2019年12月16日月曜日

 昨日は赤羽へPagan Metal Horde vol.4を見に行った。Ethereal Sin、PAGAN REIGN、EINHERJER、Týrどれも最高だった。
 どれもお国柄とか感じられて面白かった。聞いていてその国の景色が浮かんでくるような気がした。Ethereal Sinは日本のバンドで今回は黒の陰陽師姿で登場。音楽は世界を繋ぐ。
 それでは「枇杷五吟」の続き。

 二十五句目。

   扨々野辺の露のいろいろ
 簀戸の番烏帽子着ながらうそ寒く 北枝

 これは謡曲『烏帽子折』の本説か。
 鞍馬寺を飛び出した牛若丸は商売で東国に向う金売り吉次の従者となる。このとき追っ手を欺くため烏帽子を新調することになる。
 そして美濃の国赤坂の宿で熊坂長範盗賊団から吉次を守る。
 謡曲『熊坂』ではこのときの戦いの場面が描かれる。そして最後は、

 「苔の露霜と。消えし昔の物語。」

と結ばれる。
 簀戸はこの場合宿の夏用の扉、簀戸門であろう。
 簀戸(すど)はコトバンクの「デジタル大辞泉の解説」に、

 「1 竹を粗く編んで作った枝折戸(しおりど)。
  2 ヨシの茎で編んだすだれを障子の枠にはめこんだ戸。葭戸(よしど)。《季 夏》
  3 土蔵の網戸。
  4 「簀戸門(すどもん)」の略。」

とある。
 二十六句目。

   簀戸の番烏帽子着ながらうそ寒く
 ゆるさぬものか妹が疱瘡     牧童

 簀戸の烏帽子を被った番人は、疱瘡神から妹(妻)を守ろうとしている。
 疱瘡の原因のわからなかった古代の人は疱瘡神によるものと考え、武威でもって守れるものと考えた。
 江戸時代後期の浮世絵でも疱瘡神と戦った源為朝の絵が盛んに描かれた。
 二十七句目。

   ゆるさぬものか妹が疱瘡
 うつくしき袂を蠅のせせるらん  乙州

 前句の「ゆるさぬものか」を疱瘡神ではなく蠅に対しての言葉とする。「せせる」は今日の「せせら笑う」に名残を留めるような「からかう」という意味でも使うが、虫が刺したりたかったりする場合にも用いる。
 「うつくし」には愛しいという意味もある。
 二十八句目。

   うつくしき袂を蠅のせせるらん
 食打こぼす郭公かな       小春

 袖に蠅が来るのをこぼした飯のせいだとする。
 二十九句目。

   食打こぼす郭公かな
 酔狂は坂本領の頭分       魚素

 坂本は近江坂本か。比叡山の東側で今も比叡山に登るケーブルカーの発着点になっている。比叡山の門前町で里坊が建ち並び、栄えていた。戦国時代には明智光秀の坂本城もあった。
 江戸時代には幕府領となり、遠国奉行の指揮下で大津代官が治めていた。
 最初の大津代官大久保長安はウィキペディアによると、「無類の女好きで、側女を70人から80人も抱えていたと言われている。」との逸話があるという。
 三十句目。

   酔狂は坂本領の頭分
 松にきあはす唐崎の茶屋     北枝

 「にきあはす」は「に・来あわす」か。
 坂本は唐崎の松でも有名だ。
 坂本領のお偉いさんが唐崎の松を見に来たか、庶民の来るような茶屋にひょっこり現れたりする。

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