2018年6月22日金曜日

 今日は梅雨の中休みか、暑かった。
 それでは『嵯峨日記』の続き。黄庭堅の詩の所からだったか。

   病起荊江亭即事  黃庭堅
 翰墨場中老伏波 菩提坊裏病維摩
 近人積水無鷗鹭 時有歸牛浮鼻過
 閉門覓句陳無己 對客揮毫秦少遊
 正字不知溫飽未 西風吹淚古藤州

 筆と墨のある所には老いた伏波将軍がいる
 釈迦入滅した坊の裏には病んだ維摩居士がいる
 最近の人が集めた水には鷗や鷺は居ず
 時々帰る牛の浮かんだ鼻先が行く
 門を閉ざし良い句をひねる陳無己に
 客を前にして筆を揮う秦少游
 正しい字も知らずにぬくぬくとしているうちに
 涙に秋風が吹くいにしえの藤州

 陳師道が名利を求めずに門を閉ざしてひたすら詩作に没頭し、秦少遊は客の求めに応じて気軽に筆を揮った。どちらの生き方にも惹かれるものがある。
 「正字不知」はそれにひきかえ我が身はという黄庭堅の謙遜だろうか。
 芭蕉もまた、一人庵に籠って発句を練ることもあっただろうし、連句は連衆の前で即興で句を繋いでゆく。
 芭蕉はこの二年後の元禄六年の七月、病気療養のため「閉関之説」を書き、一ヶ月ほど閉門する。その時の句は、

 あさがほや昼は鎖おろす門の垣  芭蕉

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