぐ門徒、さらにその門徒が住持する寺家・院家のこと。
  ※観智院本三宝絵(984)下「世世の賢臣おほくこの門跡をつげり」
  ② 皇族・貴族の子弟が出家して、入室している特定の寺格の寺家・院家。また、その寺家・院家の住職。南北朝時代には、寺院の格式を表わす語となり、江戸幕府は、宮門跡・摂家門跡・清華門跡・准門跡などに区分して制度化した。門主。
  ※太平記(14C後)一「梨本の門跡に御入室有て、承鎮親王の御門弟と成せ給ひて」
  [2] (本願寺は准門跡であるところからいう) 本願寺の称。また、その管長の称。御門跡。
  ※咄本・昨日は今日の物語(1614‐24頃)下「六条のもんぜきに能の有時」

とある。彼岸は西方浄土の意味もあり、秋風の吹く後の彼岸は西方浄土に通じる門跡様になる。

七十七句目

   後の彼岸の善智識様
 高座には異香薫ずる花散て

 高座はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典 「高座」の意味・読み・例文・類語」に、

 「① 天皇や将軍が謁見の時などにすわる御座所。
  ※内裏式(833)元正受群臣朝賀式「前一日整二設御座於太極殿一、敷二高座一以レ錦」
  ② 主賓や身分の高い人、または、年輩者などがすわる席。通常は床の間に近い席。上座(かみざ)。上席。
  ※雑談集(1305)九「無官なるも高坐(カウサ)に処(しょ)し、御(きみ)の御坐(ござ)て」
  ③ 説教などの時、説教師や僧侶などがすわる一段高くしつらえた席。また、その席で説法をすること。たかくら。
  ※延喜式(927)一三「正月最勝王経斎会堂装束〈略〉高座二具」
  ※枕(10C終)三三「はじめゐたる人々も〈略〉かうざのもとちかきはしらもとにすゑつれば」
  ④ 社会的な高い位地。
  ※コンテムツスムンヂ(捨世録)(1596)三「ヲヲクノ シンルイ、チインノ アルコトヲ ヨロコビ cǒzauo(カウザヲ) タノシミ」
  ⑤ 講釈師が講釈を行なう一段高い座席。後に寄席で芸人が芸を演ずるために、一段高くした席をいい、また、一般に寄席をもいう。
  ※洒落本・風俗八色談(1756)一「高座(カウザ)の談議に辻談議」
  ⑥ 銭湯の番台。」

とあり、この場合は③であろう。異香は並々ならぬ良い香りのことで、善智識様だから高いお香を用いているという意味と、法の花の香ばしさを掛けている。
 点なし。

七十八句目

   高座には異香薫ずる花散て
 弥陀の来迎目前の春

 前句を①の意味に取り成して崩御が近いとする。
 点なし。

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