月も大分丸くなってきた。今日は旧暦四月の十二日。
それでは「杜若」の巻。残念ながら今日で終わり。
二表
十九句目。
ねためる筋を春惜まるる
燕に短冊つけて放チやり 叩端
「ねためる筋」を仲を引き裂こうとしている筋としたか。燕に短冊をつけて飛ばして思いを伝えようとする。
燕に短冊は何か故事でもあるのかと思ったが、よくわからない。伝書鳩は江戸時代に日本に入ってきたと言うが、おそらく江戸後期のことだろう。となると想像で燕に短冊を思いついたことになる。七夕のカササギの渡せる橋あたりがヒントになったか。
二十句目。
燕に短冊つけて放チやり
亀盞を背負さざなみ 芭蕉
これも何か故事があるわけではなさそうだ。お目出度い亀の背中に盞(さかずき)を背負わせて酒をふるまうとは何とも粋だが、実際には亀は思ったとおりに歩いてくれないし、揺れて酒がこぼれたりするから、難しい。
燕に亀と対句のように付ける相対付け(向え付け)だ。
二十一句目。
亀盞を背負さざなみ
天気さへ勅に応じて雲なびく 安信
前句を吉祥とし、森羅万象をあやつる聖人君主の登場とした。
震災の頃、当時の菅首相が「総理という役割はまさに森羅万象のことに対して対応しなければなりません」と言ったというが、これは単にあらゆることに対処するという意味で、別に森羅万象を意のままに操る能力があるわけではない。
今の安倍首相は噂によると地震を起したり火山を噴火させたり北にミサイルを発射させたりする能力があるらしいが、あくまで噂にすぎない。
二十二句目。
天気さへ勅に応じて雲なびく
五日の風の宮雨のみや 如風
「風の宮」はウィキペディアによると、「外宮正宮南方の檜尾山(ひのきおやま)の麓に位置する外宮の別宮である。」とある。
さらに、「古くは現在の末社格の風社(かぜのやしろ、風神社とも)であったが、1281年(弘安4年)の元寇の時に神風を起こし日本を守ったとして別宮に昇格した。」とある。
雨の宮はよくわからないし、「五日」にも何か意味があったかどうかは不明。何となく語呂が良くて並べた言葉であろう。
二十三句目。
五日の風の宮雨のみや
菓子売も木がくれてのみ住はつる 自笑
「菓子売(かしうり)」はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典の解説」に、
「〘名〙 菓子を売り歩くこと。また、その人。
※滑稽本・浮世床(1813‐23)初「日傘をさして高く組あげたる菓子箱をかたにかつぎて売来る此菓子売」
とある。ただこれは江戸後期のことで、ここでは京都の門前菓子を売る人のことではないかと思う。
前句を五日間雨風が続いて「風の宮雨の宮」だったとし、いつもは賑わう門前もひっそりしていて、「木がくれてのみ住はつる」となる。
二十四句目。
菓子売も木がくれてのみ住はつる
長屋の外面たつ名はぢらひ 知足
菓子売りの娘がひっそりと暮らしているのは、長屋で浮名が立ってしまったからだとする。
さて恋に転じて盛り上がってきたところでここからどういう展開をするのか、残念ながらこの先は現存していない。
未完なのか、散逸したのか、さだかではないが、挙句の体にはなってないから、ここで満尾ということはない。
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