何言ったの木枯しに問い返す
日は西へそして師走の街灯り
まだ残る黄葉にあしたが光る
冬日射す城の白壁帰り道
それでは「甲戌紀行」の続き。
9月28日に奈良を出て、多武峰から細峠を越えて吉野に到着する。そして、29日に吉野の名所を回ることになる。
廿九日よしのの山ふみす。
白雲峯に重り煙雨谷をうつんて山賤の家所々にちひさく、
西に木を伐ル音東にひびき院々のかねの声心の底にことふ
寒雲繍盤石といふ句におもひよせて
高取の城の寒さよよしの山 晋子
高取城は日本三大山城の一つとも言われ、標高583メートルの山の上に天守閣が築かれている。芭蕉も元禄三年の「月見する」の巻二十九句目に、
随分ほそき小の三日月
たかとりの城にのぼれば一里半 芭蕉
の句を付けている。天守まで辿り着く頃には日が暮れてしまう。
其角のこの句は許六の『俳諧問答』にも、
「高取の城の寒さやよしの山
といふも、『ふる里寒し』の下心也。ふる里よりハ、めの前の高取寒しといへる事也。」(『俳諧問答』横澤三郎校注、一九五四、岩波文庫p.187)
とある。この「寒さ」は、
みよし野の山の秋風さ夜ふけて
ふるさと寒く衣うつなり
参議雅経(新古今集)
の歌による、というわけだ。
まだ9月だけど「寒さ」で冬の句としているが、この歌を思い浮かべるならまだ秋の情になる。

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