二度と戦争をしないためにはどうすれば良いか。
戦争体験を記憶することは必ずしも戦争の抑止力にはならない。むしろ過去の恨みの感情を煽り、人々を復讐心に駆り立てることになれば、却って逆効果になる。
戦争をなくすにはすべての国が互いに依存し合い、多数派を形成し、少数派に回る国をなくすことだ。孤立した独裁国家をまず何とかしてグローバル資本主義の中に組み込む必要がある。以上、世間話は終り。
それでは「野は雪に」の巻の続き。
五十五句目。
涙でくらす旅の留守中
独り居を思へと文に長くどき 正好
「口説く」というと、今ではセックスの誘いだが、Weblio古語辞典の「学研全訳古語辞典」によれば、
「①繰り返して言う。くどくどと言う。恨みがましく言う。
②(神仏に)繰り返して祈願する。
③(異性を自分の意に従わせようとして)しつこく言い寄る。◇近世以降の用法。」
だという。近世の俳諧では一応恋の言葉になる。ただ、この句の場合ニュアンス的には恨み言を長々と語るという古い意味で用いられている。
独りで旅の留守を預る辛さを切々と訴え、あまり恋の感じはしない。
「口説く」と「くどくど」は何か関係あるのかと思ったが、「くどくどし」は「くだくだし」から来た言葉で、砕いて細かくするところから、細かいことを言うことを「くだくだし」と言ったようだ。それが後付で「口説く」の意味につられて「くどくどし」になったのかもしれない。
五十六句目。
独り居を思へと文に長くどき
そちとそちとは縁はむすばじ 一笑
これは②の意味に取り成したか。神様だって余りくどくどと訴えられてもううざいので、臍を曲げてしまった。
五十七句目。
そちとそちとは縁はむすばじ
だてなりしふり分髪は延ぬるや 蝉吟
「振り分け髪」はWeblio古語辞典の「学研全訳古語辞典」によれば、
「童男童女の髪型の一つ。頭頂から髪を左右に振り分けて垂らし、肩の辺りで切りそろえる。八歳ごろまでの髪型。「振り分け」とも。」
だという。
振り分け髪は髪の毛を左右に分けるため両側に垂れた髪の毛は離れ離れになり、結ばれることがない。これはそういう洒落で、『伊勢物語』とは直接関係ない。ただ、
くらべこし振り分け髪も肩過ぎぬ
君ならずしてたれかあぐべき
の歌は、「振り分け髪」という雅語の證歌にはなる。
五十八句目。
だてなりしふり分髪は延ぬるや
俤にたつかのうしろつき 宗房
これは幽霊だろうか。こういう突飛な空想が芭蕉らしい。
五十九句目。
俤にたつかのうしろつき
したへども老かがみしは身まかりて 一以
「振り分け髪」は童女だったが、ここでは老婆の幽霊とする。
六十句目。
したへども老かがみしは身まかりて
誰に尋むことのはの道 正好
老いた師匠も今は身罷って、誰に和歌の指導をしてもらえば良いものか。
ほんの一瞬、これが貞徳追善の興行だということを思い出させてくれる。
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