今日は久しぶりに梅雨らしい雨が降った。
『続猿蓑』の五月雨の句は三句で、残りの一句はこれだ。
五月雨や踵(きびす)よごれぬ磯づたひ 沾圃
「磯づたひ」は海岸沿いに行くことを言い、旅体の句と言えよう。
芭蕉の「温泉ノ頌」という俳文にも、「北海の磯づたひして、加州やまなかの涌湯に浴す」とあり、「あかあかと」の句の真跡懐紙写しにも、「北海の磯づたひ、まさごはこがれて火のごとく」の文がある。実際に海辺を歩くというよりは、海岸線に沿って旅するという用例だ。
この句の「や」も倒置による係助詞的な用法で、「五月雨に踵よごれぬ磯づたひや」の倒置であろう。
海辺の道だから砂地なので道がぬからず、五月雨の季節でも踵が汚れないというのが言葉通りの意味だが、暗にマイナーイメージで、五月雨の季節は道がぬかるんで旅をするのに難儀する、という意味を込めているのであろう。
そのほか、目についた五月雨の句。
まず等躬撰の『伊達衣』(元禄十二年)から、
五月雨はどこへ行やら和田津海 心水
この句は、
木枯しの果てはありけり海の音 言水
に似ている。同巣(同竃)といってもいいか。作者名も似ている。言水の句のほうは元禄三年の『新撰都曲』だから、言水の方が先と思われる。
盤子が餞別
それほどの色黒むまじ五月雨 風仙
五月雨の季節で日が射さないからそれほど日焼けもしないだろう、という意味だが、
早苗にも我色黒き日数かな 芭蕉
の句が『泊舟集』(元禄十一年)にあるので、影響があったかもしれない。
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