2017年8月22日火曜日

 今日は旧暦の七月一日。四ヶ月の長い夏が終わりようやく秋になった。
 それに合わせるかのように、今朝はツクツクホウシの声を聞いた。涼しい日が続いてたが、これからまた暑くなるらしい。残暑にはツクツクホウシがよく似合う。
 元禄七年の芭蕉は、この時期を膳所(今の大津)にある義仲寺の無名庵で過ごしたという。この無名庵は芭蕉が元禄二年から近江を訪れた時に度々滞在している。
 そこでの元禄七年七月はじめの発句、

   文月の初め、再び旧草に帰りて
 道ほそし相撲取草の花の露     芭蕉

 「相撲取草(すもうとりぐさ)」と呼ばれる草はいくつかある。子供が草を使ってどっちの草が強いかを競う遊びを草相撲といい、それに用いられる草はそう呼ばれるようだ。
 曲亭馬琴編の『増補 俳諧歳時記栞草』には「兼三秋物」のところに「相撲草」の項目がある。

 相撲草 [和漢三才図会]野原湿地にあり。葉、地に布(しい)て叢生す。忍凌(じゃうがひげ)に似て微扁(ちとひらた)く、石菖に似て浅く、秋、茎を起(たつ)て嶺に穂をなす。青白色。細子あるべけれどもみえず。其茎、扁く強健、長さ六七寸。小児、茎を取て穂を綰(わげ)、結て繦(ぜにさし)の如くし、二箇を用ひ、一は其襘(むすび)めにさしはさみ、両人、茎を持て相引く。切たる方、輪(まけ)とす。(『増補 俳諧歳時記栞草』曲亭馬琴編、二〇〇〇、岩波文庫、p.295)

 忍凌はジャノヒゲのことで、石菖はそのままセキショウで、それに似ているという。今日ではオヒシバのこととされている。
 ただ、オヒシバの穂に小さな花をつけるとはいうものの目立たないし、あまり花という感じがしない。そのため相撲取草はスミレではないかという説もある。スミレも花首を引っ掛けて遊ぶところからこの名前があるという。
 スミレは通常春のものだが、秋に帰り花を咲かすこともあり、そこであえて春の季語ではない「相撲取草」の名前で詠んだ可能性もある。「相撲」は秋の季語だ。
 芭蕉は貞享二年の春、『野ざらし紀行』の旅の途中、

   大津にでる道、山路を越えて
 山路来て何やらゆかしすみれ草    芭蕉

の句を詠んでいる。あるいはその時のことをふと思い出したのかもしれない。
 ネットでもevianさんがスミレではないかと言っている。

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