2023年1月30日月曜日

 今日は映画を見に行った。例によってタイトルを伏せて。
 ストーリーからちょっと外れるが、日本人に治水信仰があるのではないかと思ってしまった。
 治水はもちろん文明の起源であり、特に中国では天子、先王の仕事とされ、建国神話に関わっている。
 灌漑農業の開始が、水路を支配するものに生殺与奪権を与えてしまい、絶対的な中央集権に繋がる。それが大河の流域に巨大な国家を生むことになった。
 日本の文化もまた長江文明の影響を大きく受け、規模は小さいながらも河川流域に灌漑農業を行ったが、中国のような巨大な中央集権国家を生むことがなかった。
 大和朝廷によって統一されても「諸国」は明治に至るまで残った。
 日本人にとって灌漑はいわゆる東方的独裁を生むのではなく、同じ河川を共有する共同体意識を生んだのだろう。治水はその地域を結束させるものではあっても、中央集権体制は比較的緩やかで優しいものだった。それが水路を作るということが地域を結束させ平和をもたらすというイメージに繋がっているのではないか。
 ただ、場所によっては灌漑水路はやはり生殺与奪権を水路の管理者にゆだねることになるのを警戒する所もあるのかもしれないし、水を止めるということで戦略的に決定的に優位に立たれる可能性もある。今のロシアのパイプラインと一緒で、水路の建設は地政学的な脅威になりかねない。
 水路の建設は本当に平和をもたらすのだろうか。むしろ水源をもつ国を地政学的に圧倒的に優位にしないだろうか。新たな戦争の火種にならないだろうか。ついつい余計な心配をしてしまう。
 多分アフガニスタンの中村さんも、日本人的な治水信仰で善意でやったことなんだろうけど、それが脅威になる人たちもいたのかもしれない。そんなことをついつい考えてしまった。

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