昨日は新潟で、今日は山陰で、今は福岡・大分で、大変な雨になっている。こちらはたいしたことなかったが。昔は「梅雨の集中豪雨」という言い方をしたが。
さて、「取あげて」の巻と同じ頃と思われるもう一つの歌仙の表六句が、この「『別座敷』『炭俵』連句抄」で紹介されている。メンバーも「取あげて」の巻と同じ。
まず発句は、
若竹の肌見せにけり五月雨 八桑
で、筍は皮をかぶっているがそれが延びて若竹になると竹の肌が見えてくるという句。芭蕉さんのおかげで皆さんの俳諧も成長し、一皮剝けたということか。
脇は、
若竹の肌見せにけり五月雨
くさみ付たる片搗の麦 楚舟
吉田義雄氏は「片搗の麦とは、水にひたして一度ついた麦。それを乾かして、また水を掛けてつくのを本搗という。本つきでない麦なのでくさみがついたというのである。五月雨時の湿気のいたずらである。」とある。
片搗きの麦は糠が残っているため臭みがある。ネットによると、糠を取り除いて再び搗いたものを「真搗麦」「もろつき麦」というらしい。
五月雨の季節は麦の収穫の後で、真搗きにするには一度乾燥させなくてはならないので、乾くまでは片搗きの麦を食べていたのだろう。
発句の「一皮剝けた」に対して、謙虚に「まだまだ臭みの残る片搗きの麦です」と受ける。
第三は、
くさみ付たる片搗の麦
燕の三番子迄産連て 桃隣
燕は一回産卵し、その子が巣立った後もう一度産卵して二番子をもうけることが多いという。ただ、三番子となると時期的にも遅くなり、夏も終わりに近くなる。ツバメは巣を作るとき泥を落とすところから、
杯に泥な落しそ群燕 芭蕉
の句がある。「くさみ付たる」はここでは糠の臭みではなく、燕の泥が落ちたからか。
四句目。
燕の三番子迄産連て
戸板に膳をふせる夕影 子珊
燕は三番子を引き連れて南へ帰って行くと、さながら宴の後。戸板の上にひっくり返して重ねられたお膳に夕日が当たるように寂しい。響き付けの句。
五句目。
戸板に膳をふせる夕影
有明の船に召されて御寝ンなれ 杉風
夕影に有明と相対して付ける向い付けの句。明日は有明の月の頃に船に乗るから、今日はもうここでお開きにして寝ましょうということか。
六句目。
有明の船に召されて御寝ンなれ
どこらの畑か鹿を追ふ声 亀水
有明の船でうとうとしてたら、どこからか鹿を追っ払う農夫の声がする。
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