だいぶ寒くなってきた。
夕暮れの月は半月になっていた。
それでは「凩の」の巻、挙句まで。
二裏。
三十一句目。
鷗と遊ぶ江のかかり舟
黄昏を無官の座頭うたひけり 言水
ウィキペディアによると琵琶法師は、「検校、別当、勾当、座頭の四つの位階に、細かくは73の段階に分けられていたという。これらの官位段階は、当道座に属し職分に励んで、申請して認められれば、一定の年月をおいて順次得ることができたが、大変に年月がかかり、一生かかっても検校まで進めないほどだった。」という。無官というのは、まだ官位を持っていない初心の琵琶法師だという。
場面を黄昏時とし、はじめたばかりの琵琶法師が鷗相手に練習をしているのだろうか。
三十二句目。
黄昏を無官の座頭うたひけり
ゆるく焼せてながく入風呂 言水
「焼せて」は「たかせて」と読む。当時の銭湯はサウナだったが、この場合は家の中に据え付ける据風呂(水風呂)だろう。
ここでいう無官の座頭は多分なんちゃって座頭で、入浴している人が気分良くて平曲の一節なんかを歌ったりしたのだろう。
三十三句目。
ゆるく焼せてながく入風呂
しぐれより雪みる迄の命乞 言水
「命乞(いのちごひ)」は本来は長生きができるように神仏に祈ることだった。
長風呂をしていると、時雨がいつの間に雪に変わっていた。
三十四句目。
しぐれより雪みる迄の命乞
内裏拝みてかへる諸人 言水
内裏というと京都御所のことだろうが、ここを訪れて神社のように拝んで、長寿を祈ることは普通に行われていたのだろうか、よくわからない。
だいぶ後になるが、
女具して内裏拝まんおぼろ月 蕪村
の句もある。
三十五句目。
内裏拝みてかへる諸人
やさしきは花くはへたる池の亀 言水
ネットで調べたが、亀が花を食べるのは珍しくないようだ。
「やさし」の元の意味は身も痩せ細るような思いをすることだが、それが転じて謙虚で立派な心がけを言うこともある。
まあ、実際は花を食べているのだろうけど、見た目には花を咥えていると、内裏に花を奉げているようにも見える。
挙句。
やさしきは花くはへたる池の亀
弥生のあやめ出さぬ紫 言水
池の亀ということで、池にはあやめ(ここでは花菖蒲であろう)が植えられているが、弥生なのでまだ紫の花も蕾も見えない。亀の咥えている桜の花が池に花を添えている。
まあ、亀に花ということで、目出度く一巻は終わる。
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