2017年6月23日金曜日

 ネットで芦田愛菜ちゃんの句が話題になっていた。

   学校の傘立て
 青空や赤い長靴鬼ころぶ    愛菜

 「鬼ころぶ」の意味がわからないが、この場合の「鬼」はひょっとして強調の言葉で「鬼のようにころぶ」ということだろうか。
 梅雨の雨が上がり青空が見えると喜んで、朝履いてきた赤い長靴で外に飛び出すが、履きなれない靴なので派手にころんでしまったというなら、なかなか面白いのではないかと思う。やはり凡人の句ではない。
 季語のない弱点は前書きで補えばいい。

   梅雨晴れの学校の傘立てにて
 青空や赤い長靴鬼ころぶ

 ところで話は変わり、今日も「紫陽花や」の巻の続き。二十三句目から。

   五つがなれば帰ル女房
 此際(このきは)を利上ゲ計に云延し 杉風
 (此際を利上ゲ計に云延し五つがなれば帰ル女房)

 「利上げ」は今日では金利を上げることだが、ここでは元本を返済せずに利息分だけを支払うことを言うらしい。ただ、辞書を見ると用例がこの句だというのは気になる。ほかの用例はあるのだろうか。
 元本が減らなければ永遠に利息を払い続けなくてはいけないし、それすら滞るとなれば、後は借金が雪だるま式に増えてゆき、借金地獄に落ちてゆくパターンだ。女房にも逃げられる。

無季。

二十四句目
   此際を利上ゲ計に云延し
 まんまと今朝は鞆(とも)を乗出す 桃隣
 (此際を利上ゲ計に云延しまんまと今朝は鞆を乗出す)

 鞆は備後国の鞆の浦で瀬戸内海の海上交通の要。何とかこれからの商売で借金を返すんだと、前向きに転じた句だ。

無季。「鞆」は名所。水辺。

二十五句目
   まんまと今朝は鞆を乗出す
 結構な肴を汁に切入て     八桑
 (結構な肴を汁に切入てまんまと今朝は鞆を乗出す)

 「まんま」を飯に取り成す。朝飯をしっかり取ってから航海に乗り出す。

無季。

二十六句目
   結構な肴を汁に切入て
 見世より奥に家はひっこむ   芭蕉
 (見世より奥に家はひっこむ結構な肴を汁に切入て)

 これは京の町屋だろうか。間口は狭いが奥行きが長く、うなぎの寝床のような家は税金対策だとも言われている。奥の間では結構な肴を惜しげもなく汁に切り入れている。

無季。「家」は居所。

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