何が正しいっていうと、大抵はみんなが言ってるごく常識的なことが正しかったりするもんだが、そんな常識的なことを言ってても普通すぎて、誰も凄いことを言ってるとは思わないし偉いとも思わない。
かえって滅茶苦茶なことを言ってる方が、何か凡人には分らない深遠な真理を知ってるんじゃないかということで、むしろそっちの方が多くの人の尊敬を集める。
ネット上のインフルエンサーなんてのは大体そんなもんかもしれない。俺がインフルエンサーになれないのは、普通すぎるからなのだろう。しょっちゅう炎上するくらい出鱈目なことが言えなければインフルエンサーにはなれないんだと思う。
そういう有名な人が何度コニュニティーノートをつけられても平然としてられるのは、確かに肝が据わってる。
それでは「十いひて」の巻の続き。挙句まで。
名残裏
九十三句目
引三線は座頭よりなを
鯨よる浦づたひしてふなあそび
前句の座頭をザトウクジラのこととする。
点なし。
九十四句目
鯨よる浦づたひしてふなあそび
五分一は先たつ友千鳥
五分一は収穫の五分の一を徴収するということか。コトバンクの「日本歴史地名大系 「五分一町」の解説」の、明石の五分一町の由来の所に、
「もとは西樽屋町のうちで紺屋こんや町と称した。五分一町の町名は、当町の西側にあった明石湊の出入湊税を取扱った帆別役所の役宅があり、収納した税を役所・明石町・郡代官所・下役人の間で五分割していたことに由来する。」
とある。
この句の場合は獲れた鯨の五分の一は千鳥が持って行くということか。
点あり。
九十五句目
五分一は先たつ友千鳥
勘定帳幾夜ね覚めにとぢぬらし
千鳥に「幾夜寝覚め」と来れば、百人一首でもお馴染みの、
淡路島通ふ千鳥の鳴く声に
幾夜ねざめぬ須磨の関守
源兼昌(金葉集)
になる。五分一の支払いに苦労して、勘定帳を幾夜も開いたり閉じたりしている。
点なし。
九十六句目
勘定帳幾夜ね覚めにとぢぬらし
手代のこらずきくかねの声
寝覚めの鐘と金とを掛ける。
手代はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典 「手代」の意味・読み・例文・類語」に、
「① 人の代理をすること。また、その人。てがわり。
※御堂関白記‐寛弘六年(1009)九月一一日「僧正奉仕御修善、手代僧進円不云案内」
※満済准后日記‐正長二年(1429)七月一九日「於仙洞理覚院尊順僧正五大尊合行法勤修云々。如意寺准后為二手代一参住云々」
② 江戸時代、郡代・代官に属し、その指揮をうけ、年貢徴収、普請、警察、裁判など民政一般をつかさどった小吏。同じ郡代・代官の下僚の手付(てつき)と職務内容は異ならないが、手付が幕臣であったのに対し、農民から採用された。
※随筆・折たく柴の記(1716頃)中「御代官所の手代などいふものの、私にせし所あるが故なるべし」
③ 江戸幕府の小吏。御蔵奉行、作事奉行、小普請奉行、林奉行、漆奉行、書替奉行、畳奉行、材木石奉行、闕所物奉行、川船改役、大坂破損奉行などに属し、雑役に従ったもの。
※御触書寛保集成‐一八・正徳三年(1713)七月「諸組与力、同心、手代等明き有之節」
④ 江戸時代、諸藩におかれた小吏。
※梅津政景日記‐慶長一七年(1612)七月二三日「其切手・てたいの書付、川井嘉兵へに有」
⑤ 商家で番頭と丁稚(でっち)との間に位する使用人。奉公して一〇年ぐらいでなった。
※浮世草子・好色一代男(1682)一「宇治の茶師の手代(テタイ)めきて、かかる見る目は違はじ」
⑥ 商業使用人の一つ。番頭とならんで、営業に関するある種類または特定の事項について代理権を有するもの。支配人と異なり営業全般について代理権は及ばない。現在では、ふつう部長、課長、出張所長などと呼ばれる。〔英和記簿法字類(1878)〕
⑦ 江戸時代、劇場の仕切場(しきりば)に詰め、帳元の指揮をうけ会計事務をつかさどったもの。〔劇場新話(1804‐09頃)〕」
とある。この場合は⑤のことか。実際の金を数えて、勘定帳の数字と合っているか確認する作業であろう。
点なし。
九十七句目
手代のこらずきくかねの声
下くだりあかぬ別や惜むらん
「下(しも)くだり」は『新日本古典文学大系69 初期俳諧集』(森川昭、加藤定彦、乾裕幸校注、一九九一、岩波書店)の注に「西国下り」とある。
商家の主人が大阪から西国へ夜明け前に旅立つと、手代たちが勢ぞろいして別れを惜しむ。
点なし。
九十八句目
下くだりあかぬ別や惜むらん
堺のうみのしほよなみだよ
前句の西国下向の旅立ちを堺港からとする。西国へ売られてゆく遊女としたか。高須に室町時代から遊郭があって、一休さんと地獄太夫の物語が知られている。
点なし。
九十九句目
堺のうみのしほよなみだよ
和泉灘花の浪立うき名たつ
堺は遊郭があった所だから、そこに入り浸ってると自ずと浮名が立つが、ここは一休さんのことか。
点あり。
挙句
和泉灘花の浪立うき名たつ
恋風東風風吹とばすふね
水辺三句続いたが、打越の「うみのしほ」を体とするなら舟は用なので問題はない。展開には乏しいが、浮名の船も吹っ飛んで目出度く一巻は終わる。
点なし。
「愚墨五十六句
長廿三
梅翁判」
他の巻に比べても遜色のない出来になっている。
「毎句金言えり分がたく、僻墨おほかるべく候。此上両がへに見せらるべし。」
判定に困る句が多かったということか。どれが「金」言かは両替商に聞いてくれと言って締めくくる。
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