2017年10月10日火曜日

 昨日は箱根千石原へ薄を見に行った。昔(70年代)遠足でバスで通ったときには随分広いところだと思っていたが、今見ると山の麓のほんの一角に過ぎなかった。大人になったせいで小さく見えるのか、それとも薄が原が縮小したのかはよくわからない。それでもきちんと保存されているせいか、他の雑草もなく見事な薄が原だった。
 薄は青い葉と白い穂が日の光に輝いていて銀の野原だった。きれいなのは穂だけでなく、葉に反射する光も大事だとわかった。これが一ヶ月もすると枯れ薄となって金の野原に変るのだろう。
 江戸時代の人は薄が原は当たり前の景色だったのか、

 面白さ急には見えぬ薄かな     鬼貫

という句もある。失われてみると、まとまった薄の群生を見るだけで圧倒される。
 揺れる薄は手招きするが如くで、

 何ごとも招き果てたる薄かな    芭蕉

 風に揺れれば、

 ぞっとするほどそよかかる薄かな  額翁『伊達衣』
 一通り風道見する薄かな      等盛『伊達衣』
 秋の野をあそびほうけし薄かな   李由『韻塞』

 ただ、昔は川原などに野ざらしが落ちていたりしたせいか、死を暗示するものでもあった。月や鹿は付き物。

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