今日は夕立があったらしいが、仕事でたまたま行ってた場所では多少雲はあったけど晴れていた。
それでは「牡丹散り」の巻の続き。
四句目
すはぶきて翁や門をひらくらむ
婿のえらびに来つるへんぐゑ 蕪村
(すはぶきて翁や門をひらくらむ婿のえらびに来つるへんぐゑ)
延宝五年(一六七七)に『諸国百物語』が刊行され、芭蕉の時代には百物語が流行したようだ。『俳諧次韻』に収められている延宝九年秋の「鷺の足」の巻にも、
先祖を見知ル霜もの夜語
灯火をくらく幽灵を世に反ス也 其角
の句がある。前句の「夜語」を百物語に取り成した句だ。
江戸中期になると、芭蕉とも交流のあった英一蝶の門人佐脇嵩之の『百怪図巻』や、鳥山石燕『画図百鬼夜行』などの今でいう妖怪図巻が作られ、上田秋成の『雨月物語』を始め、多数の妖怪怪異を題材とした草紙が出版された。そういう意味でも、この句は流行の句と言っていいのだろう。
すはびき爺さんを御伽噺に出てくるようなお爺さんとし、その爺さんのもとに婿を探しに来た変化がやって来る。女狐か何かだろうか。
この頃はまだ「妖怪」という言葉はあまり用いられず、蕪村も「へんぐゑ(変化)」という言葉を用いている。
無季。「婿」は人倫。
五句目
婿のえらびに来つるへんぐゑ
年ふりし街(ちまた)の榎斧入れて 蕪村
(年ふりし街の榎斧入れて婿のえらびに来つるへんぐゑ)
江戸の王子には装束榎と呼ばれる榎の巨木があって、そこに大晦日になると狐たちがたくさん集まってきて衣装を改め、王子稲荷に参詣したといわれている。
おそらく似たような話はかつて他にもあったのだろう。町中にあった榎なら切り倒されたりすることもあったのか。句はうしろ付けになっていて、「へんぐゑの婿のえらびに来つる年ふりし街の榎、斧入れて」の倒置になる。
「て」止めのうしろ付けは古くから普通に行われている。
無季。「榎」は植物、木類。
六句目
年ふりし街の榎斧入れて
百里の陸地(くがぢ)とまりさだめず 几董
(年ふりし街の榎斧入れて百里の陸地とまりさだめず)
「百里」は遥か遠いことのたとえで、きっちり四百キロというわけではない。「陸地(くがぢ)」は陸路に同じ。「泊りわびしき」という初案があり、この方がわかりやすい。遥かな旅をして、そこで榎の古木のことを耳にして行ってみると既に切り倒されてたりする。そのように月日は留まることを知らない。
無季。「百里の陸地」は旅体。
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