先日紹介した、
おそろしき谷を隠すか葛の花 桃隣
の句だが、「葛の花」が近代俳句では秋なので、ついついその調子で季について触れなかったが、江戸時代には「葛の花」は夏の季題だった。一緒に並んだ「青山椒」の句も夏。
たびたび登場する曲亭馬琴編の『増補俳諧歳時記栞草』でも「葛の花」は夏の六月のところにある。
葛の花:蘇頌曰、葛は春苗を生じ藤(つる)を引。蔓一二丈。[和漢三才図会]花、豆の花に似て大きく、実もまた黄色豆の莢の如し。(『増補 俳諧歳時記栞草(上)』岩波文庫、p.404)
ただ、実際葛の花が咲くのは新暦で言えば8月の終わりから9月の初めぐらいで、あまり夏という感じはしない。
あるいは、本当は「おそろしき谷を隠すか葛の原」としたかったところを、まだ夏なので「葛の花」としたか。
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