2017年6月18日日曜日

 今日は午後から雨になった。
 「蕪村論」を鈴呂屋書庫のほうにアップした。内容は春風馬堤曲、澱河歌、「牡丹散て」の巻の解説。
 それでは「紫陽花や」の巻の続き。

四句目
   朔に鯛の子売の声聞て
 出駕籠の相手誘ふ起々     桃隣
 (朔に鯛の子売の声聞て出駕籠の相手誘ふ起々)

 魚などの生鮮物の売り子の声は、その朝上がったもの痛まぬうちに売りに来るため朝が早い。ちょうど人が起き出すころで、宿場では駕籠に乗る人の客引きが始まる。「出駕籠」は道端で客待ちをする駕籠のこと。

無季。「相手」は人倫。

五句目
   出駕籠の相手誘ふ起々
 かんかんと有明寒き霜柱    八桑
 (かんかんと有明寒き霜柱出駕籠の相手誘ふ起々)

 「かんかん」というのは今の感覚だと「がちがち」といったところか。明け方の宿場の旅立ちの風景に、月の定座にふさわしく有明の月を出す。ただの有明だと月並だからか、冬のがちがちの霜柱を添える。

季題は「霜柱」で冬。「有明」はこの場合冬の月で、夜分、天象。

六句目
   かんかんと有明寒き霜柱
 榾堀かけてけふも又来る    芭蕉
 (かんかんと有明寒き霜柱榾堀かけてけふも又来る)

 「榾(ほだ)」は曲亭馬琴編の『増補 俳諧歳時記栞草』に、「材に伐り取たる木の根を掘出したるものなり。関東では根骨といふ。山家、玄冬のころ炉に昼夜これを焼て寒を凌ぐものなり。」とある。
 その榾を掘りに今日もやってくる。

季題は「榾」で冬。

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