何か今更のようにマスコミは暑いのは日本だけでないとばかりに、ロサンゼルスが暑い、ストックホルムが暑いと言い出した。そういえばワールドカップのロシアも暑かったようだな。みんな暑い時は無理しないでね。まじ死ぬよ。
では昨日の『続猿蓑』の句が途中だったので‥。
茨ゆふ垣もしまらぬ暑かな 素覧
「茨」はウィキペヂアに「棘のある木の総称」とある。ノイバラ・ヤマイバラ・ヤブイバラといったバラ属だけでなく、ミカン科カラタチ属のカラタチも含まれる。
カラタチは古くから棘があるため防犯上の意味もあって生垣に用いられてきた。クコも棘があるので生垣に用いられる。
飛田範夫の『日本の生垣の歴史的変遷について』(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jila1994/62/5/62_5_413/_pdf)によれば、
「江戸時代前期も刺がある樹木を使った生垣は盛んに設 けられていたようで、宮崎安貞著『農業全書(巻9)』(元禄9年[1696])の「園籠を作る法」 に、
いけがきに作る木は、臭橘(からたち)、枸杞(くこ)、五加(うこぎ)、秦椒(さんしょう)、梔子(くちなし)刺杉(はりすぎ)、楮(こうぞ)、桑、桜、桃、細竹色々多し。此等の類よし。中にも臭橘、うこぎ、枸杞勝れて宜し。
と記されていることから、カラタチ・クコ・ウコギ・サンショウ・ハリスギ(ネズミサシ?)が 生垣に用い られてたことがわかる。
こうした実例としては、延宝3年(1675)2月に金沢藩の一柳堅物屋敷廻りにサイカチが挿し木され、芭蕉七部集の1つの『猿蓑(巻5)』(元禄[1691])の芭蕉の句に「うき人を枳穀垣よりくゞらせん[2022]」と詠 まれていることなどがある。井原西鶴著『日本永代蔵(巻6第1)』(貞享5年)〔1688])には、「程なく大屋敷を買いもとめ[略]生垣も拘杞・五加木を茂らせ」と、物語上だが利発な男が無駄がないよ うにとクコ ・ウコギを生垣にした と書かれている。」
とのことである。
『猿蓑』の芭蕉の枳穀垣(きこくがき)の句は、「鳶の羽も刷(かいつくろい)ぬはつしぐれ 芭蕉」を発句とした巻の二十五句目で、
隣をかりて車引こむ
うき人を枳穀垣よりくぐらせん 芭蕉
という付け句だ。憂き人が久々に隣にやってきたので、門を閉ざしてカラタチの棘だらけの垣根をくぐらせようか、という句。「せん」は「せむ」でそう思うだけで、実際は門を開けてしまうのだろうな。
この枳穀垣(きこくがき)はカラタチの垣だ。
素覧の句に戻るなら、この句はカラタチの棘で入れなくしている垣根なのに、暑いもんだから風を通すために門が開けっ放しになっている、という意味だろう。
草の戸や暑を月に取かへす 我峯
草の戸の昼も暑さも、日が暮れて月が出れば涼しくて風情もあり、昼の暑さのマイナスを取り返す。
あつき日や扇をかざす手のほそり 印苔
暑い日が続くと夏痩せで、扇であおぐ手もやせ細ってゆく。扇の骨が見えるように手の指の骨が見えるという類似に面白さがある。
積あげて暑さいやます疊かな 卓袋
昔は暑い時には畳をはがして板の間にして涼しくしたというが、暑さが増すごとにはがす畳の数も増えてゆく。
粘になる蚫も夜のあつさかな 里東
鮑が糊になるって、そりゃ腐っているから食べちゃ駄目だ。
立寄ればむつとかぢやの暑かな 沾圃
鍛冶屋は火を使うからただでさえ暑い所を余計に暑い。
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