今日は朝から雨で、午後になってようやく止んだ。
テレビではどこもかしこも雪が少ないというニュースをやっている。生活するには雪がないほうが楽だろう。ただ、後で水不足とかなければいいが。
それでは「半日は」の巻の続き。
十五句目。
猫のいがみの声もうらめし
上はかみ下はしもとて物おもひ 芭蕉
身分の高い人も身分の低い人も恋の悩みは一緒だ。それは猫だって変りはしない。
猫のいがみ合いに、暗に人のいがみ合いがあることを付ける、違え付けの一種といえよう。
十六句目。
上はかみ下はしもとて物おもひ
皆白張のふすまなりけり 示右
「白張(しらはり)」はコトバンクの「デジタル大辞泉の解説」に、
「糊(のり)をこわく張った白い布の狩衣(かりぎぬ)。雑色(ぞうしき)などが着た。白張り装束。小張り。はくちょう。」
とある。「はくちょう」と読む場合は、同じくコトバンクの「デジタル大辞泉の解説」に、
「《「しらはり」を音読みにした語》
1 「しらはり」に同じ。
2 傘持ち・沓(くつ)持ち・車副(くるまぞい)などの役をする、1を着た仕丁(じちょう)。
3 神事・神葬の際、白い衣を着て物を運ぶなど雑用に従事する者。」
とある。「ふすま」は夜着のこと。
「白張のふすま」はそのままだと白い夜着のことだが、それだと意味がわかりにくい。
『校本芭蕉全集 第四巻』(小宮豐隆監修、宮本三郎校注、一九六四、角川書店)の注には、
「ここでは葬祭の白装束、白の上衣の意か(柳田國男氏『俳諧評釈』説)。」
とある。
だとすると、前句の「物おもひ」を「喪のおもひ」に取り成したことになる。
十七句目。
皆白張のふすまなりけり
高麗人に名所を見する月と花 好春
好春は季吟門で京都の人。
前句の「白張のふすま」を韓服のこととする。
朝鮮通信使は天和二年(一六八二年)に来日している。ただ、その時は緑系の官服を着ていて白ずくめではなかったという。京都では八月に本國寺に宿泊している。
韓服が白いのが多いという知識は、朝鮮通信使とは関係なく、対馬に貿易に来る朝鮮(チョソン)人のことが京にまで噂で広まっていたのではないかと思う。
白い韓服の御一行を名所に案内すれば、山桜の白い花に白く光る月で白一色の世界になる。
十八句目。
高麗人に名所を見する月と花
春の海辺に鯛の浜焼 史邦
浜焼きはコトバンクの「日本大百科全書(ニッポニカ)の解説」に、
「広島県の郷土料理。とりたての魚を浜辺で焼くのをいうが、古くから浜焼きとはタイを材料とすることになっている。『和訓栞(わくんのしおり)』には「鯛(たい)などを塩を焼く釜(かま)の下に生ながら土に埋(い)けて後焼くなり」とある。『料理談合集』には「鯛をよく洗ひ、土間へ塩を厚く敷き、上へ鯛を置き上より瓦(かわら)を蓋(ふた)にして、後先も瓦にてふさぎ炭火を多く瓦の上よりかけて蒸焼きにし(中略)、急なる時は大竹串(たけぐし)にさして長火鉢の縁へ立てかけて焼く」とある。」
とある。
ただ、『和訓栞(わくんのしおり)』は安永六年 (一七七七年)、『料理談合集』は享和元年(一八〇一年)と時代が下るので、芭蕉の時代でも同じ料理法だったかどうかはわからない。
いずれにせよ、鯛は目出度いもので、お祝いの席などに出される。
0 件のコメント:
コメントを投稿