今日は暖かく、桜もかなり咲きそろってきた。となると、もう散り始めか。
この前の日曜日にまだ一分咲きか二分咲きくらいで花見をしていた人がいたが、それはそれで正解だったのかもしれない。次の日曜日は雨予報が出てるし、天気はしばらく安定しない。花見というのは本当に決断力が試される。
芭蕉の『笈の小文』に、
日は花に暮てさびしやあすならう 芭蕉
という句があった。暖かくなったら、天気がよければ、休みになったら、と言いながら先延ばしにし、今日は無理だから明日に、と思っているうちに桜の季節はあっというまに終わってゆく。「あすなろう」は植物の名であるとともに、なんでも明日に先延ばしにしがちな我々のことを戒めてくれている。
『奥の細道』の旅の途中の加賀山中温泉での「馬かりて」の巻の興行で、
寺に使ひをたてる口上
鐘ついてあそばん花の散かゝる 芭蕉
の句もある。お寺の和尚さんへの挨拶のために使いを立てるという前句から、その口上の内容を付けた句だ。
それはお花見への誘いで、朝の鐘を撞き終えたら一日遊びましょうよ、花はすぐに散ってしまいますよ、という内容だ。
芭蕉のこの句を「遊びで鐘を撞きましょう」という意味にとる解釈もあるが、お寺の鐘は時刻を知らせたり、時には緊急事態をみんなに知らせる大事なもので、戯れに撞いてはいけない。「鐘ついて(から)あそばん」と取った方がいい。
そうは言っても実際忙しくて、なかなか花見には踏み切れないものだ。ただ、「花」というのも一つの比喩として、そうやって忙しい忙しいと言いながらいつの間にか何の楽しみもなく人生を終わってしまうのもつまらないものだ。芭蕉の句は戒めとして心に刻んでおこう。
これから先何があるかわからない。自分自身にしても、日本という国にしても。花は見れるうちに見ておいた方がいい。
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