2025年12月9日火曜日

 
AI俳画
 今日の句会の句。

 何言ったの木枯しに問い返す
 日は西へそして師走の街灯り
 まだ残る黄葉にあしたが光る
 冬日射す城の白壁帰り道

 それでは「甲戌紀行」の続き。

 9月28日に奈良を出て、多武峰から細峠を越えて吉野に到着する。そして、29日に吉野の名所を回ることになる。

   廿九日よしのの山ふみす。
   白雲峯に重り煙雨谷をうつんて山賤の家所々にちひさく、
   西に木を伐ル音東にひびき院々のかねの声心の底にことふ
   寒雲繍盤石といふ句におもひよせて
 高取の城の寒さよよしの山    晋子

 高取城は日本三大山城の一つとも言われ、標高583メートルの山の上に天守閣が築かれている。芭蕉も元禄三年の「月見する」の巻二十九句目に、

   随分ほそき小の三日月
 たかとりの城にのぼれば一里半  芭蕉

の句を付けている。天守まで辿り着く頃には日が暮れてしまう。
 其角のこの句は許六の『俳諧問答』にも、

 「高取の城の寒さやよしの山
といふも、『ふる里寒し』の下心也。ふる里よりハ、めの前の高取寒しといへる事也。」(『俳諧問答』横澤三郎校注、一九五四、岩波文庫p.187)

とある。この「寒さ」は、

 みよし野の山の秋風さ夜ふけて
     ふるさと寒く衣うつなり
              参議雅経(新古今集)

の歌による、というわけだ。
 まだ9月だけど「寒さ」で冬の句としているが、この歌を思い浮かべるならまだ秋の情になる。

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