2022年12月6日火曜日

 ワールドカップはPKまで行って負けてしまった。でも強豪クロアチア相手に互角の勝負ができたのは大きな収穫だった。こうなったらクロアチアに優勝してほしいね。
 PKで決めるのは残酷だから、何か別の方法がないかと思って、フェアプレーポイントで決めたらどうかと思ったが、そうなると審判の命がいくつあっても足りないので没。
 それでは「隨縁紀行」の続き。

  「廿一日 二見朝熊
 いく秋をへん汐垢離は歯の薬  岩翁
 ひややかに汐こすみちや石と岩 キ翁
 岩のうへに神風寒し花薄    晋子
 汐こりや蜑の身を干す芋畠   横几
 あき風や波を浴たる一拝み   松翁
 蜑の子に游まけたりきりの海  尺草

   御師の家子あないにつく
 浜荻に足ふみこまん酔こころ  岩翁
 もみぢして朝熊の柘と云れけり 晋子
 奥しれぬ坂の便や落葉の色   キ翁
 風切に紅葉つむ也あさまやま  横几

   宮河の上に酒送りせらる
 色かへぬ松に柳のわたしかな  岩翁

   此花を肴にめでてと云れて
 根を石にこれは河原の野菊かな 亀翁
 重箱に花なき時の野菊かな   晋子
 角ト石をひろひのこせし野菊哉 尺草」

 九月二十一日は二見ヶ浦に行って、朝熊山に登った。

 いく秋をへん汐垢離は歯の薬  岩翁

 五十鈴川の垢離とはまた違い、二見ヶ浦では海水で潮垢離をする。
 塩で歯を磨くと虫歯予防になるとされていた。

 ひややかに汐こすみちや石と岩 キ翁

これはほぼ見たまんまと言って良いだろう。

 岩のうへに神風寒し花薄    晋子

 海岸の岩の上の風に靡く薄は、伊勢だから神風に靡く薄になる。海から吹く風は冷たい。

 汐こりや蜑の身を干す芋畠   横几

 潮垢離で塩水を浴びると海士になったような気分で、芋畑で体を乾かす。

 あき風や波を浴たる一拝み   松翁

 秋風といっても其角の句にあるように、晩秋ということもあってかなり冷たい風だったのだろう。波を浴びて体もすっかり冷えて、二見ヶ浦も一拝みして早々に引き上げたのだろう。

 蜑の子に游まけたりきりの海  尺草

 二見ヶ浦は冬の空気の澄み切った時だったら富士山が見えるが、この日は霧で何も見えなかったか。付近では海士の子が遊んでたが、余所の者大人としては寒くて遊ぶどころではなかった。

   御師の家子あないにつく
 浜荻に足ふみこまん酔こころ  岩翁

 二見ヶ浦があまり寒かったのか、一杯やって暖まって朝熊山に向かったのだろう。御師の子供に案内されながら、酔っ払って浜荻の中に迷い込んだりしながら朝熊山に登って行く。
 伊勢の浜荻は難波の葦。

 もみぢして朝熊の柘と云れけり 晋子

 朝熊黄楊(あさまつげ)はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典「朝熊黄楊」の解説」に、

 「〘名〙 (三重県朝熊(あさま)山のものが有名なところから) 植物「つげ(黄楊)」の異名。〔重訂本草綱目啓蒙(1847)〕」

とある。ツゲは若葉の頃は黄色くなるが常緑樹なので紅葉はしない。
 ただよく知らないと、紅葉で黄色くなったのがツゲだと言われてしまいそうだ。

 奥しれぬ坂の便や落葉の色   キ翁

 朝熊山金剛證寺までは稜線の道が延々と続く。九月の中旬ともなると落葉道になる。

 風切に紅葉つむ也あさまやま  横几

 風切(かざきり)はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典「風切」の解説」に、

 「① =かざきりばね(風切羽)
  ※大智度論天安二年点(858)六二「六つの翮(カサキリ)成就しぬるときに、則ち能く遠く飛ぶべし」
  ② 船の上に立てて、風の方向を見る旗。風見(かざみ)。〔日葡辞書(1603‐04)〕
  ③ 桟瓦(さんがわら)葺きの切妻屋根で、螻羽(けらば)に近く、棟から軒まで葺き下ろした丸瓦。風切瓦。風切丸。〔日本建築辞彙(1906)〕」

とある。
 この日はやはり風が強かったか、風で落葉は掃き寄せられてうず高くなっているので風向きがわかる。

   宮河の上に酒送りせらる
 色かへぬ松に柳のわたしかな  岩翁

 宮川は伊勢神宮外宮の西側を流れる川で、この河原でまた酒を飲んだのだろうか。
 伊勢を出る日が二十三日になっているから、二十二日はここで宴会をやったのかもしれない。
 常緑の松の木に対して河原の柳の木は葉が散って川に落ちて、宮川の渡し舟のようだ。

   此花を肴にめでてと云れて
 根を石にこれは河原の野菊かな 亀翁

 これも宮川の河原だろう。野菊の花が咲いていて、これを肴に酒を飲めと言われた。河原の菊だから石の上に生えている。

 重箱に花なき時の野菊かな   晋子

 重陽の節句の重箱には、このころから食用菊が用いられるようになったのだろう。さすがに野菊は食べられない。

 角ト石をひろひのこせし野菊哉 尺草

 野菊は丸い石の上には生えるが角ばった石には生えないということか、よくわからない。

0 件のコメント:

コメントを投稿