2018年12月7日金曜日

 今日から霜月。
 あっという間に時が過ぎて行く。
 新暦では今年もあとわずか。

 では「野は雪に」の巻の続き。
 八十七句目。

   机ばなれのしたる文章
 媒をやどの明暮頼みおき  一以

 書が上手いと恋文の代筆とかをさせられる。媒は「なかだち」。
 八十八句目。

   媒をやどの明暮頼みおき
 ちやごとにあらで深きすきもの 正好

 「ちやごと」は茶事で茶道のこと。
 『校本芭蕉全集 第三巻』(小宮豐隆監修、一九六三、角川書店)の注に、

 「茶道の数奇者ではなく別のすきもの(好色漢)であるとの意。」

とある。
 八十九句目。

   ちやごとにあらで深きすきもの
 うさ積る雪の肌を忘れ兼  蝉吟

 「茶事」にはコトバンクの「デジタル大辞泉の解説」によれば、「寄り集まって茶を飲むこと。茶菓を供して話し興じること。」という意味もある。要するに茶飲み話だ。まあ、そういう茶飯事ではないということか。
 「積もる雪の深き」と掛けてにはになる。
 九十句目。

   うさ積る雪の肌を忘れ兼
 氷る涙のつめたさよ扨   宗房

 前句の浮かれた恋心を悲恋に変える。「扨」は「さて」。
 九十一句目。

   氷る涙のつめたさよ扨
 訪はぬおも思月夜のいたう更 正好

 せっかくの月夜なのに愛しいあの男は尋ねて来てくれない。王朝風の恋で連歌っぽいが「訪わぬをも」に「おもひ」と続けるところに俳諧がある。
 九十二句目。

   訪はぬおも思月夜のいたう更
 律のしらべもやむる庵室  一以

 王朝風なので雅楽の律の調べとする。庵室だから

0 件のコメント:

コメントを投稿