今日は不忍池、旧岩崎邸庭園、湯島天神、神田明神、湯島聖堂のあたりを散歩した。このあたりは狭い範囲に名所が固まっている。
ソメイヨシノは半分以上散って葉桜になり、入れ替わるように八重桜が咲いていた。不忍池のほとりの大きな柳はあながち八九間も誇張ではないかと思わせる。
旧岩崎邸は補修工事で半分以上が足場に覆われてた。そうでないところは綺麗になっていた。
それでは「八九間」の巻も続き。
五句目。
内はどさつく晩のふるまひ
きのふから日和かたまる月の色 沾圃
どさつく理由を、急に天気が回復して、見送られてたお月見の宴を急遽やることになったからだとした。
六句目。
きのふから日和かたまる月の色
狗脊かれて肌寒うなる 芭蕉
「狗脊」は「ぜんまい」と読む。春の山菜で蕨と並び称される。「狗脊」を「くせき」と読むと漢方薬の原料となる別の植物になる。
ぜんまいは秋に紅葉する。紅葉というと楓や蔦のイメージがあるが、ぜんまいの紅葉も知る人ぞ知るといったところか。特に湿地に群生するヤマドリゼンマイの紅葉は美しい。
初裏に入る。
七句目。
狗脊かれて肌寒うなる
渋柿もことしは風に吹れたり 里圃
柿が落ちるというと落柿舎を連想する。
以前落柿舎のことを書いたときに、「不受精、強樹勢、ヘタムシ、カメムシ、落葉病など、柿の落下にはいろいろ原因がある」と書き、落柿舎の場合はカメムシが怪しいとしたが、当時の人は嵐山の風で落ちたとしてきた。
寒さでゼンマイの枯れるのも早く、嵐が来て柿も落ちてしまったと響きで付ける。
八句目。
渋柿もことしは風に吹れたり
孫が跡とる祖父の借銭 馬莧
今なら相続放棄という手もあるが、昔はそうも行かなかったのだろう。祖父の残した借金は孫が返さなくてはならない。
渋柿は干せば干し柿になり、現金収入になっていたのだろう。それが風で落ちてしまうと、また返済が滞ってしまう。
九句目。
孫が跡とる祖父の借銭
脇指に替てほしがる旅刀 芭蕉
「旅刀」はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典の解説」に、
「〘名〙 江戸時代、庶民が旅行中に護身用として帯用した刀。普通の刀よりやや短く、柄と鞘とに袋をかけたものが多い。旅差(たびざし)。道中差。
※俳諧・犬子集(1633)一「ぬらすなよ春雨ざやの旅刀」
とある。
「脇指」は「脇差(わきざし)」で庶民も帯刀することが許されていた。
「替てほしがる」は『校本芭蕉全集 第五巻』の注に、「仕立替えするの意」とある。装飾性のない実用本位の旅刀よりは綺麗な脇差にしつらえた方が、仕立替え費用を差し引いても高く売れたか。
今でいえば部屋を改装したほうが高く売れるというようなことか。
十句目。
脇指に替てほしがる旅刀
煤をしまへばはや餅の段 沾圃
刀を高く売りたいのを借金のためではなく年末の決済のためとした。それを煤払いが終わって次は餅搗きと年末の情景だけで匂わす。
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