2022年7月15日金曜日

 安倍元首相の国葬が決まった。まあ、あちら側からすれば安倍信者が一堂に会するということで、血が流れる可能性もある。それでも日本がテロに屈しないことを世界に示すために、やらなくてはならない。
 日本人が人命を第一に考え、ちょっと軍隊を出して国民を殺すぞと脅せば簡単に国を明け渡すと思われてしまったなら、あっという間に日本という国はなくなる。戦う意思を示せ。って、岸田さんじゃどうかな。

 それでは「くつろぐや」の巻の続き。

 名残表、七十九句目。

   思ひは石のつばくらのこゑ
 春雨やなみだ等分手水鉢     一朝

 亡き夫を偲ぶ体であろう。軒先で燕の子が鳴くように、悲しい思いをしてるけど、あなたもあの世で私と同じように悲しんでくれてることでしょう。
 八十句目。

   春雨やなみだ等分手水鉢
 一儀何とぞ神ならば神      松意

 一儀はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典「一儀」の解説」に、

 「① 一つの事柄。一件。話題とする事柄をさしていう。あの事。
  ※高野山文書‐(文祿元年)(1592)七月二三日・島田大蔵清堅・明知坊宗照連署状「仍木上様と御衆徒中、御一儀に付て、帥法へ御懇書」
  ※人情本・貞操婦女八賢誌(1834‐48頃)五「妹に愛溺(あま)き此姉が、願ひは只此一義(イチギ)のみ」 〔淮南子‐斉俗訓〕
  ② いささかの気持。寸志。
  ※上杉家文書‐(永正一七年)(1520)二月二三日・毛利広春書状「抑太刀一腰令レ進候、誠表二一儀一計候」
  ③ 特に男女、または男色の交接のことをさしていう。
  ※仮名草子・犬枕(1606頃)「嫌なる物、〈略〉いちぎ」
  ※咄本・昨日は今日の物語(1614‐24頃)上「一ぎをするたびたびに女房にいふやうは」

とある。
 互いに苦しんでいる恋になにとぞ結ばれるようにと神に祈る。③の意味になるが、「なみだ等分」はこの文脈だと男色っぽい。
 八十一句目。

   一儀何とぞ神ならば神
 敵めを御䰗にまかせてくれう物  志計

 「敵」は「かたき」、御䰗は「みくじ」とルビがある。前句の「一儀」を単なる一件の意味に取り成す。仇討の祈願とする。
 「くれう物」はよくわからない。
 八十二句目。

   敵めを御䰗にまかせてくれう物
 かけたてまつる四尺八寸     卜尺

 四尺八寸は約一四五センチ。日本刀の標準は二尺三寸くらいで四尺八寸はかなり長い。佐々木小次郎でも三尺余とされている。四尺八寸は当時の小柄な人の身長くらいあるから、普通なら後ろに背負っても抜くことが出来ない。よっぽどの巨漢か、そうでなければ儀式用か。
 八十三句目。

   かけたてまつる四尺八寸
 看板はいづれ眼のつけどころ   正友

 前句の四尺八寸を大看板とした。
 江戸時代には近代のような巨大な看板はなかった。ただ、天和二年に贅沢な看板に対して禁令が出ているから、延宝の頃には看板は大きく豪華になる傾向があったのだろう。
 八十四句目。

   看板はいづれ眼のつけどころ
 用の事どもおこたるべからず   在色

 看板に小便していく奴がいたのだろう。見張ってなくてはならない。
 八十五句目。

   用の事どもおこたるべからず
 置頭巾分別くさくまかり出    松臼

 「置頭巾」はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典「置頭巾」の解説」に、

 「① 袱紗(ふくさ)のような布を畳み、深くかぶらないで頭にのせておく頭巾。
  ※俳諧・生玉万句(1673)「御免あれ赤地の錦の置頭巾〈均明〉 時雨のあめに染るひん髭〈流水〉」
  ※浮世草子・日本永代蔵(1688)一「その時にあふて旦那様とよばれて、置頭巾(ヲキヅキン)・鐘木杖(しゅもくつへ)、替草履取るも」
  ② ①の形に似せて鉄板を張り合わせた兜の鉢の一種。」

とある。
 頭巾をいかにも偉そうに被って、仕事をサボってないかどうか見回りに来る奴っていたのだろう。
 八十六句目。

   置頭巾分別くさくまかり出
 しもく杖にて馬場乗を見る    雪柴

 撞木杖は取っ手の処がT字になった杖。体重をかけやすいので年寄りがよく用いる。
 現役引退して、馬場に来ても馬に乗るのではなく、見るのが何よりの楽しみ。
 八十七句目。

   しもく杖にて馬場乗を見る
 朝まだきうら門ひらく下屋敷   一鉄

 下屋敷はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典「下屋敷」の解説」に、

 「〘名〙 控えの屋敷。別邸。江戸時代には、大名や豪商の主人常住の上屋敷(かみやしき)に対していった。下館(しもやかた・したやかた)。したやしき。
  ※虎寛本狂言・花盗人(室町末‐近世初)「某此山影に下屋舗を持て御座るが」

とある。高田馬場の辺りに多かった。
 八十八句目。

   朝まだきうら門ひらく下屋敷
 露と命はいづれ縄付       一朝

 お縄になった罪人は裏門からひっそりと連行されていく。
 八十九句目。

   露と命はいづれ縄付
 観音の首より先に月おちて    松意

 『新日本古典文学大系69 初期俳諧集』の注は謡曲『盛久』を引いている。
 観音の功徳によって死刑を免れた平盛久は明け方に処刑されることになったが、刀が折れてそれが観音の功徳だということで免れることになる。
 て留なので「露と命はいづれ縄付、観音の首より先に月おちて」と読む。捕らえられたが首より先に月が落ちて助かった、となる。
 九十句目。

   観音の首より先に月おちて
 奉加すすむる荻の上風      志計

 荒れ果てたお寺の野ざらしになった観音様に月が落ちる。寄付してお堂の再建をしなければと、荻の声がする。
 九十一句目。

   奉加すすむる荻の上風
 衣手が耳にはさみし筆津虫    卜尺

 筆津虫(ふでつむし)はコトバンクの「精選版 日本国語大辞典「筆津虫」の解説」に、

 「〘名〙 昆虫「こおろぎ(蟋蟀)」の異名。《季・秋》
  ※古今打聞(1438頃)中「ふでつむしあきもいまはとあさちふにかたおろしなる声よわるなり 筆登虫は蛬を云也」

とある。
 最近はあまり見ないが、ちょっと前は耳に鉛筆を挟んでいる人がいたりした。昔は筆を耳に挟んでいたのだろう。奉加を勧める勧進僧が、すぐに奉加帳に書き込めるように耳に筆を挟んでやって来たのだろう。
 秋の草に鳴く虫は縁になる。

 虫の音も涙露けき夕暮れに
     訪ふ人とては荻の上風
              藤原家隆(壬二集)

の歌がある。
 九十二句目。

   衣手が耳にはさみし筆津虫
 名所旧跡とをざかりゆく     正友

 旅僧が歌を詠もうと思っているうちになにも思い浮かばず、名所旧跡も遠くなってゆく。

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