2017年10月16日月曜日

 今日は旧暦八月二十七日で葉月ももうすぐ終わり。今日も一日雨だった。

 「一、重付事
     いたくな吹そ山の夕かぜ
   露のぼる草の庵の板びさし
     しめぢが原はただ秋の草
   うき夕袖を涙になをしめて
     とひてやゆかんさ夜の中山
   さやかにも道はおぼえずふる雪に
     あまりにうきは深山べの里
   袖はよもほすひまあらじ雨そそぎ
     いくたびおしむ命なるらん
   これぞ此人のたづねし生田山
     もしやと後をたのむ玉づさ
   あま人のかくとはこれかもしほ草」

 「重付事」は「重ねてには」とも言う。上句の末尾と下句の頭とで同じ音を重ねて付ける付け方で、「板びさし→いたくな」「なをしめて→しめぢが原」と付く。
 三番目の例は上句の頭の「さやかにも」に下句の末尾の「さ夜の中山」と付く変則的な重ねてにはになっている。
 あとは「雨そそぎ→あまりに」「生田山→いくたび」「もしほ草→もしや」と付く。
 これは和歌の序詞から来たものと言えよう。

 かくとだにえやは伊吹のさしも草 
    さしも知らじな燃ゆる思ひを
               藤原実方朝臣
 みかの原わきて流るる泉川
    いつ見きとてか恋しかるらむ
               中納言兼輔

 現代的にするなら、筆者が昔作った歌だが、

 寝ころべば凍りつくよなアスファルト
    明日のことなどわすれていよう

のようなものか。

 「一、かけてにはの事
     山にかかりて雲やたつらん
   是までは遠きをきつるけふの道
     とくなる御法みな人のため
   これや此たえなるはちす花のひも
     ひく心こそうき中にあれ
   とほるべき暮をいつとかしらま弓
     涙こぼるる袖の上かは
   秋さむき戸ぼその雨のはらはらと」

 重付(重ねてには)は言葉の音の一致または類似でつなぐが、掛けてにはは意味のつながりの縁でつなぐ。「けふの道→山にかかりて」「ひも→とく」「弓→ひく」「はらはらと→涙こぼるる」

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