2022年7月13日水曜日

 2025年の日本の死という予測は、今だったらこう書きなおす所だろう。
 ウクライナ戦争の長期化により、欧米の世論はインフレとエネルギー危機から武器供与の停止、経済制裁の解除の方向に傾き、選挙のたびに現政権が敗北する。
 この結果2023年には、ロシア包囲網は崩壊してロシアは攻勢に転じウクライナ全土を支配下におさめる。
 アメリカは新モンロー主義を強化し、まず韓国からの米軍撤退を決定する。その直後、韓国は北朝鮮に制圧される。日本に数百万人にも及ぶ韓国からの難民が押し寄せることになる。彼らは日本国中に分散するのではなく、特定の地域に集中し、その地域の地方参政権を獲得する。
 それにやや遅れて2024年、中国は台湾に軍隊を送る。新モンロー主義の定着したアメリカは軍を出さずに武器供与だけに留まり、EUもこれに準じる。ウクライナの時で懲りたか、経済制裁は行わない。
 その結果台湾は最初は激しい内戦状態になるものの、程なく全土が制圧され、やはり百万単位の台湾難民が日本に押し寄せることになる。
 日本人は相変わらず平和憲法と日米同盟で国は守られると考え、憲法改正に躊躇し、野党とマスメディアの声に押されて防衛力強化にも失敗する。宏池会は元々改憲に消極的で、野党との調整に終始し、その弱点が露呈する。清和会も安倍という強力なリーダーを失い、弱体化する。
 自公政権は人権の平等の名のもとに、ついに国政においても外国人の参政権を認めることになる。夫婦別性、同性婚、女性宮家なども次々に決定してゆく。
 また法人税やキャピタルゲインの増税を行い、インフレ手当を全国民に配布するなどの富の再分配や最低賃金の物価連動の引上げなどを行い、「新しい資本主義」はほぼ社会主義と同義になってゆく。
 右翼も新日本保守党どころか、小さな党に細分化するばかりで、左傾化する自公政権の不満の受け口にはならない。
 そうした中で、2025年にアメリカは日米同盟も一方的に破棄して、アジアの問題から完全撤退を決める。
 この年の夏の解散総選挙で韓国系台湾系からの圧倒的な支持のもとに立憲民主党と共産党が圧勝し、蓮舫が日本初の女性首相になる。
 秋にはロシアが国境を越えて北海道に侵入すると、蓮舫首相は即座に中国に援助を求める。日本は一切の武力抵抗を行わず、ロシアと中国の取引に基づいて東西に分割され、戦争を回避するが、日本という統一国家はここで終わりを告げることになる。ロシア連邦日本共和国と中華人民共和国日本人自治区の二つが残る。
 蓮舫はそのまま日本人自治区の党委員会書記に任命され、ロシア連邦日本共和国の大統領には鈴木宗男が就任する。国内の皇室は廃絶させられるが、アメリカで眞子様が第127代天皇として即位し、亡命日本人の希望の星となる。

 それでは「くつろぐや」の巻の続き。

 三表、五十一句目。

   国まはりする春の山風
 鶯や小首をひねる歌まくら    一朝

 前句の「国まはり」を歌枕を尋ねる諸国漫遊とし、春の鶯に首をひねって和歌を案じる。
 鶯の歌枕というと、

 花の散ることやわびしき春霞
     たつたの山のうくひすの声
              藤原後蔭(古今集)

の龍田山か、

 鶯のなくにつけてや真金吹く
     吉備の中山春を知るらむ
              藤原顕季(金葉集)

の吉備の中山か。
 春の山風に鶯は、

 谷川のうち出る波も声立てつ
     鶯さそへ春の山風
              藤原家隆(新古今集)

の縁になる。
 五十二句目。

   鶯や小首をひねる歌まくら
 かうしてどうして雪のむら消   雪柴

 「雪のむら消」も和歌の言葉で、

 こりつめて真木の炭焼くけをぬるみ
     大原山の雪のむら消え
              和泉式部(後拾遺集)
 薄く濃き野辺の緑の若草に
     跡まで見ゆる雪のむら消え
              後鳥羽院宮内卿(後鳥羽院宮内卿)

などの歌に詠まれている。
 雪のむら消えは人がそこを通ったから、というのが多い。ただ、誰が何のためにというのがわからないと悩んでしまう。
 五十三句目。

   かうしてどうして雪のむら消
 むかふからうつてかからば飛火野に 松意

 飛火野(とぶひの)はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典「飛火野」の解説」に、

 「奈良市東部、春日山のふもと、春日野の一部。また、春日野の別称。元明天皇のころに烽火台が置かれたところから名づけられた。とびひの。
  ※枕(10C終)一六九「野は嵯峨野さらなり。印南野。交野。駒野。とぶひの」

とある。ここでは飛ぶ火の粉に掛けて、ふりかかる火の粉は払わねばならないとする。そのせいで雪がむら消えになった。
 飛火野の雪のむら消えは、

 若菜摘む袖とぞ見ゆる春日野の
     飛火の野辺の雪のむら消え
              藤原教長(新古今集)

