猛暑で二年後の東京オリンピックのことが心配されている。
これまでも暑い時期にオリンピックが行われたことはあったが、今年のような暑さが二年後にもとなると、やはり心配だ。
多分、競技の多くを夜と早朝に集中させることで解決されるのではないかと思う。この時間帯は欧米のゴールデンタイムでもあるため、スポンサーは賛成するだろう。
ついでに勤務時間も遅らせてくれれば、仕事でオリンピックが見れないという不満も解消できるのではないかと思う。
問題はやはり夏の甲子園ではないかと思う。某大手新聞社が主催者だから、マスコミはこの話題に触れたくないのだろうけど、実際に熱中症での選手交替や応援の高校生が熱中症で倒れるという事件は起きている。
夏の甲子園は象徴的な意味でも、「球児たちが暑い中で頑張ってるんだからお前らも‥」だとかいうことで、無理強いするときに利用されたりするし、心身を鍛えれば暑さは克服できるという神話を生む元になっている。
日本中が見守る大会だからこそ、熱中症対策でも日本中に見本を見せてほしい。選手はまだそれなりの覚悟でやっているかもしれないが、関係ない生徒やブラスバンドを駆り出すのはやめた方が良いと思う。死んたら永久にもう野球をすることもみることもできない。去年死んだ女子マネジャーへ捧げる2本塁打なんてものを美談にするな!
それでは今日は『続猿蓑』の暑い句を。
盛夏
かたばみや照りかたまりし庭の隅 野萩
李盛る見世のほこりの暑哉 万乎
藪醫者のいさめ申されしに答へ侍る
実にもとは請て寐冷の暑かな 正秀
取葺の内のあつさや棒つかひ 乙州
煤さがる日盛あつし臺所 恕風
茨ゆふ垣もしまらぬ暑かな 素覧
草の戸や暑を月に取かへす 我峯
あつき日や扇をかざす手のほそり 印苔
積あげて暑さいやます疊かな 卓袋
粘になる蚫も夜のあつさかな 里東
立寄ればむつとかぢやの暑かな 沾圃
「かたばみや」の句は、夏の炎天下だと葉を畳むカタバミを「照りかたまりし」と表現したのか。黍の葉はよれて、カタバミは照り固まる。
カタバミはクローバに似た三つ葉で、家紋にも用いられるが、雑草として嫌われ、畑の畦道や庭の隅などに黄色い花を咲かせる。
「李盛る」の句は、市場の情景か。時代劇の演出だったらコーンスターチをばら撒く所だろう。未舗装の土の道路や広場に土埃は付き物だった。
李(すもも)は江戸時代に栽培が広まり食べられるようになった。真夏に熟す。
「見世」は本来は「見世棚」という商品を陳列する棚を言った。略して見世と呼ばれるようになり、やがて店舗の意味になった。店舗(みせだな)を「みせ」と略さずに「たな」と略すこともある。
塩鯛の歯ぐきも寒し魚の店(たな) 芭蕉
「たな」が陳列台なのに対し「みせ」は見せるというのが本義だから、遊郭の遊女が見えるようにするところも見世と呼ばれた。
「実(げ)にもとは」の句。「藪醫者」というと元は名医だったのだが、その名声が世間津々浦々に知れ渡ると「藪」を名乗る偽物が横行するようになり、偽医者の代名詞になった、と『風俗文選』にある。
そのやぶ医者の言うとおりにしたら、夏なのに寝冷えしたということか。一体何を教えたのか。
夕涼み疝気おこしてかへりけり 去来
という句も『去来抄』に去来が初学の頃に作って芭蕉の一笑されたというが、「疝気」も腹が冷えることによる症状をいう。
「夕涼み」に「疝気」は「これにてもなし」だが、「寐冷の暑」は俳諧になる。「夕涼み」は涼しいところに招待してくれた主人への感謝も含まれるので、マイナスのイメージを嫌うということなのだろう。
「取葺(とりぶき)の」の句。「取葺」は板屋根の上に重石を置いただけの粗末な屋根で、60年代の漫画にはよくこういう家が描かれていた。貧乏人の掘っ建て小屋だろうか。
ネットで検索する場合は「石置屋根」で検索するといいだろう。コトバンクの「日本大百科全書(ニッポニカ)の解説」には、
「板葺(いたぶ)きの上に石を置いて、板が風で飛ばないようにした屋根のこと。日本では中世の絵巻物に描かれた民家の屋根にしばしばみられ、江戸時代初期の京都市中にもなお用いられていたことが「洛中洛外図(らくちゅうらくがいず)」によって知られており、なかには石が転げ落ちないよう縄で結わえているものもある。このような屋根は、瓦(かわら)がまだ普及せず、板がもっとも信頼できる葺き材料で、しかも釘(くぎ)などがそれほど豊富に使用できなかった時代の生活の知恵であろう。現在では、風の強い山間部の小規模な建物、たとえば山小屋などに用いられるだけである。[山田幸一]」
とある。
「棒つかひ」はこの場合棒術の達人のことではなく、多分「つかひ棒」のことだろう。石置屋根の粗末な家はただでさえ暑そうなのに、その屋根が落ちないようにつかえ棒しているあたり、なおさら暑そうだ。
「煤さがる」の句。昔の台所は油を使わないから油汚れはないが、煤は屋根や梁に付着してたりしたのだろう。年末になると煤払いをしたが。
ただでさえ火を使う台所は暑いが、上が煤けていると余計に暑く感じられる。
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