COVID-19がこのまま広がってゆくと、どうなるのだろうか。一度なおってもまた罹るという情報もあるし、そうなるといつ発症して死ぬかわからない爆弾のようなものを抱えてみんな生きて行くことになるのだろうか。
死亡率の高かった江戸時代のような生活感覚に戻るのかもしれない。いつ死ぬかわからないから、酔い越しの金は持たずにパーと使ってしまう方がいいのかもしれない。そうなると貯蓄率が下がるかな。
いつ死ぬかわからないと思うと、やはり人はあまり苦しいことを我慢しなくなるかな。でもある程度は地道に努力しないと今のこの豊かさを維持できないから、効率よく働いて効率よく遊ぶ方向に行かなくてはならない。COVID-19が過労死を防いでくれるなら、案外日本の経済に良い影響を与えるのかもしれない。
まあ、悲観すればきりがないから、何とか前向きに考えなくちゃね。
さて、今日は知足編の『俳諧千鳥掛』から猫の句を拾ってみよう。
鞠それて妻乞猫の行衛なし 沾竹
鞠に気を逸らされてしまったか。
壁の穴覗ツ鳴ツねこの恋 氷下
これも説明の必要はないだろう。
猫も我におされて鳴な小夜鵆 一邑
小夜千鳥というと、
旅寝する須磨の浦路の小夜千鳥
声こそ袖の浪は掛けけれ
藤原家隆(千載集)
の歌があり、千鳥の声に涙を流すことを本意とする。「袖の浪は掛けけれ」は袖を濡らす=泣くということの遠まわしな言い方だ。
この句は小夜千鳥に我も泣くが、猫も押されて鳴かないでほしい、千鳥が逃げてしまうというわけだ。
付け句のほうで、
築山のなだれに梅を植かけて
あそぶ子猫の春に逢つつ 知足
雪崩が起こるような築山って、どんなけ大きな築山なのだろうか。
ちなみに新宿区戸山の戸山公園には標高は44.6mの「箱根山」があるが、これは元々は尾張藩徳川家の下屋敷の築山だったという。
雪崩といえば雪解け、小猫が遊ぶ。
天井は生てはたらく古法眼
翠簾のうちから猫の穿鑿 路通
「翠簾(すいれん)」はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典の解説」に、
「〘名〙 みどり色のすだれ。立派に飾られたすだれ。あおすだれ。《季・夏》
※菅家文草(900頃)五・冬夜呈同宿諸侍中「幸得二高躋一臥二九霞一、通宵守禦翠簾斜」
※太平記(14C後)一三「翠簾(スイレン)几帳を引落して残る処無く捜けり」
とある。
前句の「古法眼」はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典の解説」に、
「〘名〙 父子ともに法眼に補せられた時、その区別をするために父をさしていう称。特に狩野元信をいう。
※俳諧・信徳十百韻(1675)「机の朱筆月ぞ照そふ 古法眼したふながれの末の秋」
とある。狩野元信が天井画を制作していたのだろうか。それを猫が何事かと覗き見する。先の「壁の穴覗ツ鳴ツ」の句もあったが、猫の覗き見をネタにしている。猫は見ていた。
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