の歌がある。
 五十四句目。

   むかふからうつてかからば飛火野に
 羽買の山の天狗そこのけ     志計

 羽買(はがひ)の山はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典「羽買之山・羽易之山」の解説」に、

 「[一] 奈良市の春日山の北側に連なる若草山のこととも、また西側に連なる三笠山、南側に連なる高円山、それに若草山を加えた三山のことともいわれるなど、諸説がある。
  ※万葉(8C後)一〇・一八二七「春日なる羽買之山(はがひのやま)ゆ佐保の内へ鳴き行くなるは誰れ呼子鳥」
  [二] 奈良県桜井市穴師にある巻向山につづく龍王山か。
  ※万葉(8C後)二・二一〇「大鳥の羽易乃山(はかひノやま)に吾が恋ふる妹はいますと人の言へば」

とある。
 前句の「うつてかからば」を天狗の襲撃とする。
 五十五句目。

   羽買の山の天狗そこのけ
 八重の雲見通すやうな占算    卜尺

 占算は「うらやさん」とルビがある。コトバンクの「精選版 日本国語大辞典「占屋算」の解説」に、

 「〘名〙 占い。とくに、売卜者(ばいぼくしゃ)が算木と筮竹(ぜいちく)とを使って行なう占い。また、それを業とする者。占い者。易者。うらないさん。うらやふみ。うらおき。
  ※玉塵抄(1563)一三「人のしらぬことをうらや算をおいてしるぞ」

とある。八重雲は「学研全訳古語辞典」に、

 「幾重にも重なってわき立つ雲。八重棚雲(たなぐも)。
  出典源氏物語 橋姫
  「峰のやへぐも、思ひやる隔て多く、あはれなるに」
  [訳] 山の峰の幾重にも重なってわき立つ雲のように、思いをはせるにも障害が多く悲しいのに。」

とある。

 白雲の八重に重なるをちにても
     おもはむ人に心へだつな
              紀貫之(古今集)

など歌にも詠まれている。
 前句の「そこのけ」を、「そこを退け」の意味ではなく天狗をも凌ぐ「天狗そこのけ」の意味に取り成す。
 五十六句目。

   八重の雲見通すやうな占算
 乙女が縁組しばしとどめん    正友

 乙女の姿を引き留めるのではなく、縁談をやめろと占い師が言う。

 天つ風雲の通ひ路吹きとぢよ
     乙女の姿しばしとどめむ
              僧正遍照(古今集)

による。
 五十七句目。

   乙女が縁組しばしとどめん
 色好みしかも漁父にて大上戸   在色

 色好みでは浮気しそうだし、漁父では生活が不安定だし、それで大酒飲みでは良い所がない。この縁談は×。でもこういうのに限って長身のイケメンだったりする。
 五十八句目。

   色好みしかも漁父にて大上戸
 よだれをながすなみだ幾度    松臼

 色好みなら女と見ればよだれを垂らしそうだ。その上大酒飲みなら酔っ払ってよだれを垂らす。
 五十九句目。

   よだれをながすなみだ幾度
 肉食に牛も命やおしからん    一朝

 牛はよだれを垂らすものだが、食われるとなると涙を流す。
 冬の薬食いはシカやイノシシのような野生動物の肉を食うことが多かったが、貧しい人は犬を食ったともいう。家畜の牛が食われることもあったのだろう。まあ、桜肉ということばもあって、馬肉も食ってたようだし。屠殺場に行く牛は涙を流すという。
 六十句目。

   肉食に牛も命やおしからん
 はるかあつちの人の世中     一鉄

 日本人は薬食いなどの特別な時くらいしか獣肉を食わないが、朝鮮(チョソン)でも清国でも南蛮でも肉を常食する。
 六十一句目。

   はるかあつちの人の世中
 祖父と姥同じ台の念仏講     雪柴

 今は亡き祖父と姥はあっちの世界でも愛し合っているのだろうか。「世中(よのなか)」には男女の仲の意味もある。
 六十二句目。

   祖父と姥同じ台の念仏講
 つらぬく銭の高砂の松      松意

 爺様と婆様でお目出度いということで、高砂の松にお賽銭をする。
 六十三句目。

   つらぬく銭の高砂の松
 秋の月外山を出て宮一つ     志計

 播磨の尾上の松が難波住吉神社の高砂の松に逢いに行くのが、謡曲『高砂』だが、今なら銭があれば誰でも行ける。

 「遠き住の江高砂の、浦山国を隔てて住むと、いふはいかなる事やらん。」(野上豊一郎. 解註謡曲全集 全六巻合冊(補訂版) (Kindle の位置No.1786-1788). Yamatouta e books. Kindle 版. )

の一節がある。
 六十四句目。

   秋の月外山を出て宮一つ
 狐飛こすあとの夕露       卜尺

 山を出た狐の宮といえばお稲荷さん。秋の月に夕露が付く。

 秋の月篠に宿かるかげたけて
     小笹が原に露ふけにけり
              源家長(新古今集)
 袖の上に露置きそめし夕べより
     なれていく夜の秋の月影
              真昭法師(新勅撰集)

などの歌がある。

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