明日は十三夜で、ということは今日は十二夜。月はラグビーボールのようで丸くない。
十三夜は「後の月」ともいう。
懐の猫も夜寒し後の月 秋色
桃隣撰『陸奥鵆(むつちどり)』の句。
この季節になるとさすがに残暑も終わり、夜なども肌寒くなる。そして夏の間は寄ってこなかった猫も寄ってくる、猫近しの季節でもある。
秋色というと十三の時に詠んだといわれる、
井戸端の桜あぶなし酒の酔 秋色
がよく知られている。
同じく『陸奥鵆』の句。
来月は霞まん月を栗の光(つや) 沾徳
秋色も沾徳もともに榎本其角の門。
十三夜は晴天率が高いといわれ、十五夜よりも澄んでいるとされている。だから来月の月は今よりは霞むだろうというわけだが、「栗の光」というのは十五夜が芋名月と呼ばれているのに対し十三夜が栗名月と呼ばれていることから来る。時期的にも栗の実る頃だし、十三夜の完全に丸くならない形状も栗を思わせる。十三夜とは書かれていないが十三夜を詠んだ句で間違いない。
ならばお師匠さんの句。
題十三夜
月影のここ住よしの佃島 其角
李由・許六撰の『韻塞(いんふたぎ)』の句。
佃島には住吉神社があり、その住吉と掛けて十三夜で月の光もひときわ澄んでいて良いという句になる。
この句は其角自身が晩年に編纂した『五元集』では、
名月やここ住よしの佃島
になっている。直さなくても良かったのにという感じのベタな句になっている。推測するに、この方が覚えやすくて、伝わってゆくうちにいつの間にみんな「名月や」で覚えてしまっていたので、それに合わせたのではないか。
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