2020年1月15日水曜日

 今日は朝から雨で、午後になってようやく止んだ。
 テレビではどこもかしこも雪が少ないというニュースをやっている。生活するには雪がないほうが楽だろう。ただ、後で水不足とかなければいいが。
 それでは「半日は」の巻の続き。

 十五句目。

   猫のいがみの声もうらめし
 上はかみ下はしもとて物おもひ  芭蕉

 身分の高い人も身分の低い人も恋の悩みは一緒だ。それは猫だって変りはしない。
 猫のいがみ合いに、暗に人のいがみ合いがあることを付ける、違え付けの一種といえよう。
 十六句目。

   上はかみ下はしもとて物おもひ
 皆白張のふすまなりけり     示右

 「白張(しらはり)」はコトバンクの「デジタル大辞泉の解説」に、

 「糊(のり)をこわく張った白い布の狩衣(かりぎぬ)。雑色(ぞうしき)などが着た。白張り装束。小張り。はくちょう。」

とある。「はくちょう」と読む場合は、同じくコトバンクの「デジタル大辞泉の解説」に、

 「《「しらはり」を音読みにした語》
 1 「しらはり」に同じ。
 2 傘持ち・沓(くつ)持ち・車副(くるまぞい)などの役をする、1を着た仕丁(じちょう)。
 3 神事・神葬の際、白い衣を着て物を運ぶなど雑用に従事する者。」

とある。「ふすま」は夜着のこと。
 「白張のふすま」はそのままだと白い夜着のことだが、それだと意味がわかりにくい。
 『校本芭蕉全集 第四巻』(小宮豐隆監修、宮本三郎校注、一九六四、角川書店)の注には、

 「ここでは葬祭の白装束、白の上衣の意か(柳田國男氏『俳諧評釈』説)。」

とある。
 だとすると、前句の「物おもひ」を「喪のおもひ」に取り成したことになる。
 十七句目。

   皆白張のふすまなりけり
 高麗人に名所を見する月と花   好春

 好春は季吟門で京都の人。
 前句の「白張のふすま」を韓服のこととする。
 朝鮮通信使は天和二年(一六八二年)に来日している。ただ、その時は緑系の官服を着ていて白ずくめではなかったという。京都では八月に本國寺に宿泊している。
 韓服が白いのが多いという知識は、朝鮮通信使とは関係なく、対馬に貿易に来る朝鮮(チョソン)人のことが京にまで噂で広まっていたのではないかと思う。
 白い韓服の御一行を名所に案内すれば、山桜の白い花に白く光る月で白一色の世界になる。
 十八句目。

   高麗人に名所を見する月と花
 春の海辺に鯛の浜焼       史邦

 浜焼きはコトバンクの「日本大百科全書(ニッポニカ)の解説」に、

 「広島県の郷土料理。とりたての魚を浜辺で焼くのをいうが、古くから浜焼きとはタイを材料とすることになっている。『和訓栞(わくんのしおり)』には「鯛(たい)などを塩を焼く釜(かま)の下に生ながら土に埋(い)けて後焼くなり」とある。『料理談合集』には「鯛をよく洗ひ、土間へ塩を厚く敷き、上へ鯛を置き上より瓦(かわら)を蓋(ふた)にして、後先も瓦にてふさぎ炭火を多く瓦の上よりかけて蒸焼きにし(中略)、急なる時は大竹串(たけぐし)にさして長火鉢の縁へ立てかけて焼く」とある。」

とある。
 ただ、『和訓栞(わくんのしおり)』は安永六年 (一七七七年)、『料理談合集』は享和元年(一八〇一年)と時代が下るので、芭蕉の時代でも同じ料理法だったかどうかはわからない。
 いずれにせよ、鯛は目出度いもので、お祝いの席などに出される。

0 件のコメント:

コメントを投稿