今日は三浦半島のソレイユの岡に行った。菜の花が咲き富士は霞み、波の静かな海はのたりのたりと、今年も春をフライングゲット。
ここにもカピバラがいたしアルパカもいた。
それでは風流の方に戻り、旧暦の今年はまだ日にちがあるので「年忘歌仙 半日はの巻」を読んでいくことにした。
去年の暮れ二十九日に発句と脇を読んだので第三から。
雪に土民の供物納る
水光る芦のふけ原鶴啼て 凡兆
「ふけ原」は水の深い原のこと。芦の茂るところを「芦原」というように、水に浸っていても草の茂る所は原になる。
苗字で「泓原(ふけはら)」さんがいるらしいが、泓の字は水が深くて清いという意味がある。「泓田(ふけだ)」さんという人もいるらしい。
前句の「供物納る」の目出度さから鶴を付ける。冬枯れの芦原の水が日に照らされ光っていれば、その周りの雪の積もった所もまばゆいばかりに輝いているだろう。そんな中に鶴がいれば、まさに吉日だ。
四句目。
水光る芦のふけ原鶴啼て
闇の夜渡るおも楫の声 去来
前句の光る水を篝火に照らされた水面とし、場面を夜に転じる。船頭の「面舵いっぱい」の声が聞こえる。
五句目。
闇の夜渡るおも楫の声
なまらずに物いふ月の都人 景桃丸
景桃丸に関しては『校本芭蕉全集 第四巻』(小宮豐隆監修、宮本三郎校注、一九六四、角川書店)の補注に、
「当時の上御霊神社別当は第二十八代法印小栗栖祐玄。俳号、示右。景桃丸は祐玄の子で当時十一歳。のち二十九代別当を嗣ぎ、小栗栖元規と称す。」
とある。
「月の都」は冥府のことなので、「月の都人」は幽霊か。闇夜に舟漕ぐのは確かに怪しい。
その幽霊も「都人」なので訛りがないとは洒落ている。
月の定座で前句が「闇」だから、これは難題と言えよう。
六句目。
なまらずに物いふ月の都人
秋に突折ル虫喰の杖 乙州
打越の「闇」がはずれるので、ここは単に月の下の都人の意味にできる。「都人」は遠い辺鄙な地で都から来た人を呼ぶ言い方だから、流人のこととしたのだろう。長旅に使い古した杖も虫が食っていて折れてしまう。
初裏。
七句目。
秋に突折ル虫喰の杖
実入りよき岡部の早田あからみて 史邦
「早田」は「わさだ」と読む。早稲を植える田んぼ。供給量の少ない時期に取れるため高く売れ、実入りがいい。
その早稲田も赤く実ったので、もう旅を続ける必要はないと杖を折る。
八句目。
実入りよき岡部の早田あからみて
里ちかくなる馬の足蹟 玄哉
取れたばかりの稲を運ぶ馬が里へと向う。
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