2018年6月20日水曜日

 見たか僕等の御霊(みたま)、そんな感じの昨日の試合だった。今朝の新聞にも「サムライ魂」の文字が躍っていた。
 とはいえ今日は一日雨で、時折強く降った。
 では『嵯峨日記』の続き。

 もう一首の漢詩は「尋小督墳(こがうのつかをたづぬ)」だ。
 小督(こがう)の塚については2017年5月29日の俳話でも書いたが、今は渡月橋の北岸を西に行ったところにあるが、かつては臨川寺の近く、松尾の竹の中にあったという。『嵯峨日記』には「松尾の竹の中に小督(こがう)屋敷と云有」とある。「都(すべ)て上下の嵯峨ニ三所有、いづれか慥(たしか)ならむ。」とあるように、三つある候補の内の一つだったようだ。
 小督はコトバンクの「デジタル大辞泉の解説」にこうある。

「一、中納言藤原成範(ふじわらのしげのり)の娘。高倉天皇に愛されたため、建礼門院の父平清盛によって追放された。小督の局(つぼね)。生没年未詳。
二、謡曲。四番目物。金春禅竹(こんぱるぜんちく)作。高倉院の命を受けた源仲国が、名月の夜に嵯峨野(さがの)法輪寺辺で、琴の音に導かれて小督の局を捜しあてる。」

 さて、その詩を見てみよう。

   尋小督墳      丈艸
 強撹怨情出深宮 一輪秋月野村風
 昔年僅得求琴韻 何処孤墳竹樹中

 強く怨情をかき乱し御所の奥の部屋を出て、
 一輪の秋の月に田舎の村の風
 昔僅かに得た琴の音を探す
 一つ残った墳墓は竹薮の中のどこに

 高倉帝に愛された小督は清盛の怒りを恐れて、嵯峨野法輪寺のあたりの竹薮に身を隠す。「強」はこの場合「強いて」ではなく「強く」の方か。
 さあ、それでは超訳してみようか。チェキラッ、

 恨み取り乱して出た後宮
 秋の月一つ田舎は風ぴゅうぴゅう
 昔かすかに聞いた琴の音を探し
 その物語の舞台はどこ?竹林に墓一つ
 
 まあ、丈艸の詩は上手いとは言えないが、俳諧漢詩としてはこれでいいのだろう。
 次の史邦の発句、

 芽出しより二葉に茂る柿の実  史邦

は2017年6月3日の俳話にも書いたので、重複するが、「實」を「み」と読んでしまうと柿の実は秋になってしまうのでここでは「さね」と読む。新芽の枝、くらいに考えた方がいいか。
 芽吹いてきた柿の芽は対生で分厚く幅の広い葉が二枚向かい合って生えてくる。
 この句の季語は「茂る」で夏。近代では「柿若葉」という夏の季語があるが、この時代にはない。

   途中吟
 杜宇啼や榎も梅櫻    丈艸

 ホトトギスが啼く頃には梅や桜は終っているが、榎の立派に枝を広げた姿は梅や桜にも劣らない。
 最後の、

   黄山谷之感句
 杜門覔句陳無己 對客揮毫秦少游

というのは、芭蕉が目を留めた黄山谷(黄庭堅)の詩句という意味か。
 オリジナルは、

   病起荊江亭即事  黃庭堅
 翰墨場中老伏波 菩提坊裏病維摩
 近人積水無鷗鹭 時有歸牛浮鼻過
 閉門覓句陳無己 對客揮毫秦少遊
 正字不知溫飽未 西風吹淚古藤州

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