二〇一七年ももう終わり。世界はそんなに悪い方向には行ってないと思う。来年もきっとそんなに悪くないことを願う。
そして、なんとか「詩あきんど」の巻も終わった。
では、
三十三句目。
みちのくの夷しらぬ石臼
武士(もののふ)の鎧の丸寝まくらかす 芭蕉
「石臼」を捨てて、「みちのくの夷」に古代のいくさを付ける。
『連歌俳諧集 日本古典文学全集32』の注では坂上田村麻呂の蝦夷征伐の場面とするが、蝦夷が枕を貸してくれるのだから衣川の戦いあたりを考えてもいいのではないかと思う。
ここでいう蝦夷はアイヌではなく、みちのく地方の先住民族。縄文系の民族と思われる。
三十四句目。
武士の鎧の丸寝まくらかす
八声の駒の雪を告つつ 其角
「八声の駒」は『連歌俳諧集 日本古典文学全集32』の注によれば、「明けがたにたびたび鳴く鶏を『八声の鳥』というに基づく造語」だという。
八声の鳥は『夫木和歌抄』に、
新玉の千年の春の初とて
八声の鳥も千代祝ふなり
藤原家隆
の用例がある。
鎧を着たままう仮眠を取っていると、馬がいなないて雪が降りだしたのを告げる。
三十五句目。
八声の駒の雪を告つつ
詩あきんど花を貪ル酒債哉 其角
前句の雪を花の散る様としたか。春に転じる。
発句の「年」を「花」に変えただけの句で、主題を反復する。輪廻を嫌う連歌・俳諧の中では、こうしたリフレインは珍しい。
挙句。
詩あきんど花を貪ル酒債哉
春-湖日暮て駕興吟(きょうにぎんをのする) 芭蕉
前句が発句のリフレインなので、同じように脇を少し変えて応じる。
春の湖に日は暮れて、その興を吟に乗せる。花見で借金をこしらえても気にせず、風流(俳諧)の道に明け暮れる。この『虚栗』が売れれば借金が返せるといったところか。
古典趣味の絵空事が多いという点では、蕪村の『ももすもも』の体はこのころの蕉風に倣う所が大きかったのかもしれない。ただ、芭蕉のほうはこのあとよりリアルな俳諧へと向ってゆくことになる。
では良いお年を。
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