2017年10月22日日曜日

 今日は旧暦の九月三日。これから大きな台風が来る。台風は来ても選挙は無風。まあ、予想通りだが。
 元禄七年のこの頃は、芭蕉はまだ伊賀にいる。九月三日には支考と斗従が伊勢からやってきた。

   伊勢の斗従に山家を訪はれて
 蕎麦はまだ花でもてなす山路かな  芭蕉

の句を詠む。「夏蒔きの蕎麦も山奥となればさらに遅く、旧暦九月にようやく花が咲く。」と以前、2017年6月24日の鈴呂屋俳話に書いたのでそちらの方をよろしく。
 九月四日の夜には支考、斗従を交えて、

 松茸や知らぬ木の葉のへばりつき  芭蕉

の発句で九吟歌仙興行を行う。松茸に熱燗なら大阪談林だが、松茸にへばりつく木の葉というあるあるネタに走るのが蕉風だ。
 支考の『芭蕉翁追善日記』によると、この興行は九月四日だが、同じ日に、

   戌九月四日会猿雖亭
 松風に新酒をすます夜寒哉     支考

を発句とする五十韻興行が行われている。一日に二つの興行、それも一つは五十韻となるとかなりハードで、「松茸や」の方は別の日だったのではないかと思う。「松茸や」の興行が夜だったなら、「松風に」の五十韻興行は昼間行われたことになる。
 そして、この日に芭蕉は松茸の句と酒の句を別々に詠んだことになる。

 花にうき世我が酒白く飯黒し    芭蕉

は天和三年の句で、この頃は白い濁り酒を飲んで、玄米の飯を食っていたのだろう。その後、もろみを原酒と酒粕に分けることで透き通った酒を造る「清酒」が広まったのであろう。ただ、今日のような炭素濾過を行わないので、まったくの無色透明ではない。
 九月四日よりは多分少し後だろう。

 猿蓑に漏れたる露の松露かな    沾圃

を発句を基にした、芭蕉、支考、惟然の三吟歌仙興行が行われている。こちらの方は『猿蓑』に収録されている。
 さて、そろそろまた俳諧を読もうと思うが、「猿蓑に」の巻は『校本芭蕉全集』第四巻(宮本三郎校注、1964、角川書店)だけでなく、『連歌俳諧集』(日本古典文学全集32、一九七四、小学館)にも解説があるので、まずこれを読んでみようかと思う。

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